27 ジークの策略
ダイスケが眠りについて、時間を持て余していた僕は、最後の聖なるお菓子を食べ終わり絶望する。
もう食べる物がない。
精霊に食事は必要ない。
だが食事が出来ないわけじゃない。
勿論お腹だって空く。
食事に興味のない可哀想な精霊は空腹何て気にもならないのだろうけど、僕は違う。
食事に興味がある高貴な精霊なのだ。
ぐぅ~
お腹空いた。
このままではダイスケが起きるまで、何も食べる事が出来ないぞ。
ダイスケを無理矢理起こすか?
いや、それは最後の手段と考えた方がいい。
疲れ果てて眠っているダイスケを起こしてお腹が空いたから起こしたと言ってみろ?
短気なダイスケの事だ。
いつものように「このぉぉぉぉ馬鹿精霊がぁぁぁぁ!」と怒る可能性が非常に高い。
ぐぅ~
くっ、僕のお腹が悲鳴をあげている。
まさか、こんな難題にぶち当たるとは。
ダイスケの鉄拳を覚悟して、お腹を満たす事を選ぶか。
それとも、このまま空腹に耐えるか。
うぅ、鉄拳は嫌だ!
一体どうすれば
コンコン
ん? 何だ?
「ダイスケ君! 私なのです、いるのです?」
っ!?
ミランダだ! ミランダがいた!
ミランダに食事をお願いすれば、僕のお腹は満たされ、ダイスケに怒られる事もないぞ!
何て素晴らしい考えだ! 我ながら賢すぎるね。
そうと決まれば急がなければ!
僕は急いで扉へ向かい、扉をよじ登って鍵を開けた。
「あ、あのダイスケ君? ジーク? いるのです?」
「ここだよ」
「ジーク? ダイスケ君は?」
「そこにいるよ?」
僕は極めて冷静な態度を装う。
美味しい食事にありつく為には失敗は許されないのだ。
「ダイスケ君? 眠っているのです?」
「あぁ、ミランダと別れてから直ぐに宿に移動してね、着いた瞬間にそのまま寝てしまったよ。ダイスケにしては珍しく疲れたようだね。そんな事より両親は無事治ったかい?」
そう、ミランダの両親が回復したかが非常に大事になってくる。
ミランダの様子を見れば大丈夫そうだが、慎重にいかなければ。
「はいなのです! 元気になったのです !その事を伝えたかったのです !遅くなってごめんなさいなのです」
「それはよかったね。僕もダイスケも頑張った甲斐があったね。ダイスケもきっと喜んでくれるよ」
どうやら、無理をして急いだ甲斐があったようだ。
ダイスケの目的でもあるしね。
これで食事にありつける可能性が非常に高くなった・・・・・・うしし!
「はいなのです! 本当にありがとうなのです!」
「気にしなくていいのだよ? でもミランダがどうしてもと言うなら、頭を撫で撫でしてくれてもいいんだよ?」
「ふふっ、可愛いのです」
ふふ、完璧すぎる流れだ。
自分が恐ろしいよ。
僕の可愛いさを利用して、ミランダの警戒心を解き、そして同情を煽りタイミングを見て、食事を強請る!
両親が助かり、癒し系の僕が可愛いくお願いする・・・・・・断れる筈がない!
後はタイミングが大事だ。
とりあえずもう少し頭を撫でてもらってからにしよう。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・今だ!
「ミランダ、頼みがあるんだ」
「?? なんなのです?」
「ダイスケが眠ってしまい、僕はずっと放置されていた。そして精霊である僕は姿を見られるわけにはいかないから無闇に行動出来ないわけだ。つまり・・・・・・」
「ふふっ、ご飯を食べたいのです?」
優しく微笑むミランダを見て僕は確信する。
この勝負もらったぁぁ!うしし!
