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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
52/61

52 襲撃の理由

 


 森を抜け、何処か落ち着いた場所を見つけて、襲撃者から話を聞こうと俺は考えていた。

 何か誤解があるなら・・・・・・ってか心当たりがないから誤解だと思うんだが、話し合いで解決したい。

 もしも・・・・・・万が一にも俺に恨みがあり、この先も俺の命を狙い続けるならその時は、俺も覚悟を決めなければならないだろう。


 人間を殺す。


 異世界レムレールではどういった扱いかはわからないが、元いた世界では犯罪行為であり、勿論かなりの抵抗がある。

 魔物は躊躇せず殺せるが、人間だとそうはいかない。

 先程の戦闘でも、加減はしなかったが、最悪怪我をさせても治す事が出来るし、念の為に、急所には攻撃しなかった・・・・・・いや出来なかった。


 甘い事はわかっている。

 殺意をもって襲われても、覚悟がない俺には、人間を殺せ・・・・・・


 グァァァァァ!


「ちっ! 今悩んでんだ! うぜぇんだよ!!」


 焼けた森から逃げ出した多くの魔物が、そこら中に彷徨いていて、次々に襲い掛かって来る。

 それにより、中々落ち着ける場所が見つからず、苛立ちが募る。


「クソッ!」


 八つ当たり気味に魔物を蹴り殺し、俺は走り続けた。















 ・・・・・・気不味い。




 ・・・・・・見られてる。




 ・・・・・・間違いなく見られてる。



 森を抜けて、数時間は経っただろうか。

 魔物の数も少なくなり、そろそろ腰を落ち着けれる場所を・・・・・・と考えていた俺に、先程から大きな問題が発生していた。


【雷撃】により、麻痺と共に気を失っていた襲撃者の意識が戻った事だ。

 俺は襲撃者を前に抱えて・・・・・・お姫様抱っこしてるわけだが、閉じていた目が、いつのまにか開いていた事で、気付く事が出来た。

 意識が戻っただけなら、麻痺もしているし何の問題もないのだが、襲撃者がじっと俺の顔を見ているのだ。

 瞬きもせずに、俺が気が付いてからずっとだ。

 今は真夜中で月も出てないし、暗闇が支配している。

 そんな暗闇の中、大きな赤色の瞳が輝いているんだ。

 顔の距離も近い為、どうしても視界に入るし、この襲撃者は美人だ。

 先程殺されかけた癖に、俺の顔は真っ赤に染まっているだろう。

 恥ずかしいし、気不味い。


 ジークに助けを求めたいが、無理だ。

 何回か声は聞かれたかもしれないが、ジークは隠蔽を解いていない為、姿は視られていないはず。

 ここでジークの存在を知られてしまったら更にややこしい話になってしまう。


 だから俺は、視線に耐えて走り続けている。

 ジークは俺の状況を理解しているのか、笑いを堪えてる。

 小刻みに揺れてやがるんだ。

 笑ってないで助け・・・・・・ん?


