28 似た者家族
「騒がしいな、ミラが帰ったのか?」
「あっ、お父さん。ただいまなのです」
「ダントン、見てこの子! 可愛いでしょ!」
僕が料理の完成を椅子に座って待っていると、奥の部屋から、身体の大きい筋肉質の熊みたいな男がやって来た。
話を聞く限り、ミランダの父上らしいが、あんまり似てない。
ダントンと言うらしい。
「おう、確かに可愛い坊主だ! メアリー? どこの子だ? よっと」
やれやれ・・・・・・ダントンも早速僕の可愛いさの虜になってしまったようだ。
僕を膝の上に乗せ、頭を撫でている。
中々いい力加減だ。
ミランダの母上の名はメアリーか。
「坊主、名は何て言うんだ?」
「そういえば僕、お名前何て言うの?」
そう言えば名乗ろうとして、名乗っていなかったね。
こんな可愛い僕がまさか精霊とは思わないだろう・・・・・・フフフ、驚く顔が目に浮かぶようだ。
僕は、ダントンの腕から抜け出し、近くにあった椅子によじ登り、腕を組み、声高らかに名乗りを上げる。
「僕は偉大なる大精霊ジーク! 神の使者だ!」
「「せ、精霊様!?」」
「そうなのです! ジークは精霊様なのです」
ふっ、ダントンとメアリーが僕が精霊だと知り、案の定驚いているね。
椅子の上から自慢気に驚いている2人を見上げると
「やん、可愛い! ジークこっちにおいで!」
「メアリー! 精霊様に何て口の聞き方だぁ! ジーク様、俺・・・・・・私が引き続き抱っこしましょう」
ふぅ、可愛いって罪だね。
しかし、このままだと食事がどんどん遠ざかってしまうな。
どうしたものかと悩んでいると、ミランダが僕をヒョイっと持ち上げ抱っこした。
「お父さんもお母さんも落ち着くのです! 料理が出来るまでは私が抱っこしてるのです」
「そんなミラちゃん、独り占めはずるいわよ!」
「そうだぞ! 俺はまだ少ししか抱っこしてないんだぞ!」
「とにかく早くご飯にするのです! お父さんもお母さんも、たくさん食べて体力を戻さないと駄目なのです」
「もう、頑固なんだから。誰に似たのかしら? ダントン手伝ってちょうだい」
「俺だって言いたいのか? わかったよ。食事が終わったら抱っこするからな!」
ミランダの一喝で、料理が再開されたようで一安心だ。
くんくん・・・・・・ふむ、中々いい匂いが漂ってくるじゃないか。
これは期待出来るかもしれないね。
僕はミランダに抱っこされながら料理が出来るのを涎を抑えて待ち続けた。
そして、遂に料理が完成したようで僕の目の前に次々の並べられていく。
「ジーク、これはお肉を油で揚げた唐揚げよ。こっちは野菜を使ったスープで、それから・・・・・・」
メアリーが僕に丁寧に料理の説明をしてくれるが、早く食べたい!
ぐぅ~
お腹が悲鳴を・・・・・・
「お母さん、説明はいいから食べるのです。お腹空いたのです」
「あらあら、私ったら、ごめんなさい。食べましょうか」
「あぁ、早く食って抱っこしたいからな!」
「ジーク、遠慮せずに食べるのです」
「勿論だよ。では頂くとしようか。まずはこの唐揚げから・・・・・・」
やっと僕は食事に辿りつけた。
食事は僕の舌を満足させる者ばかりでとても美味だった。
「中々美味だったよ。僕の舌を満足させるとはメアリーは料理のセンスがあるようだね。これからも満足する事なく精進したまえ」
「あぁ何て生意気で可愛いのかしら! 可愛い過ぎるわ! こっち来て」
「メアリー、精霊様だぞ!口の聞き方に気をつけろ! 次は俺だからな!」
「それは大丈夫なのです! ジークはそんな些細な事気にしないのです。ねっジーク? お父さんの次は私なのです」
「僕は偉大なる大精霊だよ? ミランダの言うとおり、言葉遣い等でうるさくは言わないさ」
食事を終え、満足した僕はご機嫌だ。
今はメアリーに抱っこされているが、次はダントン、そしてミランダ・・・・・・会話をしながら僕を抱っこする順番まで決めている。
やれやれ、困った家族だね。
「ジーク、それでどうやってミラちゃんと知り合ったの?」
「メアリーわかんねぇのか? ブルドラに遭遇して助かったって事を考えるとジーク様に助けてもらったんだろう? そうですよね?」
「ふむ、そうだよ」
僕とダイスケはミランダとその両親・・・・・・メアリーとダントンをレムレールに来てから、最初の目的にして捜していた。
勇者が心を許す数少ない大切な者達だからだ。
本来なら王都を追放された後は行方不明になり、勇者に二度と会う事はなかったが・・・・・・おそらく死んでしまったのだろう。
偶然助ける事が出来たミランダ、そしてミランダが雫を手に入れた事によって命が救われたメアリーとダントン。
つまり、僕達がミランダを助ける事が出来なければ、ミランダはブルドラに、両親は魔物に負わされた怪我が原因で死んでいたのだろう。
偶然が重なり、ミランダを救う事が出来て、その流れで両親を救う事が出来た。
運がよかったとしか言いようがないが、出だしとしては好調だろう。
まだレムレールに来て5日しか経っていないしね!
