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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
24/61

24 アーデル村へ急げ!

 

 完全に解れていない身体を強引に動かし、全力でアーデル村へと疾走する。

 ジークと話しをして、神の意思という天才的な理由が見つかり、安心して眠りについていた俺だったが、ジークに起こされ、事情を説明され、己の未熟さを痛感した。


 ライラが泣いていた


 わかっていた筈だ。


 出会ってからいつも元気で明るく、優しかったライラだが、本心では両親が心配で不安で仕方ないって事を。

 だからこそ、少しでも早くアーデル村に帰る為に、俺に同行を頼んだんだ。


 それなのに、俺はライラの言葉に甘え、抱える問題が解決したと安心して気が緩み、愚かにも休んでしまった。

 ジークとライラは体力的に問題があるのかもしれないが、俺はまだまだ平気だ。だからこそ、状況をしっかり把握しておけば、ジークとライラがある程度疲れが取れれば、すぐに出発するべきだったのだ。


 もし、ライラの両親が助からなかったら、俺の甘えのせいだ。クソッ!


 こんな調子だと、ミアを救うなんて出来っこない。


 定められた未来を俺とジークたった2人で変えなければいけないんだ。


 常に全力で油断せずに行動しなければ変えれる未来も変えれない。

 何て未熟で愚か・・・・・・いや、意味がない自己嫌悪はもうやめよう。


 今はやるべき事をやるだけだ。


 二度とライラを泣かせるものか!


 そして、不安を早く取り除く!


