表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/189

◇◆◇◆◇


 誰かが――叫んでる。


 その声は、同じ言葉を連呼しているようだ。

 一体、なにをしているのか。




 ここに在るのは――『 』。




 この場所には、何も存在しない。

 個や体。物体と言われるものが存在しない、空白で『 』のみが在る場所だというのに。




 誰かまだ――叫んでる。




 けれど、それももうすぐ聞こえなくなる。

 こうして思考を巡らせることも、そろそろ鈍くなってきた。




 声の主は、いつまで――…。




 ――――――――――…

 ――――――…

 ―――…




「――――もうっ、これが」




 限界だと、息遣いが荒い声が聞こえる。

 ――この雰囲気は、何?

 確か、思考が消えかかって、何も無い場所に在ったはず。


「なんとか存在は留めたけど、中身が……」


 ――中身?

 なんのことを言っているのかと考えれば、徐々に、感覚が芽生え始めてきた。

 ――思考だけじゃない。

 今、ここには思考以外の存在が出来上がりつつあった。


「体温は……うん、少しは戻ってる」


 途端、声の主が触れた。そこでようやく、体というモノを実感した。重くて、まだ動かすことはできないけど、【これ】に思考以外の存在が付属したんだというのは理解した。


「美咲ちゃん、聞こえる?」


 心配そうな声が、【これ】の様子を窺う。


「美咲ちゃん? 美咲ちゃん?――!」


 ようやく、【これ】の意思が体に伝わった。

 目蓋を開き、さっきから呼びかける声の主に視線を向ける。


「よ、よかったぁ~。どこも痛くない? 大丈夫?」


 視界に映ったのは女性。

 淡い緑の瞳からは、涙が溢れ出ていた。


「美咲ちゃん――?」


 さっきから言ってるのは、多分【これ】のことなんだろう。


「っ! やっぱり中身が」


 それが【これ】の個を表しているのは理解できるけど――実感がわかない。




「貴方は――誰なの?」




 誰? と聞かれても。




「これに――記憶はない」




 そう答えることしか、できなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