 クイッ


 クイッ


 クイッ


 俺の心の叫びが聞こえたのか、ジークが髪を引っ張り何かを伝えようとしている。

 俺はその場で止まり、周りを見渡し、そして気付いた。

 辺りから魔物の気配が消えている事に。

 襲撃者の視線が気になりすぎて、気付かなかったようだ。

 魔物が近くにいなければ、何の問題もない。

 俺はその場で腰を落ち着ける事に決め、襲撃者を優しく地面に横たえる。

 適当に燃えそうな木の枝や草を集めて、ライターで火を着け、焚き火をしていると・・・・・・


「・・・・・・火・・・・・・魔法」


 どうやら麻痺が解けてきたのか、襲撃者が声を掛けてきた。

 早く話をしたかったし、いいタイミングだ。


「麻痺が解けてきたか。なぁ話をしないか? 聞きたい事があるんだ」


「・・・・・・質問・・・・・・許可・・・・・・敗者」


 意外な事に、素直に答えてくれるらしい。

 さて、何から訊ねるべきか。

 うーん・・・・・・とりあえず誤解かどうか確かめるか。


「助かる。まず何で俺を殺そうとしたんだ? 俺の名を知っているし、何処かで会った事があるか?」


「・・・・・・強者・・・・・・本気・・・・・・名・・・・・・ギルド・・・・・・噂」


「つまり、ギルドで俺の噂を聞いて、強者と知り、手合わせしたいと思い、俺を捜していて、殺す気じゃないと本気が見れないから殺そうとしたってか事だな? 俺に恨みとか殺意はないんだな?」


 襲撃者はコクリと頷いた。

 はぁ、なんだよ。

 誤解も何もなかったな。

 俺に恨みもなく、ただ強者と本気の手合わせしたかっただけか。

 人騒がせな奴だ。


「まったく・・・・・・それじゃ戦闘狂・・・・・・」


「・・・・・・戦闘狂・・・・・・仇名・・・・・・困惑」


 どうやら襲撃者は戦闘狂と呼ばれているらしい。

 納得だ。

 だが、襲撃者は呼び名に納得いかないのか、不満そうだ。

 うん、俺がしっかり言い聞かせてやらないと駄目だな。


「あのな、強い者と本気で手合わせしたいからってだけで、殺そうと襲い掛かるなんて戦闘狂と言われても仕方ないだろ? 呼び名が気にくわないなら、もっと考えて行動しないと駄目だろ? 念の為確認しとくが、手合わせで殺した事はないよな?」


「・・・・・・不満・・・・・・弱者・・・・・・不殺・・・・・・ダイスケ・・・・・・本気」


 むっ? まだ言葉が足りずわかってもらえないようだ。

 手合わせで殺した事はない、と。

 殺意剥き出しで、手合わせしたのは俺だけっぽいな。

 いい迷惑だ。


「不満でも、実際そうだろ? 強さを求めるのは理解できるが、己の未熟な部分も受け入れないと、更なる高みに辿りつけないぞ? まぁ、無意味に殺してないようだし、今からでも遅くないぞ?」


「・・・・・・反省・・・・・・成長・・・・・・努力」


 よし!

 わかってくれたみたいだ。

 出会い方は最悪だったが、話してみれば素直な良い娘じゃないか!


「そうだ! わかってくれればいいんだ! そう言えば名を聞いてなかったな」


「・・・・・・ジャニス」


「ジャニスだな。それでジャニスは手合わせとはいえ、もう俺を殺そうとしないな?」


「・・・・・・ダイスケ・・・・・・強者・・・・・・本気・・・・・・残念」


「気持ちはわからんでもないけどな、死んでしまったら意味がないだろ? それに人間同士で本気で戦うのもおかしいだろ? 敵は魔物だろ? 手合わせならいつでもしてやるからさ、納得してくれ」


「・・・・・・手合わせ・・・・・・約束・・・・・・納得」


「あぁ、約束する! ジャニスは強いから、俺も勉強になるしな!」


「・・・・・・未熟・・・・・・ダイスケ・・・・・・尊敬」


「俺もまだまだ未熟だ! お互いもっと頑張らないとな」


 ジャニスはコクンと頷いた。

 尊敬とか言われて少し照れ臭いな。

 俺もまだまだ未熟だしな。

 今後手合わせする約束もした事だし、お互い高めあっていければいいと思う。

 これで問題は全部解決・・・・・・っと、ジャニスの傷を治してやらないと駄目だな。

 完治して襲って来る事もないだろう。

 ジャニスは少し変わっているだけで、良い娘なのはわかったからな。


「傷痛むだろ? 悪かったな。今治してやるからな・・・・・・【極癒光】」


【治癒】でもよかったが、完治するのかは不明だったので【極癒光】を使う。

 ジャニスに非があるとはいえ、女性に傷を負わせたのも後ろめたいしな。

 後でジークに怒られるな。


「・・・・・・驚愕・・・・・・ダイスケ・・・・・・感謝感謝」


「気にするな! とりあえず今回の件は水に流そう! わかったな?」


「・・・・・・了承・・・・・・ダイスケ・・・・・・質問」


「ん? 何だ?」


「・・・・・・精霊・・・・・・挨拶」


 傷も完治し、ジャニスに感謝され、今度こそ一件落着だと思い、安堵していた俺は、ジャニスの言葉を聞き、驚愕する。

 精霊って言ったぞ?

