33 ジークの悪巧み1
「ミラちゃん、ダイスケ君ってどんな子? 実はね、今朝訓練場から戻ったダントンが・・・・・・」
メアリーは、今朝訓練場に向かったダントンがAランクハンターの青年を連れてきた事を話した。
その青年がダイスケと名乗っており、同一人物だとほぼ確信していたが、念の為に、ミランダに確認すると
「ダイスケ君は、髪と瞳が深い黒でとっても素敵で、眼つきは悪いけど、格好よくて・・・・・・でも笑うと子供みたいにとっても可愛いのです。背はお父さんと同じくらいで、とっても優しくてでも方向音痴で、食いしん坊さんで・・・・・・」
「ミラちゃん、ダイスケ君の事本当に大好きなのね。よくわかったわ。あの子がミラちゃんが恋をしているダイスケ君で間違いないわ」
うっとりとした表情でダイスケを語るミランダを見て、メアリーは同一人物だと確信した。
「あぅ、恥ずかしいのです」
「ふふ、恋をした女はそんな感じになるのよ? でもミラちゃんも男を見る目があるわよ? ダイスケ君とは少ししか話してないけど、とても礼儀正しくて、良い子だったわ。珍しくダントンも気に入ってたしね」
「お父さんとお母さんがもうダイスケ君に会っているなんて、びっくりなのです! ダイスケ君はとっても素敵なのです! お父さんが気に入るのも当然なのです! そう言えばお父さんは出掛けているのです?」
「ダントンはね、私達に傷を負わせたAランクの魔物【カースナイト】の様子を探りに、村のハンターを従えて出掛けているわ。多分今日は戻らないんじゃないかしら?」
ダントンは、重傷を負いながらも何とか撃退したAランクの魔物【カースナイト】の様子を探りに、アーデル湖へとハンター達を率いて向かっていた。
病み上がりで無理をするなとメアリーは忠告したが、問題ないと半ば強引に出掛けていった。
「心配なのです。それに皆でダイスケ君とジークにお礼を言いたかったのです」
「しょうがないわ。ダントンには私から話しておくから、明日でも大丈夫でしょう。さてと、ミラちゃん、そろそろ料理を作り始めましょうか。ダイスケ君もジークもたくさん食べるから満足させるのは大変よ?」
「ふふふ、ダイスケ君もジークも食いしん坊さんなのです。たくさん作って満足してもらうのです。頑張るのです」
4つ目の鐘が鳴る頃、メアリーとミランダは大食いのダイスケとジークを満足させる為に、料理を作り始めた。
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いてっ!
いててっ!
「いてぇぇぇぇぇ!!」
「っ!? ど、どうしたダイスケ!?」
「どうしたじゃねぇ! この馬鹿精霊がぁ! 俺は食い物じゃねぇ!」
気持ちよく昼寝をしていた俺は、頬に痛みを感じて、目を覚ました。
頬をみると・・・・・・ジークが俺の頬を噛んでいた。
寝呆けていただけだろうが、憎らしい。
俺が状況を説明すると
「ふわぁ、どうやら僕のお腹が悲鳴をあげているらしい。不可抗力だ。許して・・・・・・」
カーン
カーン
カーン
ジークが話してる最中に鐘が鳴った。
窓から外を眺めれば、美しい夕焼けがみえて・・・・・・ん?
日が落ちるの早すぎないか?
今4つ目の鐘が鳴った所だから、大体昼の3時の筈だし・・・・・・
「ふむ、時間も丁度だね。ダイスケ、早くミ・・・・・・ライラの家に行こう! あまり待たせるのもよくないからね」
「ジーク? 何を言ってるんだ? 時間は5つ目の鐘が鳴った時だろ? まだ4つ目だぞ?」
「ダイスケ、今のは5つ目の鐘だぞ? 4つ目の鐘が鳴った時に、ダイスケは「後5分」とか訳がわからない事を言って起きなかったじゃないか?」
はっ?
今鳴った鐘が5つ目だと?
俺が4つ目の鐘の時、起きなかっただと?
そんな馬鹿な!?
寝坊なんて・・・・・・いや、待て。
何か鐘が鳴って、一回起きたけど、もう少しだけ・・・・・・って思った記憶が僅かにある。
認めたくないが、俺は二度寝してしまった可能性が非常に高い。
だとしたら何て未熟・・・・・・はっ! そんな場合じゃない、反省は後回しだ!
今のが本当に5つ目の鐘なら、遅刻じゃないか! 早くライラの家に向かわないと!
