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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
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59 勇者と精霊2

 

 私の目の前に、お伽噺の存在がいる。


 神の使者であり、神聖な存在


 ・・・・・・精霊


 私は慌てて、膝をつき頭を下げる。


「せ、精霊様、無礼な態度をお許し下さい」


「ふむ、気にしなくていいよ。僕の事は気軽にジークと呼びたまえ!」


「そ、そんな、精霊様を名で呼ぶなんて無礼な事・・・・・・」


「僕の魅力に夢中になっている者達は皆ジークと呼んでいるよ? それに僕は寛大なのだよ。何故って大精霊だからね? フハハハハァァ!」


 精霊様が高笑いしている。

 こんな事思ってはいけないのはわかっているけれど・・・・・・可愛い


 見た目は子供で、小さくて、可愛いのに、喋り方は偉そう・・・・・・偉いのだから当たり前だけど。


 とにかく、ギャップがあって可愛い。


 あぁ、得意気な顔をして腕を組んで私を見ている姿・・・・・・可愛い。


 本当に名前で呼んでいいのかな?


 ジーク様


 ジークちゃん


 ジーク


 ジークちゃんって呼びたいけど、流石に失礼だよね。


「むっ? どうしたんだい? あぁ、そうか! すまないね、気がつかなかったよ! よいしょっと」


 私が呼び方で悩んでいると、精霊様が、椅子からピョンっと飛び降りて、トテトテと私の方に近付いてきた。


 私の目の前でピタリと止まった、精霊様・・・・・・ジーク様は、不釣合いな帽子を脱いで、小さくて可愛い腕を突き出して、こちらを見ている。


「あ、あの、精・・・・・・ジーク様? 一体何を?」


「ん? 何って抱っこだよ? 僕を可愛いがりたいんだろ? 遠慮する事はないよ?」


 なんて生意気で可愛い生き物なんだろうか。

 欲望を抑えきれなかった私は、ジーク様を抱っこした。

 頭を撫でて、頬をスリスリして、可愛いがった。

 その際、ジーク様が満足そうな顔をしているのが、更に可愛くて、私は頬を緩ませる。


 ・・・・・・幸せな時間


 いつ以来だろうか?


 故郷で家族と過ごした時


 ミラと過ごしていた時


 私は幸せだった


 勇者としてではなく


 エイミアとして過ごしていたから


「おっと、僕とした事が、忘れる所だったよ、よっと」


 私が、ジーク様を可愛いがりながら、物思いにふけていると、ジーク様が何もない空間から、一通の手紙を取り出した。

 何処から取り出したのだろう? と不思議に思うも、ジーク様は精霊だ。

 きっと、特別な力を持っているのだと思うので、気にしない事にする。


「はい、君にだよ」


「私に? 一体誰から?」


 疑問に思いながらも、封を切り、手紙を読み始めた。



【親愛なるミアへ】


【ミア、久しぶりなのです。

 元気にしてるのです?

 私は元気なのです。

 お父さんもお母さんも元気なので安心するのです。

 私達はお父さんの故郷のアーデル村で暮らしているのです。

 山に囲まれた田舎だけど、とってもいい所・・・・・・】


「嘘・・・・・・ミラ」


 手紙を読みながら、私は驚きの余り声をあげてしまった。

 私の大切なお友達からの手紙だったから・・・・・・

 無事だった。

 元気にしてるみたいだ。

 よかった・・・・・・本当によかった。

 目から涙が次々に溢れ、視界が滲んでいる。

 手紙が読みにくいじゃない。

 だから泣くな私。


【勇者として頑張ってるのです?

 無理してないのです?

 淋しい思いをしてないのです?

 相変わらずの泣き虫さんなのです?

 治ってないなら、手紙読みながらきっと泣いてるのです。

 ふふ、泣き虫ミアなのです】


 頑張ってるよ


 無理してるよ


 淋しいよ


 泣いてるよ


 泣き虫だもん



【それでね、私達が王都を追放された事を、ミアは自分のせいだと、責めていると思うのです。

 もし責めているなら・・・・・・ううん、きっと責めているのです。

 それは、間違いなのです。

 ミアは何にも悪くないのです。

 私達は、ミアが自分を責めて、辛い思いをしていないか心配なのです。

 だから、責めたら駄目なのです。

 わかったのです?

