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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
41/61

41 可愛さ中毒でした

 

 ミラの家に向かう途中ジークが、耳元で「僕の可愛さには中毒性がある」と繰り返し囁いて、非常にウザかった。

 俺はそれを無視して、道だけ指示させて最短でミラの家へと向かい、今は家の前にいるが、中々扉を叩く事が出来なかった。


「ダイスケ、どうしたんだい? 早く挨拶して出発しないと」


「わかってるんだが、ミラが泣いていた理由がわからないんだ。そんな状態で謝っても意味がないだろう」


 謝るだけなら簡単だ。

 だが、ミラを傷つけた原因がわからぬ状態で謝って意味があるのか?

 何の解決にもならないし、また傷つけるかもしれない。

 笑顔が似合うミラを泣かせてしまうなんて許される事じゃないし、何というか・・・・・・ミラの涙を見たのは2度目だが、俺も心が締め付けられるようで辛い。


「だから言っているだろ? 原因は可愛さ中毒だよ? まったく、時間の無駄だよ。よっと」


「お、おい! ジーク!」


 ジークが俺の肩から飛び降りて、扉の方に走り出す。

 俺は慌ててやめさせようとするが


 ドン


 ドン


「メアリー! ミランダ! 君達のアイドルの僕だよ! 開けてくれたまえ!」


「こ、この馬鹿精霊! まだ考えが纏まって・・・・・・」


「あらあら? 騒がしいわね。入りなさい。私のアイドルは抱っこしてあげましょう」


「ふむ、ご苦労」


 間に合わず、メアリーさんが扉を開けて、ジークを抱えて中に入っていってしまう。

 こうなったら仕方ない。

 ミラに直接聞いて、その上で謝るしかない、と決心して俺も後を追って家に入る。


「お邪魔します」


「あ、あぅ、ダ、ダイスケ君」


「あ、ミ、ミラ」


 俺が家に入ると、ミラの姿が目に入った。

 心の準備が出来ていなかった俺は上手く言葉を出せず、動揺してしまう。

 今は泣いていないようだが、目が腫れている。

 動揺しつつも、俺はそのままミラに近付き、腫れあがった目を手で優しく包み、魔法を唱えた。


「あ、あぅ、ダ、ダイスケ君?」


「【治癒】」


「っ!? ダイスケ! 何をやってるんだ!?」


「あらぁ、話には聞いていたけど本当に回復魔法を使えるのねぇ」


「あっ、すまんジーク! 身体が勝手に・・・・・・」


 ミラの腫れた目をみて無意識に、魔法を使ってしまった。

 ジークが珍しく声を荒げているが、それには理由がある。

 俺はダントンさんの魔法によって負傷した左腕を治していない。

 ジークに何故治さないのか? と訊ねられて俺は「SPの節約」と答えた。

 回復魔法は2種類【治癒】と【極癒光】

 消費SPは400Pと1000P。

 戦闘時は使い物にならなかったが、骨にヒビは入ってなさそうだし、火傷も後は残るだろうが大したもんじゃない。

 わざわざ400Pも使うのは勿体無いし、これから何があるかわからないから節約しといて損はないだろうと判断してジークも納得してくれて、節約に賛成してくれた。

 なのに俺は、ミラの腫れた目を見て、使う必要のない魔法を使ってしまった。

 ジークが怒るのも無理はない。


「ダイスケ! 何を考えているんだ! 節約するんじゃなかったのかい?」


「す、すまん・・・・・・」


「まったく・・・・・・愚かとしか言いようがないよ」


「ジーク? 何をそんなに怒っているの? ダイスケ君がミラちゃんの目を魔法で治してくれただけでしょ?」


「え、そうなので・・・・・・あっ、腫れがひいてるのです」


 声を荒げるジークを不思議に思い、メアリーさんが声を掛ける。

 ミラも俺が腫れた目を治した事に気付いたようだ。


「ふぅ、すまないね。取り乱してしまったようだ。詳しくは話せないが、ダイスケの魔法は限定的なものでね、使用するのに限度があるのだよ。その為に自分の傷は治してない癖に、軽々しく使うものだから・・・・・・」