「ジーク、行くぞ! 道案内頼むぞ!」
「やれやれ、騒がしい男だね。まぁお腹も空いたし早く行こう」
ジークを肩車して、俺は宿を飛び出し、ジークの指示に従い、ライラの家へと急いだ。
「ダイスケ、このまま真っ直ぐ進めば、ライラの家だよ。ほら見えてきた」
ジークの言葉を聞き、前方を見ると木造の家が見えてきた・・・・・・ってかダントンさんとメアリーさんの家じゃないか?
「あの家ってダントンさんとメアリーさんの家じゃないか?」
「っ!? ダ、ダイスケ、ライラの両親を知っているのかい?」
「はっ!? あの2人がライラの両親なのか!?」
「えっ? ・・・・・・そうだよ。メアリーを見ればわかるの思うんだが。ライラとそっくりじゃないか・・・・・・ダントンには全く似てないが。それで何故知っているんだい?」
確かにメアリーさんを見た時に誰かに似てると思ったが、ライラに似てたのか。
しかし、恐ろしい偶然だ。
ってかダントンさん病み上がりって死にかけてたんじゃねぇか!!
「朝修練してる時に、ダントンさんと手合わせして、その後に飯をご馳走になったんだよ。着いたぞ」
「・・・・・・大丈夫だ・・・・・・問題はない筈だ・・・・・・僕の・・・・完璧な筈・・・・・・」
ジークが小声でブツブツ言っているが聞き取れないので無視して、木造の扉をノックする。
コン
コン
「はぁ~い、開いてるわよ~」
「お邪魔します」
俺が扉を開けると、エプロン姿のメアリーさんが出迎えてくれた。
「いらっしゃい、ダイスケ君。まさかミ・・・・・・ライラと私達の命の恩人だとは思わなかったわ! 本当に感謝しているわ」
「いえ、気になさらないで下さい。人として当然の行動をとっただけですから。俺もダントンさんとメアリーさんがライラの両親って事に驚いてますよ」
メアリーさんと会話していると、パタパタと走る音が奥の扉から聞こえてきて、ギィィッと、扉が少し開かれる。
誰も出てこないので不思議に思っていると、エプロン姿のライラが顔を僅かに覗かせていた。
「あ、あの、ダ、ダイスケ君、い、いらっしゃいなの、です」
「あぁ、お邪魔してるぞ。それよりもどうした?顔が真っ赤だぞ?体調が悪いのか?なら無理せずに・・・・・・」
「ふふ、ダイスケ君、ライラは大丈夫よ! とりあえず料理を運ぶから座って待っててちょうだい。ところでジークはいるの?」
「ふむ、メアリー僕はここにいるよ」
隠蔽していたジークが、姿を現した。
俺からすれば何の変化もないが。
「ジークは私が抱っこするからこっち来なさい」
「やれやれ、可愛いって罪だね」
メアリーさんの様子を見る限り、ジークの話は本当らしい。
しかし、メアリーさんまでジークを可愛いとか、流石はライラの親という訳か。
椅子に座って待っていると、メアリーさんとライラが大量の料理を運んできてくれた。
軽く20人前はありそうだ。
肉料理や山盛りの野菜。
煮物にスープ。
美味そうな匂いが漂ってくる。
これは期待できそうだ。
今朝の料理も美味かったし、間違いないだろう。
「ふむ、匂いは一流だが、味はどうかな? 僕の舌を・・・・・・」
「もう、生意気で可愛いんだから! さぁ遠慮せずたくさん食べてね」
「遠慮など勿論しないよ、ところでメアリー、ダントンは何処だい?」
そう言えば、ライラの家に来てから、ダントンさんの姿がみてないな。
「あぁ、言い忘れてたわ。ダントンは村の外に出ているから、今日は恐らく戻ってこないわ。ダントンにはまた明日にでもお礼させるから・・・・・・」
「いえ、こんなに豪華な料理を用意してもらったんです。これ以上礼は不要です」
「ダントンがいないか・・・・・・まぁ計画に支障はない・・・・・・クククッ」
ジークが計画とか何とかいって気持ち悪く笑っているが、無視でいいだろう。
「ふふ、ダイスケ君は良い子ね。さぁ冷めないうちに食べましょう」
「はい、いただきます」
「さてまずは、唐揚げからだな・・・・・・ふむ、安定の美味さだな。こっちのスープは・・・・・・」
「ダ、ダイスケ君、この煮物私が作ったのです、よかったら食べてみてなのです」
「わかった・・・・・・うん、美味い! ライラは料理も出来るんだな」
「えへへ、よかったのです。あっ、この料理は・・・・・・」
和やかに会話をしながら、俺とジークは味も量も満足な料理を楽しんだ。




