45 SPの謎
俺達がリンジャーの街を出て、4日が経ったが、大したトラブルもなく、順調に王都へと向かっていた。
ジークの体調も考慮して、走る速度は、全力ではなく少し抑えているが、その分体力には余裕が出来る。
体力に余裕が出来れば、休憩を頻繁にとる必要もないので、距離を稼げる。結果、ペース的には問題ない。
魔物は、目の前に立ち塞がったり、襲ってきたら、殺すようにしているが、優先すべきは王都に早く到着する事なので基本的には無視している。
大した事のない魔物ばかりだが、寝ている時にも襲ってくるので、それが少々厄介だ。
常に気を張っていないと駄目なので、この4日間は余り眠れていない。
途中で村や街があればよかったが、地図を見る限り俺達の進路上にはない。
ちなみに進路は、リンジャーの街から王都アストリアを地図で見る限りだが、真っ直ぐ進んでいる。
多少迂回すれば幾つかの村に寄れない事もないが、時間を無駄にしたくないし5日毎に精霊陣を使ってアーデル村に戻る事になっている。
村に戻れば、ゆっくり眠る事ができて体力も回復するだろう。
つまり、5日間で俺の体力が尽きなければ睡眠不足だろうが何の問題もない。
チリーン
チリーン
チリーン
「おっ、ジーク! 今日はここまでだ、頑張ったな」
「うぅ、やっとか・・・・・・早く安全そうな場所を見つけて、ボアサンドを・・・・・・」
メアリーさんから貰った時計によって外にいても時間が把握できるようになった為、俺達は計画的に行動している。
1つ目の鐘が鳴る時間に起床して、襲ってきた魔物の魔石を回収してから、日課の修練をして、ジークを起こして朝食を食べる。
2つ目の鐘が鳴る時間に出発して、ジークが休憩を求めない限り、走り続ける。
3つ目の鐘が鳴る時間に昼飯を食べて、暫しの休憩の後、出発。
4つ目の鐘が鳴る時間に休憩は取らず、走り続ける、ジークが限界の場合は休憩する。
5つ目の鐘が鳴る時間に野宿に適した場所を探し、晩飯を食べながら地図を見て、現在地を推測しつつ、問題ないか話し合う。
6つ目の鐘が鳴る時間に就寝する。まぁ爆睡してるのはジークだけだが。
大体こんなスケジュールで過ごしている。
5つ目の鐘が・・・・・・つまり18時になったので、今日の移動はここまでだ。
今日はジークが頑張って、昼食を食べてから、休憩を求めなかったので距離を稼げた。
野宿する場所は見通しのいい場所にしている。
魔物が現れれば、すぐに対応できるからだ。
複数の魔物に囲まれるって事態にも何度か遭遇したが、弱い魔物なら問題ない。
野宿している時に襲ってきた魔物の魔石は、日が昇ってから回収する事にしている。
魔物の強さから大した値段にはならないだろうが、ないよりはマシだ。
野宿する場所を見つけて、残り少なくなったボアサンドをジークと分けて食べる。
100個あったボアサンドも、残り僅かだ。
食事の度に、俺とジークで10個は食べるので1日で30個、10食分でなくなる計算だが、ミラが作ってくれた大量のお弁当もあったので、残りはボアサンド20個、明日の朝食までは持つ計算だ。
「ジーク、味わって食えよ。明日の朝食でボアサンドともお別れだ」
「あぁ、わかっているよ。過去に戻ってリンジャーの街からやり直したいよ。ボアサンドはもっと買い込むべきだった」
ジークに100個と言われた時は、多すぎると思ったが、今は少なすぎたと後悔している。
毎日食べ続ければ飽きると普通は考えるが、不思議な事にボアサンドは幾ら食べても全く飽きない・・・・・・寧ろ食べれば食べる程、その深い味に嵌っていく。
リンジャーには暫く戻る予定もないし、明日でボアサンドともお別れだ。
味わって食べなければ。
「ふむ、今日も美味だった。僕は満足なのだ」
「ごちそうさん」
正直言えば少し物足りないが、満腹になるまで食うと眠気がやばいから我慢だ。
「ダイちゃん、SPを確認してみようか。僕の考えている通りだったら1減っている筈だよ」
「ダイちゃんって呼ぶなぁぁぁ! 畜生! ステータス」
ジークに小馬鹿にされながらも俺はステータスを使い、SPをチェックする。
昨日残りSPを確認した所19032Pだったが・・・・・・19031P!
