40 可愛さ中毒
ミラの涙の理由がわからず、闇雲に歩き続ける俺は、気が付けば村の広場に辿り着いた。
「ダイスケ、そろそろどうするか決めないかい?行動は早い方がいいよ」
「あぁ、すまない。そうだな、とりあえず一旦村の外に出よう。ここは人が多すぎる」
ミラの家を出てから黙っていたジークが小さく耳元で囁いた。
ミラの事は気にかかるが、いつまでも悩んではいられない。
メアリーさんから必要な情報は得られたんだ。
ジークとどうするか早く決めて、行動を起こさなければならない。
今いる広場では人が多すぎて、話し合いには不向きな場所だ。
真っ直ぐ進めば村の外に直ぐに出れる事もあり、アーデル村を出る事にした。
「ふぅ、ここら辺で大丈夫だね。周りに人の気配もないしね」
「あぁ、そうだな。それでどう思う?」
村から少し離れた草原で腰を落ち着かせ、ジークに意見を求める。
「まずは誓約についてだね。結論から言うと、誓約は契約と同じように呪いの一種だと僕は推測している。つまり、勇者の誓約に解呪は有効だ」
「誓約が呪いっていう根拠はあるのか? 話しを聞いた限り、誓約は同意して行うものだろ? 契約の儀式は呪いだと思うが・・・・・・」
メアリーさんから聞いた情報によって誓約の儀式は、本人の同意がなければ成り立たない事がわかっている。
同意の上で誓い、破れば不幸な事が起きるが、実際に破れば何が起こるのか具体的じゃない。
対して契約の儀式は強制だ。
犯罪者に行うもので、強制的に法を与え、破れば死・・・・・・間違いなく呪いの一種だと思われる。
契約は呪いだが、誓約は? となると、呪いかどうか微妙な所だ。
「幾つかあるが、まず契約の儀式は呪いなのはわかるね? 強制的に縛りを与え、破れば死なんて呪いでしかないよ。それに対して、誓約は強制ではないが、破れば罰が起こるのは共通しているし、同じものと考えていいと思われる・・・・・・よって誓約も呪いと僕は推測している。それにね、古から伝わっているのに、儀式が何なのか解明されてないのも怪しすぎると思わないかい?」
確かに、どちらも破れば罰が下るのは同じだ。
そして、ジークが言う通り、儀式がどういったものなのか解明されていないのも怪しい。
「確かにそうだな。呪いの可能性が高いって事は確かだ」
「そういう事だね、もし呪いじゃなければ他の方法を考えなければいけないが、とりあえず王都に行って勇者に会ってみないかい? そこで解析を使えばはっきりわかるだろうし、呪いなら解呪を使えばいいし、違ったら他の方法を考える・・・・・・どちらにせよ、前進出来るだろ?」
「そうだな・・・・・・とりあえず王都には行こう。問題は・・・・・・」
「いつ行くのか? だろ?」
「話が早くて助かるよ」
アーデル村を見捨てる選択肢は俺にはない。魔物の襲撃までメアリーさんの話だと一月前後。
王都までは徒歩で一月・・・・・・俺なら全力出せば半月程で行ける筈だ。
帰りは精霊陣で村に戻ればいいから、何とかなりそうだが・・・・・・
「まず精霊陣をアーデル村に設置する、それにより、片道の日数を考えるだけで済むからね。そして徒歩で一月なら、ダイスケなら強行策になるが半月程で王都に着けるだろう。普通に考えれば問題はないのだが、不安要素もある」
不安要素か・・・・・・確かにな。
王都に向かう途中で高ランクの魔物に襲われるかもしれない。
天候が荒れて足が鈍るかもしれない。
道に迷って・・・・・・
「僕の指示に従えば迷う事はないよ」
道に迷う事はないから安心だな。
後は・・・・・・
「王都に勇者が滞在しているかわからない、そして滞在していても、王都の様子がわからない以上、時間の計算が出来ないね」
なるほどな、ミアが俺達が王都に着いた時に王都にいない可能性もあるのか
そして居たとしても、速やかに会えるのかどうかもわからない。
いや、ミラ達が追放された事を考えると、会えない可能性が高いな。
改めて考えると、不安要素だらけだ。
早く何とかしたい気持ちは強いが、ここは村を魔物の襲撃から守ってから行動した方が・・・・・・
「その方が確実かもね。でもね、勇者に会う事が出来なくても無駄足にはならないよ。何故かはわかるだろ?」
王都に行ってミアに会えなかったとしたら目的を果たせないし、意味がないが・・・・・・精霊陣か!
