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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
36/61

36 父の怒り

 

「帰ったぞ! メアリー? 何してるんだ?」


「しぃ! ダントン静かに」


 魔物の調査から帰ってきたダントンはメアリーが声を潜め、娘の部屋を覗き込んでいる事に疑問をもち、自らも音を殺して部屋を覗くと、うっとりとした表情で純白の髪飾りを寝転びながら眺めている娘の姿があった。



 ダイスケとジークが帰った後、部屋に戻ったミランダはそのまま布団に飛び込み、枕に顔をうずめ、ダイスケと過ごした時間の余韻に、浸っていた。


(ダイスケ君の驚いた顔、可愛かったのです。そ、それに、わ、私の事をミ、ミラって呼んで、か、可愛いって言ってくれて・・・・・・)


「きゃあぁ」と叫びながら身を捩り悶えるミランダ。

 そんな様子をメアリーとダントンがこっそり覗いているのだが、まったく気づいていなかった。



(あらあら、可愛いらしい)


(な、何だ! 俺のミラに一体何があったたぁぁぁ!)



 ミランダは「えへへ」と頬を緩ませ髪飾りを眺め、さらに余韻に浸る



(プレゼントなんて貰ったの初めてなのです。とっても綺麗なのです。似合ってるって言ってくれたのですぅ~)



「きゃあぁ」と足をばたつかせ悶えるミランダ。


 そんな娘の様子をみてダントンは、メアリーの袖を引っ張り、状況を聞き出す。


「おい、メアリー! ミラに何があった!?」


「もう! いい所なのに・・・・・・まぁいいわ。ジークにも伝えるよう頼まれてるしね。実はね・・・・・・」


 メアリーは、今朝ダントンが連れて来たダイスケがジークの契約者で、ミランダを救ってくれた命の恩人である事を伝えた。

 そして、ミランダを何らかの方法で尋常ではない早さでアーデル村へと連れて来てくれた・・・・・・つまり自分達の命の恩人でもあると。


「なるほどな! 確かにダイスケは強いし、若い奴にしては珍しく目に力がある! 只者じゃねぇとは思ったが、ジーク様の契約者か!納得だ・・・・・・ん? ちょっと待て! って事はダイスケの野郎、ミラと2人っきりで旅してたって事かぁ!!」


「ダントン落ち着きなさい、ジークもいるから2人っきりじゃないわよ?」


「はっ!? それもそうか・・・・・・いや、駄目だぁ! 2人っきりみたいなもんじゃねぇかよ!」


「はぁ、まったく。とりあえず話を聞いてちょうだい。それでね命の恩人でしょ? だからね・・・・・・」


 夕食をご馳走した事、ジークの悪戯が成功した事、メアリーは簡潔に興奮するダントンに伝える。


「それは別に構わねえ! 驚いた顔は見てみたかったが・・・・・・そんな事よりだ! ミラのあの様子は何があったんだ!?」


「ふふふ、ダントン落ち着いて聞いてね? ミラちゃんはね、ダイスケ君に恋をしているのよ? 一目惚れしてね、ダイスケ君に夢中なの。ほら、さっき髪飾り眺めていたでしょ? あれはダイスケ君からのプレゼントらしいわよ? ふふふ」


「っ!? な、なんだと・・・・・・ミ、ミラがダイスケに恋してるだと? あ、あの野郎ぉぉぉぉ! 俺の可愛いミラを誑かしやがったんだなぁ! ぶっ殺してや・・・・・・っ!」


 ゴンッ!


 目が血走り、叫ぶダントンの頭にメアリーの鉄拳が落とされる。


「い、いてぇよ、メアリー! 何するんだ!?」


「ちょっとうるさいわよ! ミラちゃんに聞こえちゃうでしょ? それにね、ミラちゃんの初恋なのよ? ダントンでも邪魔すれば・・・・・・わかってるわよね?」


「ひっ、ひぃぃ、メ、メアリー落ち着いてくれ!わ、わかったから! た、頼む!」


 ニコリと微笑みながら目が笑っていないメアリーのプレッシャーを受け、ダントンは頭を床につけ、許しを乞う。


「ふふふ、わかってくれればいいのよ? ほら、ミラちゃんの様子を覗きましょう! 悶えるミラちゃん可愛いんだから」


「お、おう、わ、わかった」



 その後も悶える娘の姿を覗いていたダントンとメアリーは



(ミラちゃん完全に舞い上がってるわ。ダイスケ君も罪な男ね。ミラちゃんをもらってくれないかしら?)



(殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す)



 対象的だった。




 ***********



「お世話になりました!」


「あいよ! また来ておくれよ!」


 1つ目の鐘が鳴る頃、俺とジークは宿を引き払い、訓練場へと向かった。

 宿を延長するかどうか悩んだが、ダントンさん達の話を聞いてから判断する事にした。

 眠そうなジークを肩に乗せ、訓練場への道を指示させて、無事に訓練場へと着くと、先客がいた。


「ダントンさん? あ、そうだ! 実は昨日、夕食を・・・・・・」


「よぉ、来たな、ダイスケ! 話は聞いてるから気にすんな! まずは礼を言わせてもらう。ミラと俺達を助けてくれてありがとよ」


「いや、礼なんて必要ないぞ! 当然の事をしただけだしな! ところでその大剣は?」


 ダントンさんが肩に担いでる大剣が昨日のとは違う事に俺は疑問をもつ。

 何とかいうか・・・・・・黒光りしていて禍々しいし、刃が潰れてないようで、訓練用の武器ではなさそうだ。

 それに、妙にピリピリしているような気が・・・・・・気のせいか?


