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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
57/61

57 解呪

 


「何故黙っているのですか?」


 クイッ


 ジークが俺の髪を引っ張っている。

 黙ってろって言うんだろ?


 クイッ


 わかってるさ。

 大騒ぎになってるんだ。

 正体がばれるような行動はとれない。

 名乗るとか無理だし、目的も話せるわけがない。


 ミア無視してるわけじゃないんだ。


 ごめんな。


「勇者様! 言葉を理解しておらぬのでしょう! 魔物の類いに間違いありません」


「隊長の言う通りです! 直ぐに攻撃を・・・・・・」


「待ちなさい! 魔物が王都に潜り込む危険性が低いのはわかっているでしょう?」


 さて、どうするか。

 今はミアが止めてくれているが、このままだと、攻撃されそうだ。

 目の前にミアがいるのに、何も出来ないのは歯痒いが、元々顔だけでも確認する事が目的だった。

 さっさと逃げた方が・・・・・・


「ダイスケ、解析だ」


 周りが騒がしくなったからか、ジークが小声で話掛けてきた。

 解析?

 この距離からでも使えるのか?

 試した事がないから何とも言えないが、もし使えるなら・・・・・・

 対象はミアにかかっている呪い。

 これで、何も反応しなければ、誓約の儀式は呪いではないという事になる。

 逆に反応すれば・・・・・・呪いだ。

 呪いである事を願うのも、おかしな話しだが、頼むぞ。

 ミアに向かって手を翳し、魔法を唱える。


「【解析】」



 ***********


【誓約の儀式】


 闇の女神ルージュが、レムレールの管理者である光の女神シャロンの世界を混乱させる為に、ある王族に授けた呪魔法。

 契約の儀式とは違い、強制させる事は出来ず、解放条件を設定しなければならないが、誓わせてしまえば強力な呪いを与える事が出来る。

 術者が死んでも呪いの効果は持続される。

 誓いを破れば、対象と、対象が大切に思う全ての人間に、あらゆる不幸が襲いかかり、死に至る。


 術者


 バーリィ=K=アストリア


 対象


 エイミア=ランス


 誓い


 術者の命令なくして、王都アストリアから離れる事は出来ない

 命令で王都を離れる場合は、術者の指定した場所以外には行けず、期間内までに王都に戻らなければならない。


 解放条件


 魔王を全て葬り、世界に一定基準の平和が訪れる


 ***********


 呪いだった。

 誓いを破ると、ミアと、ミアが大切に思う全ての人に、不幸が襲いかかり、死に至る。

 ミアは故郷が滅びたと聞いて、誓いを破った。

 そして、呪いの効果が発動してしまったんだろう。

 片腕を失い、守るべき人々に裏切られ、苦痛を味わい、生を終えた。


 呪いの術者

 バーリィ=K=アストリア


 恐らく愚王の野郎だ。

 こいつが、呪いなんてかけなければ、ミアが不幸になる事も・・・・・・世界が滅びる事も、なかったのかもしれない。


 愚王は絶対に許さない


 絶対に・・・・・・


「ダイスケ、どうだった?」


「・・・・・・呪いだ。効果は俺達が考えていた通りだ」


「やはりか。なら【解呪】を使おう。恐らくこの距離でも、効果はある」


 怒りを何とか抑えながら、小声でジークと会話する。

 さっさと、忌々しい呪いからミアを解放してやらないと。

 俺は再びミアに向かって手を翳し、魔法を唱えようとするが


「っ!? 貴方、手を下ろしなさい! 下ろさなければ攻撃します!」


「勇者様! 攻撃許可を!」


 ミアに気付かれてしまった。

 だが、ここで引くわけにはいかない。


「手を下ろしな・・・・・・」


「【解呪】」


「っ!? 【光裂弾】」


「魔法隊! 放てぇぇぇぇ!」


「「「「火槍!」」」」


「「「「水槍!」」」」


 俺が【解呪】を唱えると同時に、ミアが俺に向かって光の球を放ち、それに続いて、兵士達から複数の魔法が放たれた。


 ボキッ!


