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探索

大開樹という男は、俺の記憶の中では、理知的で万人に笑顔で接しているイメージだった・・。

そうだったのだ。出発式のキレッキレのヤバさがそれらを塗り替え、そして、今、正にそのイメージも崩れ去っている。

「アアアアアアアアアアアアアアアア!!捻れて皆が、なんで?どうして?ウッワアアアアァアアアア!!!嫌だ!!帰る!!俺は帰るんだあああ!!ここは嫌だぁ!!!」

起き上がるなり、叫びながら、ただただ、無作為に暴れまわっている団長に、俺を含め、皆が呆然としている。

「誰か!団長を止めるんだな!」

大物ちゃんが正気を取り戻し、制止の為に皆を呼んだ時には、団長は外部に繋がるドアの前に辿り着き、あっという間に出ていってしまった。近くにいた岩屋を含む数名が、団長を追って外に出ようとする。

「待て!とりあえず、皆落ち着けや!」

西灘が声を荒げる。何人かはそれで完全に制止していたが、

「しかし、団長が外に!」

やはり、即、連れ戻したい。西灘はそれを制するように手を前に出すと、

「わかっとる!闇雲に出てもどうにもならん!千船君、出屋敷君と鳴尾君で小隊組んでもろてええか!

御影君は、淀川君と青木君で頼む!団長が見つかれば、即帰還。最悪、見つからん場合でも、1時間で一旦ここに戻ってくれ!時計合わせよろしく!後、岩屋君と洲先君は出口付近の哨戒してくれ、大物ちゃん、探して欲しい薬品とかあるなら探索隊に伝えてくれ」

矢継羽矢に指示を下した西灘に、皆、応えるように動き出した。こういうところは真似出来ないなぁと素直に感心する。

「悪いがここに残る皆に、装備品入ったリュック使えそうにない奴いてるんなら、探索隊に渡してやって」

徹がこれまた大きな声で皆に声をかける。すると、負傷者の何人かが、俺たちにナイフなどを渡してくれた。礼を言い、出口に向かうと、大物ちゃんがいた。

「悪いがこれとこれ、こういう表記の薬品があれば、ぜひ持ってきて欲しいんだな、頼むんだな、後、包帯とかあれば、是非、頼むんだな」

そう言うと、大物ちゃんは薬品のか書かれたメモを渡してきた。申し訳無さそうに俺たちを見る彼に言葉をかける。

「あれは、しょうがないさ、あんなに取り乱したら誰だって焦るよ。実際、俺ら、役立たずだったしな、気に病むなよ、大物ちゃん」

「本当にすまないんだな、普段の樹君・・いや、団長を知ってただけに動揺してしまったんだな・・・あんな彼を見たことが無かった。正直、怖かったんだな。だから、こんなこと頼める筋じゃなんだけど、団長を見つけて、連れ戻して欲しいんだな」

「勿論さ、行ってくるわ」

大物ちゃんの悲壮な顔を前に、ここまで頼まれたら、断るのは男じゃないだろう。まぁ、正直、不安だらけだけどな。でも、これ以上、仲間を失うのはごめんだ。

「じゃ、いってくるわ、皆も気をつけてくれ!」

「ああ、勿論だ。無事、帰ってこいよな、彼方。団長を見つけて来てくれ」

「頼んだ、千船君、御影君。よろしうな」

徹と西灘も、不安そうにこっちを見ていた。そんな顔すんなよなぁ・・・そうならないように比較的明るく挨拶したのになぁ・・・ふと見ると、横の御影がすごい緊張してた。振ってる手が震えてる。ああ、ザ・冷静とか、クールメンとか俺含め、皆思ってたこいつがこんなに緊張してるということは、俺も思ったより、強張ってたんだろうな顔・・。こういうところは、うまくやれてると思ってたんだが、やっぱり緊張してるんだなぁ・・訓練じゃ死ぬ危険はほぼないもんなぁ・・・。

バシンッ!

威勢のいい音が出た。隣の御影が唖然とした顔で俺を見てる。ジンジンと両頬が痛い。思ったよりも力が入って、涙目だが、これでいい。切り替えが出来た。

「よし、行こう」

鬼が出るか蛇が出るか・・。ゆっくり扉を開けると、そこには灯りがある整備された空間だった。

「地下か?」

プラットホームに降り立った御影が口を開く。電源も生きているようで何より。ぐるりと周囲を見渡すと、同盟内の駅とそっくりだ。まぁ、こちらが元なんだろうが、となれば・・・。

「だろうなぁ・・・、で、御影。どうする?ふた手に別れる?」

そう言いながら、向かい側のホームの階段を指差す。出る所が同じだろうとは思うが・・・。

「同盟内の駅舎と似た感じがするな、おそらく出る所は同じだろう。とりあえず、分かれ道までは一緒に行動しよう」

「随分消極的だな、違ったら、御影班が向こう側の階段だな?」

横から出屋敷が、突然、嫌味ったらしく言い切った。御影への対抗意識が出まくってる・・・お前って奴は・・・。

「それで構わんよ。とりあえずはな」

やれやれといった感じで、御影が返す。緊張してたさっきとは違い、ある意味、見慣れた風景が、御影に平静を取り戻さしたようだ。うーんこの冷静さ。そういった意味では、このプラットホームに出て良かったのだろう。ただ、本当に一緒かどうかは上がってみないとわからない。

