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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
47/61

47 ライラ家

 

「いってくるのです」


「ミラちゃん、今日はダイスケ君達が戻って来ると思うから、遅くならないようにね」


「わかってるのです!」


 元気よく出掛けた娘を、微笑みながら見送るメアリー。

 ダイスケ達が村から出発して今日で5日目、何事もなければ今日辺りに、空き部屋に設置した精霊陣から戻って来るのではと、考えていた。


 食材の買い出しに出掛けた娘を見送り、居間に戻ったメアリーは、机にひれ伏し、この数日ですっかり弱ってしまったダントンを見て苦笑いを浮かべる。


「ダントン、今日は多分ダイスケ君達が戻って来ると思うから、ちゃんと謝るのよ?」


「っ!? ほ、本当か!? やっと戻って来るんだな! こ、これでミラに無視されずに・・・・・・」


 血走った目で、メアリーに詰め寄るダントン。

 ダントンは数日前、メアリーの忠告を無視して、ダイスケを襲い、怪我をさせ、娘の初恋を壊そうとして罰を受ける。

 メアリーに氷の彫像にされ、放置され高熱で寝込み、翌日から今日まで、愛する娘に無視され続けていた。

 様々な手を使い、娘の機嫌を直そうとしたが、効果はなく、絶望するダントンに、憐れだと思ったメアリーが、数日前に助言していた。


「ダイスケ君に謝罪して、ダイスケ君からミラちゃんに、ダントンを許してあげるように頼んでもらえば、きっとミラちゃんも許してくれると思うわよ?」


 最早手が尽きたダントンは、その提案に最後の希望を見出し、5つ目の鐘が鳴る頃には必ず空き部屋に行き、誰よりダイスケ達を待ち続ける生活を送っていた。


「もう、こんなに落ち込んじゃって。仕方ない人ね」


「うぅ、メアリー。だってよぉ、ミラが俺をゴミを見るような目でこの数日間・・・・・・」


「はいはい、もう充分過ぎるくらい反省したのはわかったから、ペリルでも狩ってきてちょうだい。美味しい唐揚げを用意できるわ」


「そうだな! ちょっくら行ってくらぁ!」


「ふふふ、いってらっしゃい」


 ダントンは美味しい唐揚げの材料になる、Eランクの魔物ペリルを狩りに、村の外へと出掛けていった。





 ***********





「あれ、ミラちゃん、今日は随分とご機嫌だね?」


「えへへ、そんな事ないのです! いつも通りなのです!」


 満面の笑顔で軽やかに跳ねるように、買い物を続けるミランダ。

 誰がみても、ご機嫌なのは一目瞭然だった。


(あっ! 野菜もたくさん買っておかないと駄目なのです! きっとお肉ばっかり食べて野菜を食べてないのです!)


「おばさん! これと・・・・・・あ、これも下さいなのです!」


「あいよ! たくさん買い込むねぇ」


「ふふふ、そうなのです?」


 支払いを済ませ、家へと戻って行くミランダ。


「おい、ミラちゃんどうしたんだ?」


「ここ数日ずっと元気なかったみたいだけど、今日は元気だねぇ~」


「男でも出来たのかねぇ」


「なっ!! お、俺達の女神にお、男だと!」


 魔物の襲撃が迫っているとは思えない程、アーデル村は平和だった。





 ***********




 チリーン


 チリーン


 チリーン


「ふぅ、流石に疲れたな」


「うぅ、お腹空いたぁ。ダイスケ、早く精霊陣を設置して、ミランダの家に行こう」


「そうだな! 昼飯抜きは流石にきつかったな」


 今日は散々だった。

 朝食にボアサンドを食べて、ボアサンドがなくなり、移動を開始したが、魔物の数が多く、戦闘を避けきれない事が多々あり、午前中は中々進めなかった。

 昼食の時間になり、ブルドラの肉を焼こうと思ったが、異世界に来て初めての雨が降り出し、火が使えず、昼食は抜きになるアクシデント。

 その後も、雨は降り続け、視界は悪くなるし、相変わらず魔物は多いし、最悪だった。


「ジーク、ここなら大丈夫じゃないか?」


「うん、大丈夫だと思うよ。ここに設置しよう」


 辺りを見渡し、魔物に陣を乱されない場所を見つけて、精霊陣を設置する。


「よし、じゃあミラの家に戻ろう」


 ジークの能力を使い、小さい扉を匍匐前進で潜り、ミラの家へと戻った俺の目の前に・・・・・・


「ダ、ダイスケェェ! お、俺がわ、悪かったぁぁ! 許してくれぇぇ!」


「うわっ! ダントンさん! 一体どうした・・・・・・ぐぇっ」


 何故かダントンさんが待ち構えていて、泣きながら俺に抱きついてきた。


「許してくれぇ! そして助けてくれぇ! 頼む!」


「ちょっ! お、落ち着けって!」


 ダントンさんのむさ苦しい髪と髭が俺の顔に当たっていて、気分は最悪だ。

 俺はダントンさんを引き剥がし、落ち着かせて、話を聞く事にした。


「ミ、ミラが・・・・・・俺がダイスケを襲って怪我させた事に怒って、口を聞いてくれねぇんだ!! もう5日になる! この前は本当に悪かった! 反省してる! だからダイスケからミラに俺を許すように言ってくれぇぇ!」