 何故だ?

 ジークは隠蔽している筈だし、戦闘中に声は聞かれていたかもしれないが、そこから精霊を連想させるなんてあり得るのか?

 とにかく、まずい。

 ジークの・・・・・・精霊の存在は特定の人達以外には隠す方針だ。

 何とか誤魔化さないと!

 落ち着け俺!

 冷静に対処するんだ。

 俺なら出来る!


「せ、精霊? ジャ、ジャニス、一体な、何の事・・・・・・っ!」


 第一声から噛み噛みで、全く冷静じゃなかった自分の未熟さを嘆きながら、俺は気付いてしまった。

 ジャニスがじっーとある場所を見ている。

 恐る恐る視線を辿ると、そこにはアホ顔のジークがいた。


 隠蔽し忘れたのか?

 ジークは俺に向かって首を横に振る。


 隠蔽してるって事か?

 ジークは首を縦に振る。


 うん、エスパー便利。

 しかし、どういう事だ?

 俺が思考していると


 トテトテトテ


 ジークが恐る恐る移動した。

 ジャニスの視線もそれに合わせて移動する。


 トテトテトテ


 更にジークが移動しても、視線も同様に移動する。

 答えが解らず唸る俺が、ジャニスをチラっと見ると、鼻に指を添えて、得意気な顔をして、ボソッと呟いた。


「・・・・・・精霊・・・・・・匂い・・・・・・ダイスケ・・・・・・契約者・・・・・・追跡・・・・・・居場所・・・・・・匂い」


「匂い!?」


 どうやらジャニスは、俺とジークの匂いを辿ってやって来たらしい。何故俺達の匂いを把握しているかは不明だが、俺が精霊の契約者だと言う事もばれている。

 はぁ、これは誤魔化しようがないな。


「ジーク、出てこい! 匂いでジークの存在も特定されていて、契約者だとばれている。誤魔化しようがない」


「匂い!? 状況が全く把握出来ないんだが、まぁいい。よっと、僕は偉大なる大精霊ジーク・・・・・・うわぁ」


「子供・・・・・・天使・・・・・・癒し・・・・・・愛でる」


「ジャニス・・・・・・冷静になれ! どう見ても生意気な顔で可愛いくはないぞ」


 ジークが隠蔽を解いて、偉そうに名乗りをあげている最中に、ジャニスが素早くジークを抱き上げ頬を擦り付け、ジークを可愛いと絶賛している。

 納得できん。


「・・・・・・ダイスケ、聞いていいかい?」


「何だ?」


「何故君は先程からジャニスと会話が成り立っているんだ! 僕には全く理解できないんだが・・・・・・」


「何言ってんだ? 確かにジャニスは言葉が足りないが、わかりやすく纏めてるじゃないか? なぁジャニス」


「・・・・・・ジーク・・・・・・不満・・・・・・精霊・・・・・・子供・・・・・・ダイスケ・・・・・・満足」


 ジャニスの言う通り、ジークはお子様だからな。

 理解出来ないのは仕方ない。

 俺は大人な男だから、バッチリだ!

 ジャニスも満足してくれているようだ。


「ダイスケ、馬鹿にされてる気がするのは気のせいかい?」


「気のせいだ」


「・・・・・・誤解」


 不満そうなジークは、ジャニスに抱っこされ、頭を撫でながらも、口を尖らせていた。


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