「分岐までは同行で、じゃあ、ウダウダ言わずに行こう」

更に噛み付きそうな出屋敷の出鼻を挫き、階段へ。スタートで出鼻を挫かれるのはよろしくない。

上の階に上がると、やはりというか推測通り、同盟内の駅舎と同じ作りだった。改札までそっくり・・。

と、いうことは・・・

「ここまでそっくりだと・・・見取り図あるな・・・これ」

「そうだな・・・あると楽だが・・・そうであってほしいな」

御影もすっごい微妙な顔つきになっていた。それはそれで、なんというか、あれだけ悲壮な決意で車内を出て、この落差はある意味、トラップと言えなくもない・・・。そうこうしている内に改札を抜ける。

「あったな・・・・見取り図」

「ああ、助かるな・・・」

地下駅構内見取り図がそこに存在した。全員でそれを見る。嬉しい発見なのだが、俺と御影のテンションは微妙だ。複雑な心境。よく見ると、ようこそ日本へって殴り書きまであるよこの見取り図・・・。気を取り直し、地図部分へ。現在地は地下23階らしい。改札フロアとしか書いていない。階段2箇所で地下22階へ。

こちらは円形の作りでフロア中心には上階へと繋がるエレベーターが設置されており、その周りをぐるりと医療施設、武器庫などなど出発の起点としての機能があるようだ。直通エレベーターで地下2階まで出ると、あっという間に地上だ。これはまずいな。

「これによると、医療施設は・・・・地下22階北東ブロックにあるな。どうする?千船?団長は依然、見当たらないが、医薬品は確保できるかもしれんぞ?」

「医薬品は確保したいな・・・あの状況の団長が、一つ所に留まるとは限らんし、かといって、地上まで出られるとなると・・・とりあえず、御影のとこは医療施設で薬品の確保、ウチが周囲を警戒しつつ、団長の探索でどうだ?余裕があれば、地下2階まで行きたいが、そこまでは・・医療施設周囲で確保できればありがたいが・・」

「オイ、千船!とりあえずってそんないい加減なことでいいのかよ!大物に約束してたのは嘘か!何を置いても、団長の捜索に力いれるべきだろう!俺ならそうするぞ!」

俺のとりあえず発言が不味かったのだろう。出屋敷が憤りながら、詰め寄ってくる。彼の勘違ぶりにため息もでそうになるが、ぐっとこらえ出屋敷に向き合った。はっきり言おう。

「出屋敷、とりあえずといったのは悪かった。勿論、団長は大物ちゃんに約束したとおり、必ず連れ帰る。だけど、医薬品を確保しないことには、怪我人の治療もできないし、他の案件に人員を注ぎ込めないだろう?ただでさえ、大変な状況だし、人手が増えるに越したことはないだろう?それとも、このシェルター層を抜けた先にお前一人で行くつもりか?」

少し、脅しも兼ねて出屋敷には、キツ目に言う。さっきまでの俺の態度との違いを感じたのか、出屋敷は皆の顔を見渡した。その表情で察したのだろう。皆がいい加減にしろと思っていることを。

「いや、その、わかってるよ、ただ、急がないと、団長がさ・・」

急に歯切れが悪くなったな、オイ。このやろう。俺ならなんとかなるとか思ってたのかよ・・・。御影に対抗意識ありありだわ。帰ったら西灘に文句言っても許される気がする。

「じゃあ、さっさと行こう。ここでぐだぐだ言ってる時間が惜しい」

俺が言いたかった事を、御影が、言い切ってしまった。オーマイガー。

「い、言われなくても!」

顔を真赤にした出屋敷が階段に向けて駈け出した。ちょっと待て、お前一人でガンガン行くな。御影を見ると特に何も感じていないようだ。御影のハッキリ言ってしまう性格が悪い方向に出た・・・。こういう所が合わない理由なのか。問題ありすぎて少し泣けてきた。

出屋敷が先行する形だが、階段を上がり、上階へ。折り返し階段を登りきると、そこは見取り図道理の間取りだった。御影には医療施設へ向かうように合図を送る。それを受けるとハンドサインで小隊員へ指示を送る。淀川、青木の両名は速やかに行動を開始した。

周囲を警戒しながら、一丸で一直線に医療施設へ向かう。うーん。頼れる小隊。

一方、こちらも見ているだけでは、団長を見つけられないので、小隊として行動したい。と、なると制御不能を解除せんといかん。出来る御影を見て、更に先走りそうな出屋敷の肩を掴む。

「周囲の探索、気をつけろよ。途中に罠の類や敵影無かったのは良かったけど、似てるけどここはもう俺らの知ってる場所じゃないんだからな。完全に安全じゃない。無事に連れ帰るのはお前も含んでるだからな」

肩を掴まれ、ムッとした表情で俺を見ていたが、俺の言葉にハッとなった後は、無言で頷いた。鳴尾に目を向けると、すでに周囲に気を配っていた。ありがとうございます。

「とりあえず、探索メインだから散ろう。それぞれ施設内をきっちり探そう。異常、発見あれば呼んでくれ。質問は?」

二人共、無言で首を振る。鳴尾は壁沿いに西方向へ向かい、出屋敷はエレベーター方向へ、俺は東側か。

壁沿いに見ても、罠とかありそうにないんだが、やっぱり知らないだけでどんな罠があるかわかったものじゃない。細心の注意を払いながら、前進する。

武器庫と書かれた部屋の扉の前に来た時には、流石に緊張した。

だが、以外にもドアは開いており、慎重に覗き込むと、中には89式小銃などが何丁か見える。とりあえず皆を呼ぼうと思ったときに出屋敷の悲鳴に似た声が響いた。

「おい!不味いぞみんな!団長、地上に行ったみたいだ!」

目の前が真っ暗に鳴った気がした。

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