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魔法少女のお姉ちゃんは変質者-SER.とりあえず殺しておくか。  作者: モコ田モコ助
第4章 マーゾック

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7.決戦


 決闘の申し込みから2日後。土曜日。正午前である。


 自衛隊間山演習場。地形はほぼ山林で平地に乏しい。

 とはいえ、平地はあるにはある。戦いに適したのが東側に。そう、マジカルキューティ達の住む町の方角に手頃な平地がある。

 そして、それをのぞき込める小高い山も。


 正午を回った頃、空間が歪み、巨大な人工物が山の頂に出現し、着地した。

 その姿、まるで巨人の手。5本の指先は怪物の首となっていた。

 中指に相当する怪物の口が開く。中から怪我の癒えぬ鳥形ネクライマーを先頭にして、男と女が出てきた。


 彼らの前衛として、羽の修復がまだな鳥形と、犬を模した軽装騎士型の2体が武器を構える。

「ネガティブ=ナヒトの指揮はヅツーキに任せる。タイミングを外すなよ!」

『まかせてくだせぇ!』

 狼頭のヅツーキが外部スピーカーで答えている。

 先頭要員が配置に付いたことを確認して、ネガティブ=ナヒトは後方へ下がった。

 

「あら、早かったかしら? てっきり先に来て場所取りしてるかと思いましたのに、ナグール様」

 悪役令嬢風扇情的な衣装を身に纏った美女は、手にした悪役令嬢型大扇子を口元に当て、欠伸をかみ殺していた。

「それを警戒して、魔将ネクライマーを伏せさせたのだよ、ケルーナ」

 平地を見下ろす筋肉男。ここからだと演習場入り口まで見通せる。


「ガクセイであるマジカルキューティは、前日まで人間共の習慣に縛られている。先んじようとしても、前日の夕方からであろう。前日の昼から魔将マーゾックを伏せさせている」

 平地、山腹、そして岩陰などに魔将マーゾックを伏せさせている。ネガティブ=ナヒトを降ろした山の麓には、マジカルキューティ達に見せるために、魔将マーゾックを4体、立たせている。


「事実、マジカルキューティが発する光のエネルギーは微塵も感じ取れない。この時点で待ち伏せの危険は消えた。あとは正面から当たるのみ!」

「さすね、あなた」

「ふふふ、この場所を先に取った者の勝ちだ」

 ナグールは、太い腕を組み、平野部を睥睨している。


「む!」

 ナグールの眉が吊り上がった。

「お出ましかしら?」

 ここから死角になっている場所で、膨大な光のエネルギーの爆発が感じ取られた。マジカルキューティの変身だ! さすがに、敵が待ちかまえているのに変身前の姿で戦場へ突入する愚を起こさないだけの頭はあるらしい。


 マジカルキューティ達の移動速度が速い。新しく得た飛行能力によるものだ。


「あらあら、ブラックの気配がありませんわ、あなた?」

「伏せさせているか、隙を見て突入させるか。マジカルキューティ達の突撃が囮で、ブラックの戦場突入が本命だろう。どれ、一つずつ消していくとしよう」

 3本の光の線が、平野部中央にさしかかる。そして、こちらに気づいたようだ。進撃方向をナグール達の方へ微修正した。


「そろそろ、お出迎えするとするか」

 ナグールが指を鳴らす。

 マジカルキューティーの進行方向に魔将マーゾックが2体出現した。

 それを見て、速度を落とすマジカルキューティ。

 それを見計らったか、左右の山腹より、3体ずつ計6体の魔将マーゾックが突撃してきた。包囲された!

 ナグール自体が。マジカルキューティを罠に引き寄せるための囮だったのだ!


「マジカルキューティーの横っ腹を付くつもりでしたけど、どんぴしゃですわ!」

「では、蓋をしようか」

 もう一度、ナグールが指を鳴らす。すると、マジカルキューティ達が通り過ぎた後部に、4体の魔将マーゾックが出現。

 これで12体勢揃い。マジカルキューティの退路を断つ!