「ジーク、昨日から1P減ってる!」
「ふむ、やはりか。ならば僕の考えは正しいと考えていいだろうね」
昨日の食後の事だ。
俺はステータスを開き残りSPを確認しているとおかしな事に気付いた。
レムレールに来てから使った魔法のSPを足すと
雷撃2回の200P
解析3回の150P
治癒1回の400P
解呪1回の800P
極癒光1回の1000P
合計で2550P。SPの残りは19032Pで、足すと21582Pで、レムレールに来て直ぐにステータスを開き確認出来たSPは21591Pで、9Pズレている。
その事をステータスを見せながらジークに話すと【一定時間毎SP減少】の効果で、1日経つ事に1Pずつ減っているのではないかとジークは推測した。
そして今確認すると昨日より1P減っている・・・・・・つまりジークの推測が正しかった事が証明された。
「みたいだな。SPが減る時間は恐らく日が変わった時か」
「そうだね。そう考えていいと思うよ。まぁ余り気にする事もないだろう。ダイス・・・・・・ダイちゃんが節約すればね」
「ちっ、わかってる! しっかり節約するから言い直してまでダイちゃんって言うな!」
「ぷぷっ、照れる事ないじゃないか! 可愛いと思うよ? ふわぁ、僕はそろそろ眠るとしようか」
「とにかくもう呼ぶなよ!! 何て言うか・・・・・・気が抜ける。寝るなら隠蔽忘れるなよ」
「おっと、そうだったね。よっと。それじゃあおやすみ」
「あいよ、おやすみ」
移動中は隠蔽を忘れないジークだが、休憩したり、食事をして気が抜けている時には、どうやら隠蔽が解けている事があるらしい。
俺にはジークが隠蔽しているのか、していないのかが、判断出来ないが、休憩後や食事後は、ジークに声を掛ける事にしている。
こんな場所に人が来るとは思えないが、もしもの事があるので、しっかり隠蔽させないとな。
アォーン
アォーン
アォーン
アォーン
リンジャーの街で購入した毛布に包まり、アホ顔で眠っているジークを横目に、俺は気を引き締める。
近くはないが、複数の魔物の遠吠えが聞こえる。
「さてと、今日も頑張りますか」
今日も長い夜になりそうだ。
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ダイスケ達がリンジャーの街を出発してから2日後、全身を真紅のマントで包まれた女が、街に到着した。
「いらっしゃ・・・・・・ひっ!」
「ギルド・・・・・・どこ」
「は、はい! ギ、ギルドは、え、えっと・・・・・・し、職人街に入ってすぐに看板が・・・・・・」
女は露店の店主からギルドの場所を聞き出すと、無言でその場を立ち去り、職人街へと向かう。
「た、助かったぁ」
ギルドの場所を教えた露店の店主が何もされなかった事に安堵していると、隣の露店の店主が話掛けてきた。
「おい、今の女って・・・・・・」
「真紅のマントを纏って、腕には黒の腕輪・・・・・・間違いねぇ、戦闘狂のジャニスだ」
「っ! Sランクハンターのジャニスが何でこんな辺境の街に!?」
「知るかよ! 睨まれただけでチビっちまったぜ」
「さ、災難だったな。ま、まぁ、命があっただけ良しとしとけよ」
「そ、そうだな、だが今日は早いが店仕舞いにする・・・・・・また戻って来る可能性もあるしな」
「お、俺も店仕舞いにす、する!」
「ちょっと、さっきの女って」
「そ、そうだ! ジャニスだ!」
「っ!? 本当かい!?」
「おい、何の騒ぎ・・・・・・」
戦闘狂のジャニスが街に訪れた事が瞬く間に広場の露店の店主達に広まり、
3つ目の鐘が鳴る稼ぎ時の時間に露店が全て店仕舞いするという異例の事態が巻き起こった。