「ふわぁ、ん? ダントンじゃないか? おはよう」


「ジーク様、お姿は視えませんが、いるのですね。おはようございます」


「あぁ、そうか、すまないね。今隠蔽を解くから・・・・・・よいしょ」


 ジークが隠蔽を解いたらしい。

 こういうやり取りを見ないと、常にジークを視認できる俺には隠蔽の効果を実感する事が出来ない。


「それでダントン。随分とピリピリしているようだね? 何かあったのかい?」


 やはり俺の気のせいではないようだ。

 ジークも感じとったらしい。


「はい、色々ありまして・・・・・・どうしても、ぶっ殺さないといけない奴がいるんです! だから・・・・・・ちょいと手合わせしてくれねぇかぁ? ダイスケ?」


「ダイスケ、ダントンのあの様子は尋常じゃないよ。もしかしたら魔物の襲撃が近いんじゃないか? ほら、昨日ダントンは村の外に出ているってメアリーが言っていただろ? 恐らく魔物の様子を探っていたんじゃないかな?」


 そういう事か!

 魔物の襲撃が近いなら殺気立っているのも納得出来る。

 昨日、村の外で魔物の様子を探っていたダントンさんは襲撃が近いと判断した。

 でも、回復したばかりで万全な状態じゃない。

 そこで昨日手合わせたAランクハンターの俺の出番って訳だ!

 いわば準備運動みたいなもんだな!

 ぶっ殺したいのは、Aランクの魔物だろう。

 俺とジークの行動も決まったな。

 アーデル村に残って、魔物の襲撃を防ぐ・・・・・・いや、防ぐだけじゃ駄目だ、村を襲う魔物全てを殲滅してやる!



「勿論だ! 事情は察したぞ、未熟な俺に出来る事があるなら・・・・・・」


「あぁ!? 察した・・・・・・だと? ふざけやがってぇぇ!! いくぜぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


「ちょっ!? ダ、ダントンさん?」


 事情を把握し、準備運動がてら、手合わせを望んでいると判断した俺が、了承すると同時に、殺気がだだ漏れのダントンさんが俺に突っ込んで来た。


 ドォォォォォォン!


 俺は後方に大きく跳び、難を逃れた。俺がいた場所は、禍々しい大剣の一撃によって、地面に大きな穴が開いている。

 直撃すれば、並の防御力の俺だ。唯では済まなかった・・・・・・


「ダ、ダントンさん? 手合わせだよな? そ、その大剣使うのか!?」


「あぁ、安心しろ! 手入れはばっちりだから、斬れ味抜群・・・・・・だ」


「ぬわぁ! ダ、ダントンさ・・・・・うぉぉっ」


 ダントンさんのキレのある斬撃を紙一重で交わし続け、距離が出来た所で、状況を把握しようとするが、答えが見つからない。

 ダントンさんの殺気は何故か俺に向けられている。

 何故だ?

 実戦を想定しているだけか??

 いや・・・・・・明らかに俺を本気で殺しにきてるよな?

 わけがわからんぞ!

 昨日は普通だったし・・・・・・っ!


「ちっ、チョロチョロ逃げ回りやがってぇぇぇ! 食らえ! 【火炎弾】!!」


 思考していた俺に向かって、ダントンさんが、炎を纏った弾丸を放った。


「っぅ! あっちぃぃぃ! 魔法か!? ダントンさん、ちょっ待て・・・・・・うわぁ!!」


 距離があった事もあり、油断していた俺は回避が僅かに遅れてしまい、咄嗟に左腕を盾にして、致命傷を避けるが、代償はでかかった。

 鈍器で殴られたような鈍い痛みと痺れ、炎の熱による火傷によって、左腕は暫く使えなくなってしまった。


 そんな俺を嘲笑うかの様に、凄まじい早さで突進してくるダントンさん。

 クソッ! ダントンさんは本気で俺を殺す気だ!

 俺も反撃したいが、こんな状態では手加減できるかわからないし、甘いかもしれないが傷つけたくない。

 下手をすれば殺してしまうかもしれない。

 重傷を負わさずに、無力化出来るような良い方法があれば・・・・・・


「ダイスケ、雷撃だ!」


「っ!? その手があったか! ナイスだジーク!」


 生き物に使った事はないが、ダメージは少なく、麻痺効果がある雷撃ならうまく無力化できるかもしれない。

 エスパージーク役に立つ子!

 後で聖なるお菓子を1個・・・・・・


「2個だ!」


 わかったよ!


「ダァァァァイィィィィスゥゥゥゥゥケェェェェェ!!!!」


「すまん! 【雷撃】」


 鬼の形相で突っ込んで来たダントンさんに向けて、雷撃を放つ。


「アガガガガガァァァァァァ!」


 雷撃が直撃したダントンさんは、そのまま倒れ込み、身体がピクピクと痙攣していて、起き上がる様子はない。


 どうやら無力化出来たようだ。


「ジーク助かったよ!」


「気にするな、相棒だろ? 聖なるお菓子2個忘れてないだろうね?」


「あぁ、ところで状況わかるか?」


「いいや、大精霊の僕にもさっぱりわからないよ。困ったね」


「そうか・・・・・・はぁ、一体何がどうなってるんだ」


 痙攣し続けるダントンさんを横目に、俺は痛む左腕を庇いながら、その場でへたり込んだ。


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