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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
46/61

46 逃がさない

 

 ハンターは己の命を賭けて、魔物を殺し生活する危険な仕事である。

 腕に自信のある強者が多く、気性が荒い者も多い。

 そんなハンター達が集まるギルドは、常に騒々しく、揉め事も多い。


「あ? てめぇ、今何て言った!?」


「役不足だって言ってんだ! てめぇにCランクの魔物は狩れねぇよ」


「舐めやがって! ぶっ殺してやる!」


 低ランクのハンター2人が激しく言い合っているが、気に留める者はいない。


「なぁ、魔境に行かねぇか? ブルドラが居ないとなると、俺達でも何とかなるぜ?」


「そうだな、腕試しには丁度いいかもしれんな」


「魔境に行くのか!? なら俺達とパーティ組まねえか?」


「おぅ! 構わねえ!」


「よろしくな! ガハハハハ」


「あぁ! ガハハハハ」


 主が居ない魔境へと、繰り出そうとするハンター達が、臨時にパーティを結成し、馬鹿笑いしている。


「はぁ、平和ねぇ」


 受け付けからそんないつもと変わらぬ光景を見ていたルカが、苦笑いを浮かべていると



 ギィィィィィィ



 古くなった木製の扉が軋みながらゆっくりと開かれ、1人の女が現れた。



「おい、あ、あれ・・・・・・」


「し、真紅のマントに黒の腕輪って」


「馬鹿! 目を合わせるな! 殺されるぞ!」


「ひっ、ひぃぃぃ」


 先程までとは違った意味で騒がしくなるギルド内。

 真紅のマントに黒の腕輪。

 Sランクハンター戦闘狂のジャニス。

 魔物だろうと人間だろうと、強い者を求め襲い掛かり、気に入らぬ者は問答無用で殺戮する狂人。


「・・・・・・黙れ」


 ジャニスの一言で、恐怖でパニックになっていたハンター達が、静まり返る。


 コツ


 コツ


 コツ



 ジャニスの足音だけが響き渡り、中央受け付けの前でピタリと止まる。


「よ、ようこ、そ、ジャ、ジャニス様、ほ、本日は・・・・・・」


 ルカは恐怖に支配されながらも、何とか声を絞り出す。


(お、落ち着くのよ。本部からの情報が正しければ、ジャニス様は登録して直ぐにAランクハンターになったダイスケ様を捜して・・・・・・)


「ダイスケ・・・・・・何処」


(っ!? やっぱり!)


「も、申し訳あ、ありません。ダ、ダイスケ様は、こ、この、街にはい、いません」


「・・・・・・何処行った」


「ぞ、存じま、せん」


「・・・・・・魔石」


「えっ?ま、魔石?」


「・・・・・・強い魔石・・・・・・匂いする・・・・・・見せろ」


「えっ、ど、どういう・・・・・・」


「見せろ」


「はっ、はい! 少々お待ち下さい!」


 ルカは震える足を無理矢理動かし、現在ギルドに保管されている魔石を全てジャニスの前に持ってくる。

 ハンターから買い取った魔石は数日毎に、本部へと移送される。

 そして今日がその移送の日であり、ギルドには多くの魔石があった。

 ジャニスは大量の魔石を無言でじっと見つめると、1つの魔石を取り出す。

 ルカはその魔石を見て驚愕する。


(あ、あれは、ダイスケ様が持ってきたブルドラの・・・・・・な、何で)


「・・・・・・誰持ってきた」


「あ、あの、存じあげ・・・・・・」


「・・・・・・嘘つくな」


「ひっ、も、申し訳あ、ありません、ダ、ダイスケ様です」


 ジャニスはルカの言葉を聞き、魔石に鼻を近付け、クンクンと何度も匂いを嗅いだ。


「・・・・・・感謝」


 ブルドラの魔石を、魔石の山に戻したジャニスはポツリと呟き



 コツ


 コツ


 コツ


 ギィィィィ


 ギルドを後にした。


 ジャニスが立ち去った後も、静寂が支配し続けるギルド。


(はっ! た、大変、マ、マスターに報告し、しないと!)


 ルカは、震える足を動かし、急いで2階へと向かう。



 ドンドン


 ドンドン


「はぁ~い、だぁ~れ?」


「マ、マスター! ル、ルカです」


「慌ててるの~? 入って~」


「は、はい! し、失礼します」


 ルカは勢いよく扉を開き、乱れた息を整え、ナユルに報告する。


「ジャ、ジャニス様が先程ギルドに現れました! ダイスケ様を捜していたようです」


「あらぁ~、思ったより~早かったわねぇ~。それでぇ~?」


「は、はい! 街を出たとお話したんですが・・・・・・」


 ルカは、ジャニスにダイスケの行く先を知らないと告げると、魔石を持ってくるように言われ、ジャニスがブルドラの魔石を手に取り、ダイスケが持ってきた魔石だと伝えると、そのままギルドを後にしたと、ナユルに説明した。


「・・・・・・う~ん、まずいわねぇ~」


「えっ? どういう事です?」


 ナユルはお茶を啜り、ふぅ、と大きく息を吐いてから、口を開く。


「ルカちゃ~ん、ジャニスね~、魔石の~、匂いを嗅いでなかったぁ~?」


「あっ、そ、そう言えば、魔石を鼻の辺りに近付けて・・・・・・」


「よね~、ジャニスはねぇ~、嗅覚がねぇ~、優れているのよぉ~。魔石から~、ダイちゃんの~、匂いを覚えたのよぉ~」


「ま、まさか! そ、そんな事」


「あるのよねぇ~、ダイちゃんも~災難ねぇ~、もう逃げられないわぁ~」


「ど、どうすれば!?」


「ダイちゃんの~、無事を~、祈りましょう~。あぁ~、本部に~、連絡しといてねぇ~」


「わ、わかりました! 失礼します!」



 ルカは慌ただしく、部屋を退出すると、ギルド本部へと連絡を入れた。





 ***********



 ギルドを後にしたジャニスは、適当に食料を買い漁り、街を出て、鼻を鳴らす。


「・・・・・・良い匂い」


 匂いを辿り、街から離れた草原へとやって来たジャニスはある物を発見する。


「・・・・・・綺麗」


 ジークが設置した精霊陣をぼんやりと眺め、匂いを嗅ぐ。


「・・・・・・精霊?」


 その場で、膝を抱え込んで座り、身体を揺らしながら思考するジャニス。


「ダイスケ・・・・・・精霊」


 答えが出ず、更に思考する。


「・・・・・・契約者か」


 答えに辿り着き、常に無表情の顔が僅かに緩む。

 クンクンと鼻を鳴らし、ダイスケ達が向かった方向を見やり、ポツリと呟く。


「・・・・・・王都」


 ぐっと足に力を込め、人間とは思えない速さで走り出す。


「・・・・・・逃がさない」


 ジャニスは、ダイスケの匂いを辿り、道無き道を走り続けた。


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