 どうやら俺を襲って怪我をさせた事により、ミラの逆鱗に触れて、無視され続けているらしい。

 女神の様に優しく可愛いミラに無視されるか・・・・・・うん、辛いな。

 俺だったら多分泣いてる。


「ダントンさん、それは辛いな。襲った件は、気にしてないから水に流そう。ただ、俺がミラに言って効果あるか?」


「すまねぇ! 恩に着る! メアリーが言ってたから多分大丈夫な筈だ!」


 俺がミラに言って効果があるのか疑問だが、どうやらメアリーさんの案らしい。

 メアリーさんが言うなら、間違いないのか? うーん。



 ぐぅ~



「ダイスケ、ダントン。僕のお腹が限界だよ」


「はっ! ジーク様、申し訳ありません! 食事の準備は出来ている筈です」


「そうだな、とりあえずメアリーさんとミラの所に行くか」


 空き部屋を出た俺達は、美味そうな匂いがする居間へと向かった。


「あ、ダ、ダイスケ君、ジークお帰りなのです!」


「ふふふ、お帰りなさい」


 居間に行くと、メアリーさんとミラが食事の準備をしていてくれた。


「ふむ、ご苦労。さて、僕を抱っこするのは誰だい?」


「ふふふ、勿論私よ! こっち来なさい」


 ジークがメアリーさんに抱っこされて椅子に座る。

 俺も腹が減ったし、近くの椅子に座ろうとすると、背中を小突かれる。

 振り向くと、ダントンさんが泣きそうな顔をして、口をパクパクし、何かを伝えようとしていた。

 ごめん、ダントンさん。

 飯に気を取られて、忘れてた。


「ミラ、話があるんだ」


「えっ、な、何なのです?」


 ミラは相変わらず可愛い。

 こんな可愛い女の子に無視されるとか・・・・・・恐ろしい。

 早くダントンさんを助けなければ!


「あ、あのな、俺はダントンさんに襲われた事はもう気にしてないからさ、だからミラもダントンさんを許してやってくれないか?」


「あぅ、でもお父さんは何も悪くないダイスケ君に怪我を・・・・・・」


「俺はもう気にしてないぞ? ダントンさんも謝ってくれたしな。俺の為に怒ってくれてありがとう・・・・・・でもそろそろ許してやっていいんじゃないか? ミラは優しいから無視し続けるのも辛いだろ?」


「あぅ、や、優しい・・・・・・わ、わかったのです! お父さん、許してあげるのです!」


「お、お、ミ、ミラァァァ! 俺がわるかったぁ。うぉぉぉぉぉ」


「あらあら、思った通りの展開ねぇ。ダントン、泣くのは後にして早く食べましょう。私のジークがお腹空かせているのよ?」


「す、すまねぇ! 食べよう」


「ダイスケ君も座るのです」


「あぁ、ありがとう。じゃあいただきます」


「ダイスケ! これ食え! ペリルの唐揚げは美味いぞ!」


「ダイスケ君、お肉ばっかりは身体に悪いのです! 野菜も食べるのです」


「あらあら、ミラちゃんったら」


「あぁ、わかってるよ。ん? これは何だ? 美味い!」


「あ、そ、それは私が作ったのです! 野菜とチーズを・・・・・・」


「ダイちゃん! 唐揚げを取ってくれたまえ!」


「ぶっ!!」


「「「ダイちゃん?」」」


 ジークめ、和やかに食事を楽しんでたのに!

 変な空気になったじゃねぇか!


「ジーク! 何度も言ってるだろ! その呼び方・・・・・・」


「どうしたんだい? ダイちゃん? 早く唐揚げを・・・・・・ぷぷっ」


「ダイちゃんって呼ぶなぁぁぁ!」


「ダイちゃん! この煮物も食え!」


「ダイちゃん、お水のお代わりはいるかしら? ふふふ」


「この野菜も美味しいから食べるのです・・・・・・ダ、ダイちゃん」


 馬鹿精霊のおかげで、食事の間、俺はダイちゃんと呼ばれ続けた。


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