35 誓約
部屋に戻った俺は、ベッドに座り、今後どうするべきか頭を悩ませていた。
色々あったが、僅か数日で無事に捜索していたミラと両親を見つける事が出来た。
ミラ達を捜索していた理由は、事前に決めた【神の意思】という事でジークが説明済みらしい。
その際にダントンさん達に何をすればいいのか? と訊ねられたジークは、時が来るまで元気でいるように、と適当に誤魔化したらしいが、それでいいと思う。
元気でいてくれれば、ミアとも再会させる事が出来るし、どういう展開になるかわからないが、ミアの支えになるだろう。
しかし、ミラ達はアーデル村に住んでいて王都からは遠く離れているし、王都には追放処分の為に入れない。
追放処分を取り消す方法があれば、手っ取り早いんだが・・・・・・むぅ、政治とか法律とかよくわからん!
「ふむ、限界がきたようだね? さぁ僕に悩みを話してみるがよいぞ?」
でたよ、エスパー。
ナイスなタイミングだ。
俺には答えが出せそうにないし、意見を聞かせてもらおう。
「とりあえずは今後の事だな。ミラ達をミアと再会させるのは確定だとしてその後にどうするかで悩んでる。ミラ達は王都を追放処分されてるだろ?」
「成る程ね、それで追放処分を取り消す方法がないか悩んでいるわけだね?」
大精霊様、流石です。
まさにその通りなんです。
「フハハ! 偉大な大精霊なんだからこのくらい当然だろ? それで良い案が2つあるけど、聞きたいかい?」
なっ!? 2つも良い案があるのか!
仕事が早すぎる!
「本当か!? 是非聞かせてくれ!」
「少し落ち着きたまえ、まずだね、追放処分を決めたのは、アストリア王国の王だろ? だから、ダイスケの圧倒的な力を見せつけて、脅・・・・・・」
「却下ぁぁぁぁ! 馬鹿か! そんな事したらこれから行動しずらくなるし、ミラ達も危険すぎる!」
期待した俺が馬鹿だった。
いきなり何て物騒な事を言い出すんだ、この馬鹿精霊め!
下手したら指名手配されるんじゃないか?
尚且つそんな外道な方法でミラ達が王都に戻れたとしても危険すぎる。
「そうかい? 良い案だと思ったんだけどね。じゃあもう1つの案でいこうか。ダイスケが勇者を王都から誘拐する! どうだ? 素晴らしい・・・・・・」
「馬鹿かぁ! 何でそんな危ない案ばかりなんだよ!? 勇者を誘拐して、どんな展開が・・・・・・」
「ダイスケ、よく考えてみたまえ? 勇者は日記によると、王都に親しい人はいない、そうだろ?」
「それはそうだが・・・・・・」
王都にミアが心を許せる人物は日記を見る限り、存在しない。
誘拐・・・・・・ミアを少し強引に連れて来て、ミラ達に再会させる事は出来るだろう。
でもその後は??
一時的に再会出来ても、意味はあるだろうが・・・・・・
「浅いんだよ、ダイスケ。話は最後まで聞きたまえ。そもそも勇者は何故王都にいなければならないんだ?」
そういえばそうだな。
何で王都にいなければならないんだ?
別に王都じゃなくても問題ない筈だ。
実際、ミアは村や街を周って人助けをしているが、王都をどうしても拠点にしなければならない理由もない。
いや、待てよ。
確か日記に、誓約が何とかって書いてたような気がする。
それによって故郷のマリスの村に、家族に会う事も出来ず、滅びるまで故郷に戻る事はなかったんだ。
もしかしたら、その誓約によって、王の命令がない限り、王都を離れられないとか、あり得るかもしれない。
「ジーク、不確かで申し訳ないが、日記に誓約って言葉が・・・・・・」
「あぁ、それで恐らくは、王都を拠点にしているのだろう。ダイスケが正解に辿り着くなんて珍しいね」
「正解? 可能性の1つだろ? 本当に誓約が関係しているか何てわからないじゃないか」
「いや、ほぼ間違いなく関係しているね。でなければおかしいだろ? ミラ達を想い心配し続ける勇者が何故、王の命令によってしか王都を離れなかったのか? ミラ達が追放されてからすぐ捜さなかったのか? おかしいと思わないかい?」
そう言われると、おかしいような気がする。
ミアはミラ達が追放されてから、寂しさと罪悪感で辛い日々を過ごしていた。
そして数年経ち、王都から各地への人助けをする事になり、捜し始めるが、
それまでに何故捜そうともしなかったんだ?