 わかったのなら、泣き止んで笑うのです。

 ミアは泣き顔よりも、笑顔がとっても似合うのです。

 離れていても、ミアは私の大切なお友達。

 いつも笑顔でいてほしいのです。


 ミランダ=ライラ】


 私のせいで安全に暮らせる王都から追放されたのに・・・・・・私が悪いのに、寧ろ気遣って・・・・・・

 私の事を、大切なお友達だって言ってくれて・・・・・・うぅ、ミラァァ


「わぁぁぁん! ミラァァ、ミラァァ!」


 感情を抑えきれなくなった私は、泣き叫びながら、ジーク様を強く抱き締めた。



 ***********



 ふぅ、とりあえず手紙を渡す事が出来て一安心だね。


 ここまで辿り着くのに、僕がどれだけ苦労した事か。

 それもこれも、あの馬鹿のせいだ!

 予定では、僕の名案に感心したダイスケから聖なるお菓子を貰う予定だったのに


『ジーク、素晴らしい名案だ! 行って来い!』


 と言って、全力で城の方向に僕をぶん投げた。

 幾ら精霊があらゆる攻撃を受けないといっても、あんまりだ!

 怖いものは怖い!

 そもそも、こんな可愛い僕を全力で投げれるなんて悪魔かあの馬鹿は!

 僕が精霊じゃなかったら間違いなく、死んでいただろう

 凄い勢いで城門に激突したからね。

 運よく、勇者が城に入る前だったから、すんなりと城に入る事が出来たけど、それからが大変だった。


 無駄に長い巨大な階段の途中で、体力が尽きて、動けなくなった。

 でも、僕は頑張った。

 時間はかかってしまったが、這いずりながらも、階段を昇りきったんだ!

 でも、そんな頑張り屋さんの僕に更なる試練が待っていた。

 勇者の姿を完全に見失ってしまったんだ。

 何処に行ったのか見当もつかない。

 僕は途方に暮れた。

 動く気力もなく、その場に座り込んだ。

 しかし、日頃の行いが余程いいのか、奇跡が起きた。

 勇者が、目の前の大きな扉から出てきたんだ。

 僕は、勇者の後を追った。


 疲れ切った身体


 極度の空腹状態


 空間から食べ物を取り出そうとして、ブルドラの生肉しかない事に気付いて、絶望したりもした。


 やっとの思いで、勇者の部屋まで辿り着いたのに、中々開けてもらえなかったのも辛かった。


 災難でしかない。

 時間をかけて準備をしてから行動すればこんな苦労しなかった筈だ!

 事を急いだダイスケが全部悪い!

 僕は絶対に許さないぞ!

 聖なるお菓子5個は貰わないと、とてもじゃないが・・・・・・


「わぁぁぁん! ミラァァ、ミラァァ!」


 僕が、対価について思考していると、突然勇者が、泣き叫び、僕を強く抱き締めた。


「ミラに会いたい。おじさんにも、おばさんにも会いたい会いたい会いたい会いたい・・・・・・」


「大丈夫かい?」


「うぅ・・・・・・うぅ、ジーク様ぁぁ、大丈夫じゃない。うぅ」


 酷く動揺していて、大丈夫じゃないらしい。

 泣いているという事は、手紙に悲しくなるような事でも書かれていたのだろうか?

 人間の感情は難しく、精霊である僕には理解出来ない。

 でも、会いたいと何度も叫んでいる事から、計画には問題なさそうだ。


「それでだね・・・・・・」


「うぅ・・・・・・ミラァァ」


 ふむ、勇者がこんな状態ではまともに話す事は出来なさそうだ。

 やれやれ。

 僕は泣き続ける勇者が落ち着くのを待つ事にした。


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