34 ジークの悪巧み2
僕は今、並べられていた料理がなくなりかけてきたので、補充する為に、メアリーに抱っこされて、厨房に連れて来られている。
ダイスケが離れてる今、好機だな。
「メアリー、ミランダから話は聞いたかい?」
「話? ふふ、ジークが悪戯好きって事ならわかってるわよ?」
ふむ、しっかり話は伝わっているようだ。
ここはダイスケが驚く素敵な流れを作る為に協力してもらおうか。
「いいかい、まず僕がダイスケに・・・・・・そしたらダイスケが・・・・・・そうなったらメアリーが・・・・・・」
「はいはい、わかったわよ。精霊様」
計画は、僕が時を見計らい、ダイスケに囁く事から始まる。
ライラとメアリーにミランダの事を知っているのか訊ねないのかい? と。
おバカなダイスケは、メアリー達に僕の思惑通り訊ねるだろう、メアリーの腕輪はダイスケも確認しているだろうから、Aランクハンターだとわかっていると思うし、素直に訊ねる筈だ、うん。
次に、メアリーに知ってるかもしれないと答えてもらい、何か特徴がないのか? と聞いてもらう。
ダイスケは日記に書かれていたミランダの特徴をメアリーに伝えるだろう。
そしたら、特徴を聞いたメアリーが、ライラみたいな子? と聞く。
ここでダイスケが気付けば、見直してやるが・・・・・・まず気付かないだろう。
ダイスケは馬鹿だからね。
ライラを見て、ミランダの特徴を当てはめ、ミランダはライラに似ているんだろうなぁで終わる筈だ・・・・・・馬鹿だから。
最後はミランダの出番だ。
ミランダに自己紹介させる。
完璧だ!
特徴が当てはまっているのに、名が違うというだけで、ライラがミランダと気付かなかった愚かなダイスケは、一体どんな・・・・・・ぷふっ
あぁ、楽しみだ!
早くみたい!
「ほらジーク、悪い事考えてないで、料理を運びましょう」
「あぁ、そうだね!」
僕はワクワクしながら、席へと戻った。
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「ごちそうさまでした」
「僕は満足している。美味だった」
「ふふ、よかったのです」
「多めに作っといてよかったわ。ジークもダイスケ君もよく食べるわね」
大量に用意された料理を残さず平らげた俺達は、食後のお茶を啜りながら和やかに会話していた。
いやぁ、本当に美味かった。
メアリーさんの料理は勿論、ライラの料理も美味くて、将来旦那になる人は幸せだろう。
可愛いくて、優しくて、料理が美味い・・・・・・最高じゃないか。
羨ましすぎる。
そんな事を考えていると、ジークが耳元で俺にしか聞こえないように、囁いた。
「ダイスケ、メアリーもライラも高ランクのハンターだ。聞かなければならない事があるんじゃないか?」
流石は大精霊だ。
俺が忘れかけている事を察知し直様サポートしてくれる。
聞かなければならない事・・・・・・ミランダを・・・・・・両親を知っているかだ。
高ランクハンターならば、様々な街や村に訪れている可能性が高く、尚且つ、このアーデル村は勇者が訪れなかった場所だ。
ミランダ達がアーデル村に住んでいる可能性も非常に高い。
「メアリーさん、ライラ、聞きたい事があります」
「っ!? は、はい、な、なんなのですぅ?」
「いいわよ、何でも聞いてちょうだい」
何故かライラが慌てているが、まぁいい。
「このアーデル村・・・・・・もしくは何処か他の村や街で、ミランダという名の少女とその両親に会った事はありませんか?」
「ぷふっ」
ん? 何故か噴き出したジーク。
聞き方がおかしかったか?
簡潔にしたつもりだったんだが。
ライラを見ると、視線を彷徨わせ、落ち着きがなく、メアリーさんはニコリと微笑んでいる。
「ダイスケ君、ミランダって名の子ならよく知っているわ」
「っ!? ほ、本当ですか!? 何処に・・・・・・何処にいますか!?」
「あ、あぅ」
「ぷ、ぷふっ、ぷぷっ」
メアリーさんがミランダを知っている事に驚き、俺は勢いよく椅子から立ち上がり、メアリーさんに詰め寄る。
まさか、本当に知っているなんて・・・・・・可能性はあると思っていたが、こんなに早くミランダの手掛かりを見つけれそうだ。
これも、大精霊であるジークの知恵のおかげだ! ・・・・・・ってかジーク笑ってないか? 何でだ??
「ダイスケ君落ち着いて、名が同じだけの可能性もあるわ。何か特徴はないの?」
メアリーさんに言われた通りに、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせる。
そうだ、名が同じだけの可能性もあるんだ。まだメアリーさんが知っているミランダが俺達が捜すミランダと同一人物とは限らない。
ミランダの特徴はミアの日記で把握している。
「あっ、すいません。ミランダは、数年前まで王都に住んでいて、見た目は栗色の髪の目が大きな可愛い女の子で、年は17です。両親については何の情報はありません」
「は、はぅ、可愛い・・・・・・」
「ぷぷっ、は、腹がい、痛い」
「ダイスケ君、よく特徴を把握してるのね。ライラみたいな子って事かしら?」
ん? ライラみたいな子?
俺は不思議に思い、隣に座るライラを見る。
栗色の髪で目が大きくて、どう見ても可愛い美少女だ。
年は俺の1つ下だから・・・・・・17だな。
「はい、多分ライラによく似た子なんだと思います! それで・・・・・・」
「ぷふぅ、だ、駄目だ! マヌケすぎる! な、何故だ! 何故気付かないんだぁ、お、お腹がい、痛い」
「ジーク? さっきからどうした? これは大事な問題なんだぞ? わかってるのか?」
「も、もう駄目、ぷぷっ、ライラ、自己紹介をダイスケに・・・・・・ぷぷっ」
「えっ、あ、その・・・・・・」
自己紹介? ジークは何を言ってんだ?
