2.さらなるパワーアップ
本日、2回目の投稿です。
「アルフィス様が降臨なされるじゃと!? 皆の者、表へ! 急ぐのじゃ!」
素早く飛び出していく白髭。日頃のもったりとした緩慢な動作は何だったのだろう?
光の精霊達が掃除機へ吸い込まれるゴミのように飛び出していく後を我マジカルキューティが続く。
モリっとした丘の上に、チミっ子が立っている。
「降臨が始まるですよー。頭を低くしてお迎えするですよー!」
キラキラと光の粒が空より降り注ぎ、エンタ○プライズ号の転送機が如く光の精霊神アルフィス様が降り立った。
相変わらす目を閉じておられる。
……本物なんだよねー、精霊神。以前疑ってた事があって、暗黒……光の精霊パワーで調べたところ、色々あって本物としか考えられないという確証を得た。
本物なんだけど、生きてる気配がしないんだよねー。まるで彫像なんだ。さすがホンモノの神だよなー!
「アルフィス様の代理であり巫女であるクレシェントが、もの申すですよー!」
くっそ偉そうにふんぞり返るチミっ子クレシェント。なんかイラッと来る存在だ。
「マーゾックの力が強大化したですよー。そこで、それに対応するためのアイテムをマジカルキューティに授けるですよー! 有り難く思うのですよー!」
クレシェントがどこからか取り出した先っぽにお星様が付いたバトンを一振り。キラキラのエフェクトと共に3つのネックレスが空中に現れた。
金色の、糸のように細いチェーンに小振りの宝石が。それぞれ、赤と青とピンク色している。
「その名も、キューティ・プリンセス・ネックレスですよー!」
3つのネックレスは意思があるかのように、ドギュンと唸りを上げ、思い思いの軌道を描き、それぞれの主となるべきションベン臭い2人の少女と天使のような少女の下へと飛んでいった。
うち1つ、ピンク色のネックレスが妹の掌に降り立つ。
「かわいー!」
お前の方が可愛いよ。
妹の可愛い首を飾るネックレス。イケる! 似合う! 今夜はコレだ!
「よしよし、お姉ちゃんが付けてやろう。何かバチバチ言うなぁ。大丈夫かコレ? 爆発しない?」
「バチバチは光と闇は戦ってる証拠ですよー。闇属性のお姉ちゃんは、なるだけ速やかに手を離すですよー。命が危ないですよー」
「なんなら、お姉ちゃんがもっと良いのをプレゼントしてあげるよ。GPS内蔵で何所にいても場所が解るヤツなんかどうだい?」
「だれか、警察に通報するですよー」
「サツに売んなやー!」
「げふぅー!」
あたしは腕を伸ばし、ガシィーっとチミっ子にのど輪を決めた。
「息がですよー! 頸動脈がですよー!」
「頸動脈より、ねぇねぇねぇ! あたしのは? 黒い宝石のは?」
「げふぅ、お姉ちゃんのは無いですよー。なんなら妹ちゃんのを渡しても良いですよー」
「ちっ!」
使えねぇー。チミっ子の首から手を離す。四つんばいで咳き込んでる。ザマァ!
「げほげほ、無くてもお姉ちゃんは強いですよー」
「まあね!」
自慢じゃないが――
「闇が巨大化すれば光も強くなるですよー」
ああ?
チミっ子が、老獪な魔女みたいな目で見上げてくる。
「解るか? ですよー。お姉ちゃんなら解るはずですよー。現に光の謎アイテムに触れたというのに、力が減退してないですよー」
……確かに。前回、光の園に立ってるだけでエネルギーがどんどんどんどん無くなっていき、次の戦いに支障を来した程だ。
ところがどうだ?
ほぼ、エネルギーの減退が無い。いや、減りはしたよ。妹にネックレスを着けてやるときにさ。
でもすぐに回復した。
妹の可愛い姿を見ただけで、もう、アレだ。アレとかコレとか白い首筋とか今晩とか想像したら、たちまちのうちに闇の……聖なる光のエネルギーが回復した。
「何か邪な顔をしているけど、おそらく、だいたいでお姉ちゃんの考えは正しいですよー。光が強くなれば影も強くなるですよー。影が強くなれば光も強くなるですよー。お姉ちゃんの闇の……もとい、光のエネルギーも強くなるですよー」
「そういう事か」
真理を見た気がする。
「そういう事ね」
「そういうこっちゃな」
「そういうところだニュ」
ブルーとレッドとUMAも理解できたようだ。
「お恐れながら、クレシェント様……」
髭の長老が土下座している。
「どうした爺」
「お姉ちゃんは黙ってるですよー。何か話かですよー」
長老は顔を上げた。目にはおびえの光が。
「マジカルキューティの力を上げれば、戦いは激しくなるでしょう。熾烈なものとなるでしょう。戦いにおける被害が増えましょう。逆に、力を落とすことは出来ますまいか? ブキュル!」
わたしの足の裏とパステルピンクの地面の狭間で爺が呻いている。
「もうそんな事言ってる場合じゃねぇんだよ! 頭の中が光の園の爺さんよ!」
「しかし!」
まだ口答えするか、コノヤロウ!
「お姉ちゃんも、力を抜くですよー。長老の言もまた正し、ですよー。でも今のその言葉は、マーゾックに組みする者の言葉ととらえられても仕方ないですよー。そして、アルフィス様のお考えを否定する、つまり批判し異を唱える事に繋がりますですよー」
他の意見を聞かない。さすが宗教! 原理共産主義社会!
