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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
42/61

42 愚かな父への罰

 


「そんな便利な能力があるのねぇ、流石ジークね! 可愛いだけじゃないわ」


「まぁね。僕は可愛さと高い実力を秘めた・・・・・・」


 ジークが得意気な顔で偉そうにブツブツ言っている。

 何かの冗談だと思いたかったが、ミラは本当に可愛さ中毒のようで、ジークの考えが正しかった事が証明された事もあり、調子に乗っているようだ。

 チラチラ俺を見てくるのが、憎らしい。


 元気がなかったミラは、俺が精霊陣の説明と村に数日毎に戻ってくるつもりだと話したら、元気が出たようで、今は俺達のお弁当を作ってくれている。



「メアリーさん、そういえばダントンさんは?」


「あの馬鹿ならお仕置きが効いたのか、寝込んでいるわ。ダイスケ君は気にしなくていいのよ。ふふふ」


 俺がダントンさんに襲われた理由は、結局わかってはいないが、メアリーさんに強く言われたので、気にしない様にしている。

 恐らく・・・・・・いや間違いなく、ダントンさんよりメアリーさんの方が強いと思われる。

 こんなに綺麗なのに強いってよく考えれば凄いな。


「あら、ダイスケ君、綺麗だなんて恥ずかしい!」


 なっ! エスパー!

 メアリーさんもエスパーなのか!?

 そういえばミラにもエスパーされた事がある。

 エスパーの血筋のようだ。


「出来たのです! たくさん食べるのです!」


 ミラが笑顔でお弁当を持ってきてくれた。

 うん、やっぱりミラは笑顔が似合う。


「あ、あぅ、ダイスケ君、恥ずかしいのです」


 連続でエスパー!?

 これは恥ずかしい。

 これからは気をつけなければ、俺の思っている事が筒抜けだ。


「ダイスケはわかりやすいからね。さてと、そろそろ行こうか。メアリー、村の近くで人の出入りが少ない場所はあるかい?」


「精霊陣ってやつを設置する場所ね? そうねぇ~、ねぇよかったら家の空き部屋に設置しない?」


「ふむ、良い考えだね。ダイスケ、それでいいかい?」


 ミラの家に精霊陣を設置か。

 魔物や人に荒らされる可能性も外に設置するより低いだろうし、都合がいいな。


「あぁ、メアリーさん、お言葉に甘えさせてもらいます」


「ふふふ、いいのよ」


 メアリーさんに案内された部屋に精霊陣を設置して、全ての準備が整い、俺とジークは王都へ出発する事にした。


「色々お世話になりました! また顔を出しますが、その時はよろしくお願いします」


「世話になったね。感謝しているよ」


「ダイスケ君、ジーク、気をつけて行くのです。無理はしちゃ駄目なのです」


「気にしなくていいのよ? 私達がこうして元気でいられるのはダイスケ君とジークのおかげなのよ? あの馬鹿も含めてね。だから私達に出来る事なら力になるから遠慮なんてしたら駄目よ! 後ね、ダイスケ君。これを持っていきなさい。きっと役に立つわ」


 メアリーさんがそう言って俺に時計のような物を渡して来た。


「これは??」


「それはね、時間を教えてくれるの。村や街では鐘で時間を把握するでしょ? あれと同じで、定められた時間に小さいけれど音が鳴るから何処にいても、時間を把握する事が出来るわ」