「後は上だが……」

 上空に、ネガティブ=ナヒトが出現した!

『上へ逃げようたってそうはいかないぇぇ!』

 ヅツーキの拡声されたガラガラ声が辺り一面で反響している。


「タイミングはジャストだ」

 ナグールがネガティブ=ナヒトを見上げる。

「さすがと褒めておきましょう」

 ケルーナも、その勇姿に見ほれているようだ。


 2人を護衛する魔将マーゾックは、前方の戦場に注意が行っている。幹部2人も空に注意を向けている。


――今だ!――


「キューティ・クリスタル――」

 2人の背後の地面を吹き飛ばし、地中からお姉ちゃん(変身前)参上!


「な!?」

「え?」

 幹部2人が振り返る。魔将マーゾックは気づいてすらいない。


「――GAU-8・アベンジャー!」

 ワーゲンビートル2台分のキラキラしたガトリング砲が出現!

 そう! あたしは狼と話をしたその足で、ここにやってきて埋まって待っていたのだ。この時を! 2日間も一人でグスッ!


 VUOooooooo!

 戦場に轟く勝利の発射音! 

 毎分3,900発の劣化魔法ウラン弾が、ただ一人、ナグールに降り注ぐ!


 マジカルキューティ達は囮だ。だれが好きこのんで可愛い妹を戦場へ送り込んだりするものか! 決着は一瞬で、それがあたしのポリシー。


 おのれの作戦の裏をかかれた悔しさか、失敗を悟ったのか、ナグールという大男は魔法弾丸の雨霰を前に反応できないでいた。魔将マーゾック共は距離が離れすぎている。


 でも反応した者がいた。

「グッ!」

 息を飲む声。ケルーナが身を賭してナグールに体当たり。かろうじて斜線上からナグールを外すことに成功。


「チッ! 外したか!」

 だが、その引き替えで、2体の魔将マーゾックが弾丸に巻き込まれ、……

「ケルーナ!」

 ケルーナも被弾した。まったく助からない部位を貫かれて。


 ナグールは目の前の敵を放り出してケルーナの体を支える。

「チャーンス!」 

 目の前には全く無防備なナグールの体。初撃は外したが、この位置、このタイミングならボコれる! イケル!


「おらぁ!」

 鉄拳制裁!

 ところが、必殺の左下段突きを受けたのは、半壊した犬の魔将マーゾックだった!

 魂を込めた拳を受け止めた犬のマーゾックは地面にめり込み、バラバラになった!


「おのれぇ!」

 一撃必殺を外したあたしの叫びだ!

 

 背中に覆い被さってくる鳥形を背負い投げでぶん投げ、踏みつぶす! これまた砕けた炭のようになって消えた。

 ここで、正面前衛にでていた魔将マーゾックの2体と、マジカルキューティを包囲したはずの6体が、急速度でこっちに向かってくる!


「こっちくんな! アベンジャー!」

 キラキラガトリング砲を連中に向け発射!


 VUOooooooo!

 5秒と経たず、ズタボロになっていく魔将マーゾックども! お姉ちゃんが本気出したら、あと、マジカルキューティのレッドとブルーとUMAという邪魔者が居なかったら、こんなもんだ!

 ……妹は戦力として非情に高い評価を出しているからいいんだ!


『旦那ぁーっ!』

「おわーっ!」

 はじき飛ばされた!

 

 上空に浮かんだ掌みたいなデカ物が墜落? ど派手な土煙が上がる。山に突き刺さった? 


「旦那ッ! 姐さんを早く中へ!」

 手を模したデカ物の指の一本が口を開き飛び出してくるヅツーキ。

 ケルーナを抱いたナグールの背中を押して、ネガティブ=ナヒトへと押し込んだ。


「鼠と馬! 頼んだぞ!」

「あ、おい、ちょっとまて!」

 止める間もなく狼男は中へ消えた。


 でもって、背後に闇の気配が膨れあがる。振り向くと、鼠と馬を模した甲冑のマーゾックがなにやらデカイ得物を振りかぶっていた!

