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魔法少女のお姉ちゃんは変質者-SER.とりあえず殺しておくか。  作者: モコ田モコ助
第4章 マーゾック

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1.それぞれの戦略

6年ぶりに再開です。


 ここは、日の昇らぬ世界。

 お姉ちゃん達、マジカルキューティが、いまだ反抗を続ける第3世界の近似値亜空間。

 そこに浮かぶ、空間移動揚陸艦ネガティブ=ナヒト。

 第3世界方面侵攻司令官ナグール=クライマーは怪我の手当をしていた。


「はい、これでお終い。温和しくしていればすぐに治るわ」

 妖艶な美女にして副司令官ケルーナ自らの手で、ナグールの肩に包帯を巻いていた。治療を終え、肩の包帯に優しく手を当てる。

「すまぬな、ケルーナ」

 ケルーナが肩に置いた手に、手を重ねるナグール。


「失礼いたしやす」

 狼の頭を持つマーゾック、ヅツーキがノックをせずに入ってきた。

「あ、失礼いたしやした。どうぞ、続きを――」

 回れ右をするヅツーキ。

「報告をしてから退出しなさい」

 ケルーナがヅツーキにかけた声はナメクジの大群に掛ける塩のようだった。


「へ、へい。12強ネクライマーは全員が均等に中と重の損傷でやす。(ユウ)のダメージが一番酷いっすね。羽がもげていやす」

 謎の爆発からナグールを守るため、彼ら彼女らは身を挺したのだ。

 特に、鳥形のユウは片翼を欠損してまでいる。再生できるが、時間がかかる。


「全員、しばらくは動かせませんや。やつらを回復ポットに放り込んでおきました」

 怪我を報告しているヅツーキは、全く無傷に見える。が、軍服の下は包帯でグルグル巻きになっている。

「ダメージは深刻だ。しばらく動けぬとは情けない」

 長い犬歯を剥き出しにして食いしばっているナグール。握りしめる拳から、ギチギチと音が聞こえてくる。

「えーっと、通常のネクライマーを出しやしょうかね?」

「茶を濁す趣味は持たない」

 ナグールは、顎に手を当てて考えた。


「……しかたない。助っ人を呼ぼう。アイツには貸しがある」

「へぇ? まさか、ブッコワースを? 俺じゃダメっすか?」

 狼の耳がヘニャリと萎れた。

「お前にはやってもらうことがある。第1世界と第2世界の今を調べてこい。何人か使って良い」

「へい! よろこんで!」

 司令をもらったヅツーキは、急ぎ足で部屋を出て行った。


 それを見送り、ケルーナがナグールにしなだれかかる。

「第1と第2が気になりますか?」

「おかしいのだ……」

 ナグールは顎に拳を当て、心ここにあらずの表情を浮かべている。

「光の園が崩壊したのに、人の営みが続いている。光という希望を無くした人間共が、なぜ世代を繋ごうとする?」


「……ネガ・クライマー様のご指示を疑う――」

「それ以上口にするな! ケルーナであろうとも処分する!」

「……了解です、司令。わたしは何も申し上げておりません。話変わりますが――」

 この辺り、阿吽の呼吸である。自分の失言にナグールは処分を匂わせる。ナグールもそれはしたくない。この話はここで打ち切り、別の話に入ることでお互いを有耶無耶にする。

「サタノダーク様が敗退した第3世界を、ブッコワースなら時間稼ぎが出来ると?」

「光の園を……少しでも削れればよい……」

 ナグールは、我ながら情けない。そう思っていた。



 その光の園では――


 なんだかなー。マジカルキューティよ、集まれ! ってんで、わたしもつめかけたんだけどさー。なんか暗ーい。

「お姉ちゃんはマジカルキューティじゃないブキュル! い、痛いニュ! 握力何トンなだニュ!」

 ばかなUMAは、頭蓋骨をギシギシ言わせておくとして――。

 みんなは普段着で集まった。連中の寒いセンスじゃパステルカラーのイカレた国に溶け込めていない。妹は別だ。カワイイは正義だから! スッゴク似合うよクンクン!

 でもって、大木の中を刳り抜いた洞的な会議室に集合している。テーブルはおっきな切り株だ。

 マジカルキューティ4人とニュウニュいってるUMAと、長老始めとする光の園の有力者達。最強の精霊戦士はいない。こないだ痛い目にあわせた。あの時の怪我が治ってないそうだ。無理せず寝てろ!


「正直言って、勝てへん」

 レッドが素直という言葉を覚えた。

「マジカルキューティの弱点を突かれたわね。それも最大の……」

 ブルーも深刻な顔をしている。そうやって皺を増やすがいい!