「そんな・・・・・・はっ! ダ、ダイスケ君! 怪我してるのです!?」


「ダイスケ君、まさかあの馬鹿にやられた傷?ちょっと見せなさい」


「大した傷じゃないから大丈夫です。ミラも気にしなくていい。俺が勝手にやった事だ」


 ジークが俺の魔法について説明したのは驚いたが、よくよく考えれば隠さなければならない事でもないし、ミラ達になら問題はないか。

 大した傷じゃないが、メアリーさんやミラに気を使わせる事になるし、わざわざ見せる事はない・・・・・・


「ダイスケ君、見せてちょうだい!」


「ひっ! は、はい!」


 メアリーさんの迫力にまけて、俺は長袖を捲り上げ、傷を見せる。

 どうでもいい話だが、俺は異世界に服を少ししか持ってきていない。

 シャツが3着にズボンが2着にじいちゃんがよく着ていた剣道着。

 そのうちの1着がダントンさんの魔法により破けてしまって、駄目になったので今は薄い長袖を着ていて、少し暑かったりする。


「っ!? ミラちゃん、清潔な布を持ってきてちょうだい! 後回復薬も」


「は、はいなのです!」


「いや、メアリーさん、本当に大丈夫で・・・・・・」


「黙りなさい!」


「はっ、はい!」


「酷い打撲ね・・・・・・それに火傷、あの馬鹿、中級魔法を使ったのね!少し冷たいけど我慢してちょうだい」


 メアリーさんが俺の傷に手を翳すと、冷んやりと・・・・・・ってか冷た!傷口が薄っすらと凍っている。

 どうやら魔法のようだ。

 俺は玄関近くにあった氷の彫像とお仕置きされたダントンさんを思い出し、答えに辿り着いた。

 あの氷の彫像がダントンさんだったという事に。


「お母さん、持ってきたのです!」


 ミラが清潔な布と回復薬を持って、居間に戻って来た。


「ありがとうミラちゃん。布は傷口に巻いてちょうだい。ダイスケ君、これを飲みなさい」


「はい、ありがとうございます」


 回復薬は魔物との争いが続いて、値段が高い。

 だから、断りたかったが、断ってもメアリーさんに逆らえない事はわかっているので、大人しく飲む事にした。


「とりあえずこれで治りが早くなるはずよ。あの馬鹿に代わって謝罪するわ。本当にごめんなさい」


「いえ、もう気にしないで下さい。色々ありがとうございます」


「あ、お母さん、もしかしてダイスケ君の傷ってお父さん・・・・・・」


「ミラちゃん後で説明するわ。それでダイスケ君、話があるんでしょ?」


「あっ、は、はい! ミ、ミラ!」


「は、はいなのです」


「その、今朝泣いてだろ? 俺達の言動でミラを傷付けて悲しませたって事はわかってる。でも、はっきり何が駄目だったかわからないんだ。だから教えてくれないか? 俺は何が駄目だったかしっかり理解して、反省して、ミラに謝りたい」


「えっ、あ、あぅ、えっと、お、お母さん」


「ふふふ、ミラちゃん頑張りなさい」


 ミラが明らかに動揺している。

 そんなに言いにくい事なのか?

 俺達は一体何を・・・・・・


「ふわぁ、よいしょっと。ダイスケ、理由はわかってると言ったろ? 何故信じないんだい? ふわぁ」


 俺を怒鳴った後、疲れたのか椅子でウトウトしていたジークが俺の肩によじ登り、眠そうに口を開く。


「ジークさっきは悪かったな。だが、そんなわけないだろ? ありえない」


「ふぅ、ダイスケ? 僕は偉大なる大精霊だよ? 僕の考えに間違いはないさ」


「え、あ、あの、ど、どういう事なのです?」


「あぁ、ここに来る前に、ジークがミラが泣いていた理由を話してくれたんだが、ありえない理由でな」


「あら? まさかの展開ね。ミラちゃん、自分の口から伝えた方がいいんじゃないかしら?」


「え、え、あ、えっと・・・・・・」


「ミランダ、照れる事はないよ! 君が夢中なのは誰がみても明らかだからね」


「っ!? あ、あぅ」


「あらあら、ふふふ」


 顔が真っ赤で、視線を彷徨わせるミラをみて、俺はまさかと思う。

 ジークの戯言が当たっていると言うのか?


「まぁ、ミランダからは言いにくいだろうから僕からはっきり言ってあげるとしようか。僕は慈悲深い精霊だからね」


「あ! だ、駄目・・・・・・」


「君は僕の可愛さに夢中なのだろ? なぁに、恥ずかしがる事はないよ? それで、僕と離れる事により僕を可愛がれなくなる。辛いよね? 何故なら僕の可愛さには中毒性があるからだ。辛くて泣いてしまうのは当然の事だよ」


「あら」


「えっ? ・・・・・・あ、そ、そうなのです! わ、私はジークのか、可愛さに夢中なのです!」


「はっ? 本当にそうなのか!?」


「は、はいなのです! だ、だからジークと・・・・・・そのダイスケ君と離れるのが辛かったのです」


「ミラちゃん・・・・・・逃げたわね」


「みたかダイスケ! 僕の言った通りだろ? まったく」


「すまなかったジーク。ミラ、気付いてやれなくてごめんな。でも安心してくれ、俺とジークは数日おきに村に戻って来るから・・・・・・」


 俺はミラが涙した理由に驚きながらも誠意をもって謝り、ジークの能力によって村に戻って来る事を説明した。



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