「はい! そうなのです! 私の命の恩人なのです! それで雫を持って村に帰ってこれたのです、お父さんとお母さんの命の恩人でもあるのです!」
「やっぱりそうなのね、ジーク、ミラちゃんを私達を助けてくれてありがとう・・・・・・ふふ、ダントン? 男だったけどいいの?」
「ジーク様! 俺の可愛い娘を、そして俺達が今こうして元気でいられるのはジーク様のおかげです! 感謝致します! ・・・・・・馬鹿言うなメアリー! 精霊様で命の恩人で尚且つ子供でこんなに可愛いんだぞ? いいに決まってるだろ?」
感謝されるのは悪くないものだね。
さてと、一応ミランダに説明したように、口止めとしておくか。
「さて、話は変わるんだが話しておくべき事がある。まず、僕は偉大なる大精霊だが普段は隠蔽してその存在を隠しているんだ。だから僕の事は他言しないように、いいね?」
「可愛いジークのお願いなら何でも聞いちゃうわ! わかったわ、他言しない事を約束するわ!」
「勿論です! 俺達凡人には理解できない考えをお持ちなのでしょう? 他言しない事を約束します!」
話が早くて助かるね。
これも僕の偉大さと可愛いさの賜物か。おバカなダイスケならこうはいかなかっただろうね。
次は目的を話しておくか。
ミランダ達を捜し出す目的はもう達成されて、わざわざ話す必要もない気がするが、ミランダには神の意思という事で説明しているし、この後どういった展開が待っているのか予測できない事もある。
念の為に話しておくとしようか。
「約束だよ? それで何故君達に僕の姿を隠蔽せずに現しているのか? それはね、今回ミランダを救い君達を救ったのは偶然が重なった結果だったのだが、元々僕達は君達を捜していたのだよ、神の意思によってね」
「えっ!? 神様の意思ですって!?」
「そんな!? 神様の意思で俺達を捜していた? ジーク様・・・・・・俺達は一体何をすれば・・・・・・」
「そういえばそうなのです。ジーク私達は何をすればいいのです?」
上手く説明出来て、例の如く疑いを持っていないようで安心したが、困った事になった。
これから何をすればいいか?・・・・・・考えてないしダイスケと話してないぞ!
むぅ、とりあえず適当に言って、後でダイスケとじっくり話してから伝える事にしよう。
「言ったろ? 神の意思だと。偉大なる大精霊の僕でもその聡明な考えは全て理解できないよ。ただね、必ず意味はある筈だよ? だから君達は、僕に新たな神の意思が届くまで、元気でいてくれたまえ!」
「私達にどういった意味があるのかわからないけれど、せっかく救ってもらった命、無駄にする気はないわ」
「おぅ、今回は不覚にも死にかけちまったが、同じ失敗は二度としねぇ! ジーク様、俺達は必ず然るべき時が来るまで生き延びてやります!」
「そうなのです! もっと強くなるのです! 勇者と・・・・・・ミアちゃんと必ず再会するのです!」
完璧すぎたようだ。
僕の思惑通り、事が進んでいるね。
一連の面倒な事を全部僕が引き受けたんだ、ダイスケからご褒美を貰わなければ割りに合わないね。
おっと、ミランダの口から勇者の名が出たね。
命があるなら必ず再会出来るだろう。勇者もミランダ達を捜しているからね。まぁその事を教えてあげる事は出来ない・・・・・・ふわぁ、眠くなってきた
「あらあら、ジーク? 眠いの? よかったら泊まっていってね。私達の恩人なんだから!」
「そうです! ジーク様、汚い所ですが是非泊まっていってください!」
「ふふ、ジーク、私と一緒に寝るのです」
宿に戻ってもダイスケは寝ているだろうし、お言葉に甘えるとしようか。
そう言えばダイスケの事を話すのを忘れてるね・・・・・・ふわぁ、眠いし明日起きてから・・・・・・話すと・・・・・・
「寝ちゃったみたいね? 可愛い寝顔だわぁ」
「そうだな、可愛い寝顔だ!」
「可愛いのですぅ」
翌朝ミランダの隣で目が醒めた僕は、美味しい朝食をご馳走になり、2つ目の鐘がなる頃、ミランダに宿へと送ってもらった。