ライラはライラだろ?
「ほら、自己紹介してあげなさい」
メアリーさんも、ライラに自己紹介させようとしている。
わけがわからない。
首を傾げ、隣のライラをじっと見ていると
「ダ、ダイスケ君、わ、私のな、名はミランダなのです」
「・・・・・・・・・・・・えっ?」
何だ? ライラは何を言ってるんだ?
ライラはライラでミランダじゃないだろ?
一体どういう事だ?
「ラ、ライラは家名な、なのです! わ、私は、ミ、ミランダなのです! ミ、ミランダ=ライラなのですぅ」
「・・・・・・・・・・・・はっ?」
カメイ?
カメイって何だ?
仮名か?
それとも家名?
ライラは仮名で本名はミランダ?
ライラは家名で名がミランダ?
数日間行動を共にしていたライラの名は仮名で・・・・・・いや違う、違う、きっと家名の方だ。
ライラは家名で名がミランダであって・・・・・・はっ?
「ふふ、ミラちゃん頑張ったわね」
「フハハハハァァァ! そ、そのマヌケな顔が見たかったんだぁぁ! メアリー、ミランダ見てみろ!? このマヌケな顔を! フハハハハァァァ! マヌケすぎるぅ」
「あ、あぅ」
「ふふふ、悪戯成功ね!」
落ち着け、結局どういう事だ? ライラは家名で名はミランダで・・・・・・特徴も同じで、メアリーさんもよく知っていて・・・・・・!
俺達が捜していたミランダはライラだったって事か!?
って事はダントンさんとメアリーさんが親何だから・・・・・・何て事だ!
「ライラがミラだったのか!? って事はダントンさんとメアリーさんがミラの両親だから俺達が捜していた家族はミラとその家族だから・・・・・・」
「あらあら、ミラだなんて。ふふふ」
「あ、あぅ、ミ、ミラ・・・・・・」
「フハハハハァァァ! ようやく気がついたのかい? 遅い! 遅過ぎる! 何てマヌケで馬鹿なんだ! フハハハハァァァ!!」
状況は理解できたが、不思議な事がある。
ジークだ。
さっきからちょいちょい笑って、俺を小馬鹿にしている感じだったが、今は爆笑して完全に俺を馬鹿にしている。
そして、ライラがミランダだったというのに驚いていない、ってか自己紹介しろって始めに言ったのジークだったよな?
そして、さっきから
何故気付かない? とか
ようやく気付いたかとか
マヌケとか
馬鹿とか・・・・・・
これらから推測すると・・・・・・こいつ知ってたな?
「なぁ、ジーク。聞きたい事があるんだ」
「フハハハァ、な、なんだい? おバカなダイスケ君? フハハハハァァァ!」
クソッ!ウザいがまだ我慢だ。
真相を、確認しなければ。
「ジーク、ライラがミラって事を知ってたよな? いつからだ?」
「フハハ! 勿論だよ? 僕は偉大なる大精霊だよ? いつから? ぷふっ、ダイスケがアホ顔で眠っている時だよ! おっと、いつもアホ顔で眠っているから答えになってないね、ぷふぅ」
「ま、また、ミ、ミラって呼んだのですぅ~、はぅ~」
「ふふふ、ミラちゃん、ちょっと落ち着きなさい」
殴りてぇ!!
俺の寝顔がアホ顔だと!?
しかも答えになってねぇ!
クソッ、ウザすぎる!
とにかく、落ち着こう。
ジークが知っていた事は確定した。
大事なのは、【いつ】ではなく何故隠していたかだ。
もしかしたら深い理由があるのかもしれない。
もしも、下らない理由だったらその時は・・・・・・
俺は、湧き上がる怒りを抑えて、ジークに警戒心を与えないように、満面の笑みを浮かべて、訊ねた。
「そうか! なぁジーク? 何で黙ってたんだ・・・・・・答えてくれるよな? ジークゥゥゥゥゥ?」
「フハハ・・・・・・ひっひぃぃぃぃぃ! メ、メアリー! ミランダ! た、助けてぇぇぇ! こ、殺されるぅぅぅ」
しまった、怒りのオーラが漏れ出てしまってたか。
ジークがびびってしまった。
この状態じゃあ何故隠していたか理由か聞き出せない・・・・・・困ったぞ
「こらこらダイスケ君、精霊とはいえ子供の悪戯よ? そんな怖い顔してたら駄目よ?」
「ミ、ミランダも何か言って! ぼ、僕を守って!」
「はっ! ダ、ダイスケ君落ち着くのです! 私も悪いのです! ジークにダイスケ君の驚く顔を見たくないかい? って言われて、その・・・・・・わ、私もちょっと見たかったから、協力したのです。だから許してあげてなのです」
ジークは俺の驚く顔が見たかっただけらしい。
まったく、ガキンチョめ!
はぁ、下らなさすぎて怒りが吹き飛んだ。
「ったく、理由がお子様なんだよ! 今回は許してやる」
「ふぅ、助かったぁ。感謝するよ、メアリー、ミランダ」
「仲良しが一番なのです」
「ふふふ、悪戯大成功ね」
何はともあれ、レムレールに来て数日でミラとその両親を見つける事が出来てよかった。
暫く雑談をしてから、帰路についた俺達は6つ目の鐘が鳴り終える頃、宿へと戻った。