「精霊陣だけでも設置しておけば、いつでも王都に行けるって事だな?」
「そういう事だよ。襲撃まで村で過ごしてもいいが、何事も早い方が後々に影響するかもしれないからね」
ジークは今すぐ王都に出発した方がいいって考えてるみたいだ。
行動が早い方がいいのは同意できる。
だが、やっぱり村が・・・・・・ミラ達が心配だ。
長く村を守ってきたダントンさんとメアリーさんが出した結論で、襲撃の時期は、ほぼ間違いないだろうが、想定外の事が起きる場合もある。
半月で戻って来れば問題ないと思うが・・・・・・
「ダイスケ、村が・・・・・・ミランダ達がそんなに心配なら良い方法があるよ。聞きたいかい?」
「エスパーめ、聞かせてくれ」
「王都に向かいながらも、精霊陣を使って、村に様子を見に来れば解決するよ。但し、その為には何度も精霊陣を設置し直さなければならない。
僕の精霊力は日々回復しているが、精霊陣を設置するのにも、移動するのにも僅かに精霊力を使うんだ。だから毎日村に帰る事は無理だ。でも、数日に1度くらいなら問題ないよ」
これはナイスだ!
まずアーデル村に精霊陣を設置する。
そして、王都に向かい、村の様子を見に行く時は、その場で精霊陣を設置して村に帰って、何事もなければ王都に向かう途中に設置した設置陣を使い戻り、日が経てばまた様子を見に精霊陣を設置して・・・・・・いや、違うな。
精霊陣は最大で2箇所までしか設置出来ない。
それ以上設置すると、古い精霊陣から上書きされていく。
今の方法だと、アーデル村の精霊陣が上書きされてしまうから・・・・・・
「精霊陣の特性を覚えていたようだね。まずアーデル村に精霊陣を設置する。王都に行く道中で精霊陣を設置して村に戻る。村に再び精霊陣を設置して道中に戻る。この方法なら問題ないよ」
だな。
この方法ならアーデル村の精霊陣は上書きされようが消える事はない。
「ジーク、精霊陣を設置して今日中に王都に出発しよう。そして、時々様子を見に村に帰る。これなら魔物の襲撃を防げる可能性が高いし、ミアを救える事も出来るかもしれない! 最悪でも王都近郊に精霊陣を設置できる!」
「これ以上良い案もないからね。そうしよう。直ぐに出発するかい?」
「いや、出発前にミラ達に顔を出しておこう。メアリーさんにも言われているし、それに・・・・・・ミラが心配だ」
「ふむ、そうだね。ところでダイスケ、何故ミランダが泣いていたかわかっているかい?」
「いや、わからない。でも俺達が関係している事はわかる。俺達がミラを悲しませてしまったんだと思う」
俺にはミラが泣いていた理由がわからない。
でも、メアリーさんと俺達が会話をしていて泣き出したって事は、俺達が関係しているんだと思う。
謝りたいが、理由がはっきりしていない。
何がミラを傷つけたのか、理由がわからない状態で上辺だけの謝罪をしても無意味だろう。
理由をはっきり把握して心から謝罪したい。
「ダイスケ、賢い僕はミラが何故泣いたのか理解しているが、聞きたいかい?」
「なっ!? ほ、ほんとか! 教えてくれ! 一体何が・・・・・・」
「ふむ、ミランダはね、僕を可愛がれなくなるのが辛いんだよ。僕の可愛さには中毒性があるからね。メアリーとの会話により、僕達が村を出ていくと判断したミランダは、僕を可愛がれなくなるという現実を受け入れきれずに涙してしまったのだよ」
「・・・・・・」
「ん? どうした? ダイスケ?」
「・・・・・・行くぞ」
「何だ! その顔・・・・・・うわぁ」
俺はジークを摘んで肩に乗せて、ミラの家へと向かった。