「マジカルキューティに弱点など無いニュ! 正義はブキュルリ」

 頭の緩いUMAは踏みつぶしておくとして――とうとう、マジカルキューティが壁にぶち当たった。

 ならば宣言しよう! 妹をヤクザな業界から足を洗わせるんだ!


「おそらく、いや、明確にこの時点でジ・エンドだ。マジカルキューティの戦いはここまで。皆様、ご苦労様でした。はい解散!」

「お姉ちゃんも寝言は寝て言えだニュ!」

 復活が早いな、シナモ的UMA。さすがUMA! USAと一字違いなだけある!

「マジカルキューティの弱点とは、なんじゃな?」

 光の精霊、その長老が白い顎髭を扱きながら聞き返してきた。

「解らない時点で終了だ皆様、ご苦労様でした。はい解散!」

 バカ相手に答えるつもりはない。あたしの返事は冷たいのかもしれないが、わざとだ。気にすんな!


「最大の弱点って?」

 妹はいつもベストなパスを出す! 天才か! 

「ふふふ、それに姉として答えてあげましょう。最大の弱点とは!」

「最大の弱点とは?」

 精霊達が前のめりになる。レッドは迷惑そうな顔をしている。ブルーは眼鏡の反射率を迷惑そうに上げた。


「弱いって事だ」

「え?」

 光の精霊達はの(おつむ)じゃ理解不可能だろう。

「マジカルキューティの戦闘力を10点満点中10点とすると、敵マーゾックの戦力は……」

「ふんふん、マーゾックの戦力はニュ?」

 精霊共が身を乗り出してきた。

「……1億5千万点」

「ニュ?」

「じゃぁ、まけて5千万点」

「ど-ゆーことだニュ?」

 あたしに詰め寄られてもなぁ。


「勝てない、ってことよ」

 ブルーの眼鏡が光を遮断した。本気モードである。このモードに突入したブルーの戦闘力は爆あがりする。あたしですら手出しをためらうほどだ。

「防御力は、まあ、問題ないわ。一方、決め手に欠けている。これが致命傷」

「必殺技の貫通力やな」

 レッドですら、この問題に気づいている。気づけないでいる光の園がおかしい。むしろ、(おつむ)が光の園ではなかろうか?

 これはあたしが当初より指摘している点だ。光の園の(おつむ)の件を。


「そんなこと無いニュ! 僕たちは今まで上手くやってきたニュ! 12匹のネクライマーだって退却させたニュ! 痛い痛いニュ! 頭頂骨の合わせ目を開いて指を差し込まないで欲しいニュ!」

 第三関節まで指を脳にねじ込んで黙らせた。


「なのなー。あいつらが撤退したのはマジカルキューティの攻撃によってじゃないっしょ? ちゃんと見てた? いよいよ目を刳り抜いてアルミホイールで埋めなきゃならない? どのメーカーが希望? 百均のでいい?」

「お姉ちゃん、可愛そうだからやめてあげて!」

「はい! やめました。やめたよー!」

 妹は優しい。アルミホイルはやめます! ビー玉にします! こちらの方がキラキラして綺麗だしね!


「なあ、あれ何なん? うちには腕に見えたけど?」

 何もない空間から伸びてきた指付の人間の腕のことだ。

「お姉ちゃん、あんたなら何か話せるんじゃないの?」

「ブルー。ふふふ、あんたの(おつむ)も大したこと無さそうだな! ふふふ……知らなねぇし! ブルーに解らないことをわたしが知るよしもなし! わたしの頭脳を買いかぶるなよ!」

 ブルーの透視光を遮断した眼鏡が光った。

「……推測の範疇で。別の世界からの干渉でしょうね。そのそも、マーゾン空間という別空間、亜空間、が存在するのですもの。違う空間から、わたし達の空間へ干渉した何者かがいる。腕は膜みたいなのに覆われていたから、こちらへ突き抜けてはいないのでしょうけど……突き抜けようとして爆発が起こった。それにより干渉が無くなった。と、考えるのが一番すっきりするわ」


 だそうだ!


「ふーん……」

 ほら、妹も難しいっていってる。そういう顔をしている!

「3つめがいるって事かしら? ね、お姉ちゃん?」

「そのとうりさ。あれは第三の勢力だろう」

 妹の言うことはこの世の真理だ。何かと引き替えにしなければ得られない真理だ。例えば、あたしのプライドだとかを引き替えにして妹のパンツを手に入れるとか。


『皆さん、アルフィス様、ご降臨ですよー!』

 空間に響く声。なんだっけ? そうそう、クレシェントとか言う、ちびエルフの声だ。



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