「がはっ!」


 ミアが放った光の球が、俺の右脇腹に直撃する。

 更に兵士達が放った魔法が、目の前まで迫っており、俺は痛む脇腹を右手で抑えながら高く跳躍し、円柱の塔から広場の端にある建物の屋根に移動して、難を逃れる。


「逃がすなぁ! 魔法を放てぇ!」


「勇者様! 大丈夫ですか!?」


「これは・・・・・・あっ、ごめんなさい。大丈夫よ」


 高低差があった事が幸いして、何とか移動する事が出来た。


「ダイスケ! 大丈夫かい!? 我慢できるかい!?」


「あぁ、何とか大丈夫だ」


 ジークが小声でなく、声を張り上げて話し掛けてきた。

 どうやら俺の事が心配で動揺しているようだ。

 まぁ、魔法が入り乱れて、観衆が大騒ぎしているし、兵士達も絶えず怒声を上げていて、騒がしい。

 聞こえる事はないだろう。


 すぐに傷を癒したい所だが、魔法から正体がばれる可能性もある。

【解析】と【解呪】は、ミアを救う為に仕方なかったが、回復魔法は俺が痛みを我慢すれば、今すぐ使う必要はない・・・・・・よって、回復するのは逃げ切ってからにする!

 そして、逃げる前にやっておきたい事がある。

 ミアの呪いが解けたかどうか確認する事だ。


 再び放たれた魔法を回避しながら、ミアに向かって手を翳し、対象は先程と同じ、ミアにかかっている呪いに設定する。


「【解析】」


 ***********


【該当なし】


 ***********


 屋根から屋根へと移動し、魔法をやり過ごしながら、ジークに訊ねる。


「ジーク、該当なしって出たんだが、どう・・・・・・っと、思う?」


「解呪を勇者に使った後に、仮面の呪いを解いた時と同様に、勇者の身体が浄化の光に包まれていたよ。恐らく問題ない! だから早く撤退しよう!」


「わかった! しっかり掴まってろ」


「逃げるぞ!」


「逃がすなぁ!」


「殺せぇぇ!」


 俺は広場に背を向け、痛む脇腹を抑えながら、屋根から屋根へと、跳び続けて兵士達から逃げ切る事に成功した。









「【治癒】」


 逃げ切る事に成功した俺は、人気がない公園を見つけ、周りに人がいない事を確認してから変装を解き、元の服に着替えて、傷を癒した。

 恐らくだが、肋が折れていたと思う。

【治癒】で治るのか【極癒光】を使うのか悩んだが、【治癒】を使う事にした。

 どの程度の傷まで治せるのか、確認しときたかったからだ。


「どうだい? 痛みはあるかい?」


「うんや、ない。骨折なら【治癒】でも大丈夫そうだな」


「ふむ、という事はだね、君がジャニスに使った極癒光・・・・・・」


「うっ、それを言うな! ほら、これで許してくれ」


「フハハハハァァ! 理解が早くて助かるよ」


 ジークにキャンディを渡して黙らせる事に成功する。

 まぁ、散々な目にあったが、今日は上出来だろう。

 ミアに会う事が出来て、誓約の呪いを解く事が出来た。

 おまけに、【解析】と【解呪】がある程度離れていても効果がある事がわかった。


 後は、ミアにもう一度会えれば、誓約が無効になった事を話せるし、ミラの手紙を渡して・・・・・・


「ふむ、美味だった。ダイスケ、勇者の事何だが僕に名案があるよ。聞きたいかい?」


「本当か!? って言いたい所だけどな、結果的にはよかったんだが、その名案で、俺は中々辛い目にあったんだが・・・・・・」


「じゃあ聞かないんだね?」


 ちっ! 顔がムカつく。

 わかってて聞いてやがるな。


「・・・・・・聞かせてくれ」


「よろしい! 僕の空間を移動出来る・・・・・・」


 偉大なる大精霊様の話は長かったが、とても俺が考えつけないような、素晴らしい名案だった。

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