「でへぇー!」

 隙をつかれた! こんなに早く動けるのか? さっきの撃ち漏らしたか?


「「「ビューティフル・プリンセス・デビュタント!」」」

 この声は! 妹とその他引き立て役の2名!

「「「届け、心の光!」」」

 シャワー!

 2体のマーゾックを包んで押し流す光の濁流!

「うおおぉー!」

 すんでの所、ブリッジでかわす。鼻先数㎝上を致命的な光の奔流が轟音と共に過ぎ去っていく。


 やめてくれマジカルキューティ。その技はお姉ちゃんに効く!

 で、流れ弾がネガティブ=ナヒトに直撃!

 火花を散らしながらも上昇していく。ありゃ中破判定だな!


 よおーし! お姉ちゃんも頑張るぞ!

「アブソリュート・ゼロ・マイナス!」

 ネガティブ=ナヒトを直撃! ……かと思いきや、亜空間へ消えた。

 白黒斑の捻れエネルギーが波紋の様に揺れる空間を通過していく。

 ……でも、まあ、影響がゼロって事はないだろう。さっきの妹の必殺技とアブソリュートの姉妹合わせ技の合計で、大破判定は入るだろう。



 亜空間・マーゾン空間に逃れた空間移動揚陸艦ネガティブ=ナヒト。

 お姉ちゃんの予想通り、致命的なダメージを受けていた。


「くそっ! 保て! 保てよオラ! 姐さん! 姐さん!」

 ヅツーキが必至で操艦するも、誘爆が続く。もはや時間の問題。

 そして、ナグールをかばって大怪我をしたケルーナも。


「姐さん! そんな馬鹿なッ! 今朝までッ! さっきまで元気にお話ししてたじゃないですかー!」

 操舵室まで火が回っている。ヅツーキは、言うことを聞かない操縦桿を泣きながら操作する。


「ケルーナ」

 ナグールのゴツイ手がケルーナの青白い頬にそっと触れる。

「ナ、ナグール、に、げて……」

 ナグールはゆっくりと首を横に振った。


「だめだ! 姐さん! 旦那ぁー!」

 ドォオッ!

 パネルがヅツーキを巻き込んで爆発した。飛び散る破片にズタボロになるが、これ位でくたばる狼男ではない。血だらけになっても操縦桿を握る手に力を込める。


 飛び散った破片は、直撃からかばおうとしたナグールの背中を貫いた。

 激痛と一瞬の意識喪失。

 そこで……ナグールは幻を見た。


 何処かの田舎町。ネクタイをしめたナグールが、妻であるケルーナの作った朝食を食べている。横にはちさな弟と、愛犬が……。

 そこで目が醒めた。


「なんだ。人間じゃないか……」

 ケルーナは半眼だ。意識がなくなりかけている。

「ケルーナ愛している」

「ナグール、わたしもよ」

 ナグールはケルーナの唇に自分の唇を合わせた。

 2人を炎が包んだ……。

「旦那ー! 姐さーん! 嫌だぁー!」 

 

 マーゾン空間にて……ネガティブ=ナヒト爆散……



 お空がウヨブヨいってる。

 なんか、こう……亜空間で大爆発が起こった気がする。


「どう? ちゃんと仕留めた?」

「あんなんとまともに戦えへんからなー」

 ブルーとレッドだ。無事だった様だ。チッ! 怪我の一つもしておけよ!


「お姉ちゃん! 大丈夫?」

「へいきさー!」

 妹の心配そうな声。優しい! お姉ちゃんのダークエネルギーもとい、……光のエネルギーが満タンになって溢れそうだよ!

 

「え? なんやあれ?」

 レッドが指さす方向。お空に昼間の月が浮かんでるだけだが?


 水面に描かれた波紋のようなモノを押しのけ、黒いお城が出現した。




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