 つまり時計だな。

 うん、これは便利だ。

 役に立つ事間違いなしだな。


「ありがとうございます! 大事に使わせてもらいます」


「ふむ、便利だね。精霊陣で戻って来る時は5つ目の鐘~6つ目の鐘の間に戻る事にしようか。そうすれば美味しいご飯に・・・・・・ククク」


「ふふふ、わかったわ。それじゃあ気をつけてね」


「あ、あぅ、ダイスケ君」


「数日毎に、帰って来るから安心してくれ! 約束する!」


「約束なのです! 私・・・・・・待ってるのです」


「あぁ約束だ! じゃあいってきます」


「いってらっしゃい」


「いってらっしゃいなのです」


 俺達はミラ達に見送られ王都へと出発した。





 ***********




「行っちゃったのです」


「ミラちゃん? さっきはジークの案に乗っかって逃げたわね?」


「あ、そ、その・・・・・・怖かったのです」


「ふふふ、次は逃げちゃ駄目よ? そうしないと誰かにダイスケ君取られちゃうわよ?」


「っ!? い、嫌なのです! そんなの絶対駄目なのです!!」


「もう! 可愛いんだから!」


 顔を真っ赤にして頬を膨らませる娘が可愛いくて、メアリーは、娘を抱き締め頭を優しく撫でる。


「あっ、そう言えば、ダイスケ君の傷はお父さんが関わっているのです?」


「えぇ、そうよ。あの馬鹿はね、ミラちゃんがダイスケ君に恋をしてるって知ってね・・・・・・」


 メアリーはダントンが怒り狂ってダイスケに本気で襲いかかった事、返り討ちに合い戦闘不能にされ、運ばれて来た事、反省させる為に氷漬けにした事を話した。


「お父さん最低なのです! ダイスケ君は何も悪くないのです! もう口を聞かないのです!」


「そうね。暫く無視しときなさい。ダントンも更に反省して、二度とこんな馬鹿な事しようと考えないでしょう」


 愛する娘に嫌われた事を、高熱に魘され寝込むダントンが知る由もなかった。




 ***********




 カーン


 カーン


 カーン


「おっ、朝か。熱も引いたみてぇだな」


 メアリーにお仕置きされ、高熱で寝込んでいたダントンは、1日中寝ていた事もあり、すっかり元気になっていた。


「メ、メアリー、おはよう! き、昨日はその・・・・・・悪かった、反省してる」


「あら、もう元気になったの? もう少し寝込んでいればよかったのに」


「ひっ、ゆ、許してくれ! ダイスケにもきっちり謝罪する! だからそんな虫ケラを見る様な目で俺を見ないでくれぇ!」


「ダイスケ君とジークなら昨日村から出て行ったわよ」


「なっ! それは一体どういう事だ?」


「やる事があるんでしょ。ダントン忘れてない? ダイスケ君とジークは神様の意思によって行動しているのよ? いつまでも村に居るわけにはいかないでしょ? あぁ、そうだわ! それでね空き部屋にね・・・・・・」


 メアリーはダントンにジークの能力、精霊陣について説明し、自らの考えをダントンに伝えた。


ダイスケ達が、空き部屋に精霊陣を設置した事により数日毎に村に帰って来る事。


魔物の状況を訊ねられた事。


それらの理由により、間違いなく魔物の襲撃から村を守ろうとしている、と。


 話を聞いたダントンは、頭をボリボリ描きながら不機嫌な態度を隠そうともせず口を開く。


「ちっ、ダイスケの野郎、余計な事考えやがって」


「ダントン、私達だけだと守りきれるかわからないのは理解しているわよね? 本来なら死んでいたのよ?」


「あぁ! そんな事はわかってる! わかってるが・・・・・・情けねぇ」


 日々努力を重ね、Aランクハンターとなり、大切な者を守れる強さがあると思っていた。

 だがAランクの魔物に重傷を負わされてしまい死にかけてしまった。

 それにより、本来守るべき存在の愛する娘に無茶をさせ、危険な目に合わせてしまった事が辛かった。

 家族の命を救ってくれたダイスケとジークに感謝はしているが、自らを情けなく思う気持ちが強かった。


「ダントン、気持ちはわかるけど、自分の弱さを認めないとそこまでよ? 今のままでは前回と同じ結末になる可能性が高いわ。ダイスケ君は私達よりも圧倒的に強いのでしょ?」


「認めたくねぇが、間違いねぇ。Sランクの実力は確実にある・・・・・・いや、本気を出していなかった事を考えるとそれ以上かもな」


「ダイスケ君が良い子で助かったわね? 普通なら殺されてたわよ? 鬼殺しの大剣と中級魔法まで使って、本気で戦ったんでしょ?」


 ダントンは、娘を誑かしたダイスケに我を忘れ、愛用の武器【鬼殺し】と中級魔法を織り交ぜた本気の戦闘手段で襲いかかっていた。

 結果は斬撃はかする事もなく、魔法は片腕で防御され大したダメージを与える事が出来ず、ダイスケの放った魔法により一撃でやられる始末。


「そうだ。ダイスケは俺を傷付けないように手を抜いていたようだしな。情けねえが実力が違いすぎた。殺されても文句は言えなかったな。俺から吹っかけたんだしな」


「ダイスケ君が帰って来たら誠意をもって謝るのよ? ダイスケ君は何故ダントンに襲われたか理解はしていないけどね。ダントンも絶対に言ったら駄目よ? わかってはいると思うけど、ミラちゃんの恋の邪魔をしたら」


「わ、わかってる! ダイスケには謝るし、理由は墓まで持っていく! 約束する!」


「ふふふ、わかればいいのよ。あらミラちゃんおはよう」


「ふわぁ、おはようなのです!」


「ミラ、おはよう」


「・・・・・・」


「・・・・・・ミラ?」


「お母さん、お腹空いたのです」


「はいはい、すぐ用意するから待ってなさい」


「わかったのです」


「ミ、ミラ? お、おはよう」


「・・・・・・」


「ミ、ミラ?」


「・・・・・・」


 ダントンは愛する娘の様子に冷や汗を浮かべる。

 声を掛けても反応がなく、顔も一度もダントンの方に向けない。

 普段なら満面の笑顔で朝の挨拶を返してくれる愛する娘の様子がおかしい。


「メ、メアリー! ミ、ミラの様子が、お、おかしい!」


「あら? ミラちゃん? いつも通りよね?」


「はいなのです! いつも通りなのです!」


「い、いつも通りなら、こっちを向いてくれぇぇ! ミ、ミラ、た、頼む!」


「・・・・・・」


「ミ、ミラァァァァァァァァァァ」


 嫉妬に狂い、愛する娘の初恋をぶち壊そうとした愚かな男への罰は、終わっていなかった。

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