「流石だよミランダ。その通りだ。ダイスケが僕に何も与えずに眠りについたんだよ!」
「ジーク、6つ目の鐘が鳴った後なので宿のご飯はもう食べれないのです。だからジークさえよかったら家に来るのです? お礼がしたいのです、お父さんとお母さんにだったら姿を見せても問題ないのです?」
む?宿の食事の時間は終わってしまったのか・・・・・・料理が美味いって話を聞いたので楽しみにしていたのだが。
まぁ、ミランダの家で食事出来るなら問題ないね。
ダイスケと話して、特定の人物には僕の存在を隠さないとしてるし、ミランダの両親なら問題ないね。
ダイスケは・・・・・・寝かせておくか。
「ふむ、君の両親に姿を見せるのは問題ないし、名案だね。早く行こう。ダイスケは起こさず寝かせておこうか」
「わかったのです」
ミランダに抱っこされたまま、ご機嫌な僕は、ミランダの家で食事をする為、ダイスケを残して宿を後にした。
宿を出ると、辺りは真っ暗だった。
少しミランダの家までは時間が掛かるようなので、僕は魔法について確認しておく事にした。
「ねぇミランダ、魔法について教えてくれるかい?」
「魔法なのです? いいのです、何から知りたいのです?」
「ふむ、そうだね、ミランダが知る限りの魔法の知識を全て教えてくれないかい?」
「わかったのです! えっと、まず魔法は魔力が・・・・・・」
ミランダの話によると、魔法を使えるのは魔力があるものだけで、魔力がないと使えないらしい。
割合的に魔力を持っているのは10人に1人、その中でも魔力が僅かな者が殆どで初級の魔法を使える程度。
中級の魔法を扱える魔力を持つ者は1000人に1人。
上級の魔法を扱える魔力を持つ者は100000人に1人。
ちなみにミランダは中級の魔法を扱える程度の魔力を持っているらしい。
魔力は遺伝するらしく、両親が優れた魔力を持っていると莫大な魔力を持って生まれてくる可能性が高くなるとの事だ。
ただ、それが全てではなく、中には例外がいて、魔力を持たない両親から、莫大な魔力を持つ子供が生まれる例も過去にあったらしい。
次に、魔法の属性だが、基本的には4属性で成り立っているらしい。
火属性、水属性、土属性、風属性だ。
魔法を扱える者には適性属性が予め決められていて、基本的に1つの属性しか扱えないが、稀に複数の属性を扱える者もいるとの事。
基本属性以外にも、特殊な属性として光属性と闇属性が存在しているらしい。
光属性は神の祝福を受けし者・・・・・・つまり勇者だね! 後は聖女と呼ばれる人物も扱えるらしい。
闇属性は魔物が扱える属性で、人には扱えないと。
そして、強い魔法を使える者程、魔物との戦いで有利であり、重宝されるらしい。
ふむ、かなり情報が揃ったね。
ダイスケは恐らく魔法は使えない。
ステータスを見る限りでは魔法の才能はないからだ。
まぁ万能で偉大な精霊王様の力により、強力な精霊魔法を使えるから問題はなさそうだが・・・・・・そもそもダイスケに精霊魔法何て必要あるのか疑問が残る所だけど。
疑問と言えば、癒しの精霊魔法はともかく、雷属性の精霊魔法だ。
精霊王様・・・・・・扱えたかな? 僕は見た事がない。
疑問が残る所だが、確認しようがないから謎のままなんだけどね。
魔法の知識についてはこれで充分だろう。後でダイスケに教えてやろう。
そしてご褒美に聖なるお菓子を・・・・・・うしし!
「ジーク、着いたのです!」
おっと、いつの間にかミランダの家に着いたようだ。
やっと食事にありつけるわけだね。
「ただいまなのです!」
「ミラちゃん! いきなり飛び出して心配したのよ? あら? その子は?」
家に入るとミランダを大人にしたような女性が声を掛けてきた。
どうやらミランダの母上のようだね。そっくりだ。
さて、これから食事をご馳走になるのだし僕も礼儀として挨拶しとかなければね。
「やぁ、はじめまして。僕は偉大なる・・・・・・」
「か、可愛い! 僕、お名前何て言うの? ミラちゃん私が抱っこ代わるわ!」
「あ、お母さん!」
名乗る前に、僕の圧倒的な可愛いさでメロメロになってしまったようだ。
ミランダに抱っこされていた僕を優しく掴み、抱っこするミランダの母上。
ふむ、流石親子だね。
ミランダが初めて僕を見た時と反応がそっくりだ。
チヤホヤされて悪い気はしないが、僕のお腹は限界をむかえてい・・・・・・
ぐぅ〜
ほら、お腹が悲鳴をあげた。
「あら? 僕、お腹空いてるの? ちょっと待っててね! すぐ美味しいご飯を作ってあげるからね」
「話が早くて助かるよ。しかし、僕の舌は肥えていてね、僕を満足させる食事を用意する事ができるかな?」
「やん、生意気な所が可愛い! ミラちゃん手伝って!」
「えっと、わかったのです!」
長かった空腹の苦しみから解放される時が近いようだ。
うしし!




