↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
58/61

58 勇者と精霊1

 

 兵士達が、魔法を放ち続けている。

 その魔法を、仮面の者は人外な動きで避け続けている。

 恐らく逃げられると思う。


 兵士達は魔物とか化け物とか騒いでいるけれど、間違っている。

 先程仮面の者が私に放った魔法の効果はわからない、けれど闇魔法ではない事はわかる。


 身体中から穢れが祓われるような


 解き放たれたような


 優しい光が私を包み込んだ


 身体に異常もない。


 魔物が扱える魔法は闇属性だけ。

 だから魔物ではない。

 背丈と、体型から人間の男性だと思う。

 目的はわからない。

 何故あんな格好をしているのかもわからない。


 紺に染まった奇異な衣服


 隻腕


 禍々しい白い仮面


 ・・・・・・怪しすぎる。

 子供が見たら泣いてしまう。


 ふと、視線を感じた様な気がして、その方向を見やると、徐々に広場から離れていく仮面の男の姿があった。


 結局、私に魔法を放った以外は、反撃する素振りさえ見せなかった。

 もし、悪者でないのなら、私は謝らなければならない。

 咄嗟に中級魔法を彼に放ってしまったのだから。

 幸い、動きを見る限り、大した怪我はしていないようだけど。


「勇者様! 申し訳ありません。逃がしてしまいました」


「・・・・・・そう。ならば城に戻りましょう」


「はっ! 第一部隊は魔物を追跡しろ! 第二部隊は隊列を組み直せ! 城に戻るぞ!」


「「「「はっ!」」」」


 わからない


 わからないけれど


 ここで悩んでいても仕方ない


 再び隊列を組み直し、広場から城へとゆっくりと、移動を始める。

 先程の騒ぎがなかったかの様な、人々の歓声に苦笑いを浮かべながら、ようやく城門前に辿り着いた時だった。


 ワァァァァァァァァ!