「その……アルフィス様は、何も仰っておられません。クレシェント様が――」
「それ以上、口を開いてはいけないですよー。なんなら、長老がわたしの変わりにアルフィス様のお言葉をお聞きになってもよろしいですよー」
「そ、それは……」
ま、白髪爺程度の能力じゃ声は聞こえないだろうな。第一――。
「なあ爺さん。そのアルフィス様は本物だ。闇の精霊力、もとい、あたしの光の力でも太刀打ちできないほどの……大怪我負わせることはできるだろうけど、あたしもただじゃ済まないでしょう。疑うのがどうかしている」
「うっ、闇の精……もとい、お姉ちゃんが、歯が立たない、と言うからには確かに本物! 説得力有りますのじゃ。これまでの弁は、この爺の不徳と致すところ。何卒お許しを!」
あたしの足の裏で土下座する爺。器用な……さすが光の精霊の長を張るだけのことがある。
「分かればいいのですよー」
チミっ子の懐の広さは感心するが、長老の心の狭さは感心できない。その目はまだ不満の光を湛えている。自説を曲げるつもりはないようだ。
邪魔される前に、スパっといっとこうか?
あたしは腕に力を集めた。
「……仕方ないですよー。禁忌に触れる部分があるのですが、一部解除しますですよー。一度しか言わないので、耳の穴かっぽじってよく聞くですよー」
ごくりと、誰かの喉から音がした。
光の精霊を自称するUMAたちと、妹たちマジカルキューティが身を乗り出した。
面白そうな話が始まりそうなので、あたしも処刑……もとい、攻撃を中断して話を聞くことにした。
「人間達が暮らす世界は、闇の空間、マーゾン空間を介し、これまで5つの世界が確認されているのですよー。マーゾン空間、もしくはマーゾン時空という闇の海に浮かぶ5つの泡だと思って欲しいですよー」
さっそく解りません。
「第1と第2の世界はマーゾックにより闇に落とされたですよー。第3の世界も光の園が犯され、人間世界にマーゾックの手が伸びつつあるですよー。そして、ここは第4の世界ですよー」
「な、ならばこそ、被害が大きくならないうちに――」
何が言いたいのか、爺が声を荒げる。
それを目で押さえつけるクレシェント。なかなかの眼力である。
「かろうじてマーゾックの魔手を防いでいるのですが、忘れないで欲しいですよー。5つ存在する光の園のうち、3つまでが陥落しているのですよー。当然、各世界にマジカルキューティはいたのですよー」
「そ、それでは!?」
ようやく、老人は気づいた。
「こちらが武力放棄すれば、マーゾックは喜んで侵略に力を入れるですよー。すでに3つの世界を破壊した実績があるのですよ。その世界に無垢なる人々に、闇の手が及んでいるのですよー」
まだ人が生きているだけましか。時間の問題?
「破壊のための破壊ですよー。滅ぼした世界を治めるつもりはなさそうですよー。むしろ住民を先兵として改造しているですよー。闇という領土を広げんが為だけの侵略に停止はないのですよー」
「いわゆる、基本的概念の違い、かしらね」
ブルーの眼鏡が光を反射してないですよー!
「その通りですよー。マーゾックは光を恐れる。自分を殺す力があるからですよー。だから、不安なのですよー。だから、光が無くならない限り、マーゾックは侵略を続けるのですよー」
なるほど!
「ってことは、どちらかが死に絶えるまで戦いは続く、ちゅーこっちゃな。難儀なー」
「分かり合えないのかしら?」
妹が意見を述べますよ! はい、傾聴ー!
「お互い、住むところを決めて、互いを認め合って、その、つまり、えーっと」
「互いの内政不干渉。だろ?」
お姉ちゃんは助け船を出すよ!
「中でどんなことが行われていようと、他陣営は口出ししない。それがそれぞれの文化の上に成り立っているのだから」
自分の正義を押しつけても争いは起きるからね。余計なお世話するヤツほどうっぜぇんだ。ぶち殺したくなるのも自然な考え方であろう。
「なんとなくだけど、お姉ちゃんが怖いこと考えている気がするですよー」
正義の使徒をつかまえて、失礼な! 一連の戦いは終わったら、失礼な巫女もとりあえず殺しておくか?
未来の計画は横に置いておいて……
光も闇も両極端なんだよな。白か黒かでさー。灰色とかピンク色とか無いのかなー?
例えば、ホラ、えーっと、なんて名だったっけ? そうそう、太極拳のマーク。白と黒のオタマジャクシがスケベチックに絡んでるアレ。互いの中心部に反対の色が目のように入ってるアレ。
光だの闇だの言ってるが、所詮光と闇。片っ方で立ちゆくはずも無し。闇に光を強制しても生きていけない。マーゾックを含めたこいつらに必要なのは、勝利は敗北かじゃない。灰色なのだ。
なんなら、あたしが直接手を下して光と闇をぶちこわして混ぜるって手もありか?
あれ? そうすると他の3つの世界は光の園が殺られてるのに? ……いや、ちょっとまてよ? 灰色と言えば……
「お姉ちゃんの考えは、過激すぎでも正しい、の、かもですよー」
こいつ……人の考えを……いや、推測だ。あたしという存在を知り、顔の表情とかで何を考えているのか推定したんだ。
「アルフィス様も同じ終着点をお思いになっているですよー。そこまで過激ではないのですがよー。そして、すでに行動に出られているのですよー」
動いている、だと?
もしや、だから――。
「だから、このようにして寡黙になられているのですよー。能力のほとんどを対マーゾックに使われているのですよー。ちったぁ空気読むが良いのですよー!」
なるほどね。
「でもってですよー。先ほどから町にマーゾックが出現して暴れているのですよー!」
「早くそれを言えー!」