日記には心配はしていたが、捜している様な内容は一切書いていなかったから間違いない筈だ。
「誓約の内容は、王都を拠点として、命令された場所以外に訪れてはいけない、とかそんな感じだと思うよ。もっと複雑な可能性も充分考えられるけどね」
「確かに・・・・・・でも、結局誓約を何とかできないと連れ出す事は出来ないぞ?」
「勿論解決策は用意しているよ? まずはその誓約の正体をダントンかメアリー辺りに確認しないとはっきりとは断言できないが・・・・・・僕は誓約はある種の呪いだと考える」
誓約が呪いか・・・・・・確かに可能性としてはあるが、それをダントンさんとメアリーさんに確認して、呪いとわかった所で・・・・・・そうか!
「解呪だな! 誓約が呪いの一種なら解呪で無効できるって事か!」
「そういう事だよ。呪いなら無効化して、勇者を連れ出す事が出来て、ミラ達に会わせる事も、故郷に帰す事もできるようになるよ」
素晴らしい案だ!
誓約が呪いならって話だが、ミアをミラ達に再会させて、故郷にも顔を出す事が出来て、良い事だらけだ。
「ジーク、明日修練が終わり次第、ミラの家に行くぞ! 誓約が呪いとわかれば直ぐにでも・・・・・・」
「ダイスケ、余り焦り過ぎると大事な事を見落としてしまうよ? 王都に直ぐに行きたい気持ちはわかるが、大事な事を忘れてないかい?」
大事な事?
何か俺は見落としているか?
「勇者の日記の内容を踏まえると、743年6月~12月の間に幾つか滅びる村がある。それは理解しているよね? そして勇者はアーデル村に訪れていない・・・・・・つまり、アーデル村は、近々魔物の襲撃があって滅びる可能性が高いと思われる。それに、メアリーも先程言ってたじゃないか、ここ最近魔物の襲撃が増えたと。オマケにAランクの魔物。Aランクハンターのダントンとメアリー、そしてBランクのミランダを救った事により、定められた未来が変わる可能性も勿論あるが、確証はないよ? ならば後悔せぬよう、何か対策を考えておかないと駄目じゃないか?」
情けない、俺は何て未熟なんだ。
ミアを直ぐに孤独から救ってやれる手段に気をとられ、舞い上がり、冷静さを失っていた。
ジークが言った通り、ミアの日記を考慮すれば、アーデル村は魔物の襲撃によって滅びる可能性が高い。
Aランクハンターのダントンさんとメアリーさん、そしてBランクのミラを救った事により、襲撃があったとしても、未来が変わる可能性もあるが、食後にメアリーさんから聞いた情報を纏めると、厳しそうだ。
魔物の襲撃が増え、前回の襲撃でAランクの魔物によって重傷を負ったと、メアリーさんは言っていた。その事を踏まえると、厳しい可能性が高い。何の対策もたてなければ、せっかく救ったミラ達を死なせる事になるかもしれない。
「すまん、マヌケだった。そっちの調査もしっかりしとかないと駄目だな。手遅れになったら全てが水の泡だ。とりあえず、ダントンさんとメアリーさんに誓約の話と村を襲撃した魔物の話を詳しく聞いて状況を把握しよう」
「そうだね。話を聞いてどうするか判断しようか。王都に向かうのか、暫くアーデル村に残るのかを」
俺がいても魔物の襲撃を、Aランクの魔物を防ぎきれるかはわからない。
わからないが、襲われるってわかっている村を見捨てる事なんて絶対に出来ない。
全ての命を救えるとは思っていないが、救える可能性のある命は救いたい。
アーデル村だけじゃない。
滅びるであろう村や街も、俺達は把握しているじゃないか。
俺はハッピーエンドが好きなんだ。
だから・・・・・・出来る限り多くの命を救ってみせる。
「ダイスケ、気持ちはわかるが、難しい事だよ? 必ず何かは犠牲にしなければならない筈だ」
エスパーか。
難しい事はわかってる。
だが俺の答えは変わらない。
「ジーク、俺は頑固なんだ。だからやる前から諦める事は絶対しない。まぁ見てろよ!」
「ダイスケが言うと実現できそうだから怖いよ・・・・・・ふわぁ、そろそろ寝るとしようか? 明日から忙しくなる可能性もあるからね」
ジークの言う通り、ダントンさんとメアリーさんに、誓約が呪いなのか、魔物の状況はどうなのかを確認して、状況次第では、王都に出発と忙しくなるだろう。
余り眠くはないが、休める時にしっかり休んでおかないと身体が持たないからな。
「あぁ、そうだな。おやすみ」
「ふわぁ・・・・・・おやすみ」
俺とジークは明日に備え、眠りについた。