「「「「勇者様ぁぁ!」」」」


「「「「勇者様ぁぁ!」」」」


「・・・・・・ひぃぃぃぃぃ」


「・・・・・・悲鳴?」


 歓声に交じって、何か悲鳴のような声が聞こえた気がして、辺りを見渡すも、人々が私を称えて騒いでいるだけで、特におかしな様子はない。


「今、悲鳴が聞こえませんでしたか?」


「悲鳴ですか? いえ、聞こえなかったです」


 近くを歩いていた兵士に訊ねるも、聞こえなかったらしい。

 不思議に思いながらも、馬を進め、巨大な城門を潜り、城へと帰還した。












「勇者様、王様が謁見の間にてお待ちです」


「・・・・・・わかりました」


 城門を潜り、無駄に長い石畳の道を歩いていると、近衛騎士から声が掛けられる。

 城の広間に到着した私は、二階にある謁見の間に向かう為、長い階段を重い足取りで昇る。


 憂鬱だ


 城に戻る度に、行われる無意味な謁見


 私を褒め称えるだけの、無駄な時間


 階段を上がりきると、見慣れた豪華な扉が近衛騎士によって開かれる。


 足を進めると、お馴染みの光景が目に入る。


 中央に敷かれた赤絨毯


 左側には、王族を守護する近衛騎士達


 右側には、国を支える文官達


 総勢20人以上が、整列している。


 そして赤い絨毯の先には、無駄に豪華な玉座に座る王様の姿。

 その隣に王妃、王子、そして王様の弟である宰相。

 私が嫌いな王族達だ。


「勇者様、長旅お疲れ様でした。無事に魔物から村を守り抜いたと聞いております」


 威厳も何もない無機質な声。

 アストリア王国の最高権力者

 バーリィ=K=アストリア


「はい、無事に魔物を殲滅する事が出来ました。それで何か御用でしょうか? 疲れが溜まっているので、何もなければ、部屋に戻りたいのですが」


 我ながら失礼だと思う。

 呼ばれて直ぐに、退出しようとするなんて。

 でも、今までの経験からいって、無意味な時間を過ごす事はわかっている。

 そんな無意味な時間を過ごすくらいなら、部屋に戻って家族からの手紙を読み直したり、ミラと過ごした楽しかった日々を思い出してニヤニヤしたい。

 最低限顔を出したのだから、もう解放してほしい。


「勇者様は身分の低い下劣な者達に騒がれて疲れているのね。早い内に何か対策をたてないと」


「まったくその通りです! 高貴な勇者様に、下々の者が声を掛けるなど万死に値します」


 王妃と王子が、お馴染みの台詞を吐く

 王族や貴族は嫌い。

 同じ人間なのに、差別する。

 身分の低い庶民をまるで魔物のように扱う。

 気持ち悪い。


「わかりました。お疲れの所、申し訳ありません。晩餐の準備が整っていますが、お部屋にお運びしましょうか?」


「えぇ、お願いします。それでは失礼します」


 謁見の間を後にした私は、侍女に囲まれながら、足早に部屋へと戻った。

 気を抜きたい所だけど、まだ駄目だ。

 無駄に豪華な料理が、直ぐに運ばれてくるだろうから。


 コンコン


「勇者様、晩餐をお持ち致しました」


 ほらね。


 いつも通り。


「ありがとう」


 料理もいつも通り


 無駄に豪華で、材料もわからない料理


「頂きます」


 何かもわからない料理を口に運ぶ。


「・・・・・・いつも通り」


 不味くはないけど、美味しいとも思わない


 私には合わない


 食事を摂りながら考える。


 食べ終わったら、故郷の手紙を何度も読み直して、ニヤニヤする。

 ミラとの楽しかった日々を思い出して、ニヤニヤする。

 その後は、悲しくなって・・・・・・泣きながら寝る。


 明日になれば、剣と魔法の稽古をして


 用もないのに、王族に呼び出されて


 暫くすれば、人々を守る為に王都を出て、自由のない旅に出る


 勇者としての過ごし方


 何も変わらない日々


 きっと魔王を倒して、世界に平和が訪れる時まで、変わらない


 もし倒せなければ


 平和に出来なければ


 私はずっと・・・・・・


「うぅ、嫌だぁ」


 こんな訳のわからない料理なんて一生食べたくない


 お母さんの美味しい料理が食べたい


 故郷に帰りたい


 ミラ達に会いたい


 謝りたい


 私は・・・・・・


 コンコン


「っ!? だ、誰ですか!?」


 落ち込んでいた私は、扉が叩かれた事に酷く驚いてしまい、声が裏返ってしまった。

 だって・・・・・・いつも通りじゃない。

 料理が運び込まれると、明日の朝までは侍女は私の部屋に訪れない。

 料理の残りも、朝食の時に回収する事になっている。


 コンコン


 コンコン


 私の言葉に応えずに、尚も扉を叩く音。

 明らかに怪しい。

 勇者である私を襲おうとする不届き者が、城に居るとは思えないけれど、念の為に、部屋の隅に立て掛けていた聖剣を手にとり、構える。


 コンコン


 コンコンコン


 コンコンコンコン


 ドンドンドンドン


 ぐぅ~


 ぐぅ~


 ・・・・・・


 ・・・・・・


「へっ? お腹の音?」


 更に強く扉が叩かれ、警戒を強めた私は間抜けな声を出してしまう。

 緊迫した空気の中、お腹が鳴る音が確かに聞こえたからだ。

 そして扉を叩く音が消えた。

 不思議に思った私は、扉に近寄り耳をすませると


「うぅ~、何故僕がこんな目にもう嫌だぁ~、うぅ」


「子供?」


 子供の声が聞こえた。

 聖剣を手にした私は、恐る恐る鍵を外して、扉を開く。


「嘘? 誰もいない? 確かに子供の声が・・・・・・」


 部屋の前には誰もいなかった。


 扉を叩く音

 お腹の鳴る音

 子供の声

 全てが幻聴だった?


 扉を閉め、鍵を掛けた私が振り返ると


 モグモグ


 モグモグ


 モグモグ


 全身黒の服を纏った子供が、食べ掛けの料理を物凄い勢いで食べていた。


「・・・・・・えっ?」


 訳がわからず、困惑していると


「おっと、失礼。僕とした事が取り乱してしまったようだ。とりあえず座りたまえ! 食事は大切だよ? あまり美味ではないが・・・・・・」


「えっ? えっと、君は一体どうやってこの部屋に・・・・・・」


「食べないのかい? まぁいいだろう。どうやって? 君が入れてくれたんじゃないか? 少し遅かったけどね」


 子供の言っている事がわからず、更に困惑してしまう。

 部屋の前には、確かに誰もいなかった。

 そもそも、何で子供がいるの?


「ふむ、こうすればわかりやすいかな? よいしょっと」


「なっ!? き、消えた?」


 目の前にいた子供が一瞬で消えてしまった。

 部屋を見渡すも、その姿を確認する事は出来ない。


「よっと、まぁこういう事だよ? わかってもらえたかな? 勇者様?」


「き、君は・・・・・・まさか!?」


 再び姿を現した子供に、驚愕する。

 隠蔽術だ。

 人間には扱えない魔法。

 そして、隠蔽術を扱える存在に心当たりがある。

 神の使者として崇められている

 聖なる存在・・・・・・


「僕は偉大なる大精霊ジーク! 神の使者だ! フハハハハァァ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。