 今俺が出来る事はアーデル村へ全力で走り続けるだけだ。




 ジークが教えてくれた方向をひたすら真っ直ぐ進んで行く。

 魔物がいれば、殴り飛ばし、障害物があれば、力任せに破壊する。

 ジークも急いだ方がいいと分かっているのか、休憩を求めてこない。


 酔いやすいジークが、しんどくない筈がない・・・・・・ってか気を失ってないか?反応がなさすぎる。ちょっと心配だ。

 ライラはしっかり俺に掴まって、時々俺に、方向を教えてくれている。

 何度か目が合うが、どうやら俺の事を心配してくれているようで、不安そうな顔をしている。


 俺の事何てどうでもいいからそんな顔をしないでくれ。


 まだ大丈夫、心配するな! と言ってあげたいがそんな余裕はないので、大丈夫と意味を込めて、笑いかけるくらいしか出来ない。

 全力で走り続けて、どのくらいの時間が経ったかわからないが、日はとっくに昇り、昼過ぎくらいだと思われる。


 感覚的には10時間以上は走り続けていると思う。

 俺の体力はまだ大丈夫だが、少し危うくなってきた。


 休憩なしだと後数時間程で体力がなくなるだろう。どうやら俺も人間だったみたいである意味安心だが、早くライラを安心させてやりたいので、何とかもってほしい。


 そんな事を考えていると、反応がなかったジークから髪が引っ張られ、休憩の合図があったので、徐々に減速して、近くにあった綺麗な湖の湖畔で休憩を取る事にした。


「はぁ、はぁ、2人共大丈夫か?」


「・・・・・・はいなのです」


「・・・・・・」


 ライラも辛そうだ。

 殆ど同じ姿勢のまま10時間以上も高速で移動していたんだ。

 振動もあるだろうし、辛くて当然だと思う。

 ジークは・・・・・・反応がない。

 まさか・・・・・・


「うぇぇぇぇぇぇぇぇ」


「・・・・・・ライラ、浄化頼めるか?」


「は、はいなのです! ジーク大丈夫なのです? 無理させてごめんなさいなのです」


 後頭部から背中にかけて嘔吐物をかけられるのは2回目だが、ジークを責めようとは思わない。

 ジークが最も辛かった筈だ。

 昨日は数時間でへばっていたのに、10時間以上も耐えたんだ・・・・・・途中限界で意識を失ったみたいだが。


 ライラに浄化で綺麗にしてもらい、長時間頑張ったジークにキャンディを1個渡して、俺はその場で座り込み、息を整える。

 少しでも体力を回復させておかないと、ペースが落ちてアーデル村に着くのが遅くなってしまう。


「ふぅ、中々辛かったよ! まぁ暫く意識を失っていたようなんだが。ミ・・・・・・ライラ、村まで後どのくらいかわかるかい?」


「ここはアーデル湖なのです。村までは歩いて半日程度の所なので、もう少しなのです」


 ジークは俺の予想通り、意識を失っていたようだ。

 ライラによると、村まで後歩いて半日程度の距離という事は・・・・・・俺なら数時間程度の筈だ。

 数時間なら何とか体力もギリギリでだが、持ちそうだ。


「ジーク、ライラもう少し頑張れるか? 何とか体力が持ちそうだ。すぐにでも出発しよう」


「ふぅ、後一踏ん張りか。頑張ろうか」


「そんな!? もう少し休んでいいのです! 無理しなくてもいいのです」


「大丈夫だ! 早くライラの安心した顔が見たいからな。そうだろ? ジーク?」


「勿論だよ、ダイスケ」


「あ、あう、2人共・・・・・・ありがとうなのです」


 ライラに方角を教えてもらい、僅かな水分を取って、再びアーデル村へと走り出す。

 村に近付く程魔物が出現する頻度が上がってくる。

 殴り、蹴り飛ばし、難なく撃退するが、体力はジワジワと削られていく。

 若干だがスピードも落ちてきたような気がする。

 まずい、まだか?まだ着かないか?


 足が重い


 横っ腹が痛い


 そろそろやばい・・・・・・あれか!?


 日が暮れ始め、体力が尽きかけ、焦り始める俺の目の前に薄っすらだが、門のようなものが見え始める。


「ライラァ! あれがアーデル村か!?」


「そうなのです!!」


 声を張り上げライラに確認を取り、俺は最後の力を振り絞り、地を強く蹴り、スピードを上げる。



 ダァァァァァァァン!



「う、うわぁぁぁ! な、何者だぁ!? 魔物かぁ!」


 門番っぽい村人が俺達の姿をみて慌てている。

 それにしても魔物とは失礼な!

 怪しまれるのは仕方ないと思うが。

 門番を無視して、門を通り過ぎ、徐々に減速して、丁度村の広場の様な所で止まった俺はライラを優しく降ろす。

 ジークは既に隠蔽しているようだ。

 流石大精霊様。

 何とか村まで体力がもってくれてよかった。

 安心した俺は疲れて果てていた事もあり、その場でへたり込んだ。

 足がいう事をきかず、暫く動けそうにない。

 後はライラの両親が手遅れじゃない事を祈るだけだ。


「ライラ、早く行ってやれ!」


「で、でも・・・・・・」


「いいから早く行け!」


「っ! わ、わかったのです、ありがとうなのです、ダイスケ君」


 俺を心配してか、動こうとしないライラに少し声を荒げて、両親の元へと向かわせる。


「お、おい! 貴様、何者だぁ!」


「ん?」


 先程俺を魔物呼ばわりした門番が、人を集めて、俺を取り囲もうとしている。

 疲れて動けないし、揉め事は勘弁だなぁっと思っていると


「っ! 虹色の腕輪!? Aランクハンター!?」


 どうやら俺の虹色に光る腕輪を見て俺がAランクハンターだとわかったようだ。


「はぁ、はぁ、そうだ。とりあえず怪しい者じゃないから剣をしまってくれよ」


「あ、あぁ、わかった、剣を下げろ」


 ハンターってのは、信頼されているのだろうか?

 俺がハンターってわかった途端態度が軟化したようにみえる。

 それとも、Aランクだからか??

 まぁどうでもいいか。

 とりあえず今は休みたい。


「なぁ、この村に宿はあるか?」


「あぁ、そこの角を曲がった所にある。小さな宿だが飯が美味い」


「よっと。わかった、ありがとう」


 重い身体を持ち上げて立ち上がった俺は、広場の角を曲がり、【夕暮れの湖】という看板が出ている建物へと入った。



 カランカラン



「いらっしゃい! おや? ここらじゃ見ない顔だね? 泊まりかい?」


「あぁ、とりあえず2泊頼むよ。幾らだ?」


「あいよ、朝と晩の食事付きで銀貨8枚だよ」


 商売人っぽい受け付けのおばちゃんに金貨を渡し、銀貨2枚のお釣りと部屋の鍵を受け取る。


「部屋は階段を上がって、目の前の部屋だよ!」


「あぁ、ありがとう」


「食事は朝が1回目の鐘が鳴ってから2回目の鐘が鳴るまで、晩は5回目の鐘が鳴ってから6回目の鐘が鳴るまでの間だからね。遅れたら別途料金を貰うから注意しておくれよ!」


「わかった」


 食事の説明を聞き終えて、階段を上り、目の前の部屋を開けて、目に入ったベッドにうつ伏せに倒れこむ。


「ダイスケ? 大丈夫かい?」


「すまんジーク、少し眠らないとやばそうだ。もし何かあればすぐ起こしてくれ」


「わかったよ」


「あぁ・・・・・・頼ん・・・・・・」



 体力を使い果たした俺は、そのまま眠りについた。


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