24 アーデル村へ急げ!
完全に解れていない身体を強引に動かし、全力でアーデル村へと疾走する。
ジークと話しをして、神の意思という天才的な理由が見つかり、安心して眠りについていた俺だったが、ジークに起こされ、事情を説明され、己の未熟さを痛感した。
ライラが泣いていた
わかっていた筈だ。
出会ってからいつも元気で明るく、優しかったライラだが、本心では両親が心配で不安で仕方ないって事を。
だからこそ、少しでも早くアーデル村に帰る為に、俺に同行を頼んだんだ。
それなのに、俺はライラの言葉に甘え、抱える問題が解決したと安心して気が緩み、愚かにも休んでしまった。
ジークとライラは体力的に問題があるのかもしれないが、俺はまだまだ平気だ。だからこそ、状況をしっかり把握しておけば、ジークとライラがある程度疲れが取れれば、すぐに出発するべきだったのだ。
もし、ライラの両親が助からなかったら、俺の甘えのせいだ。クソッ!
こんな調子だと、ミアを救うなんて出来っこない。
定められた未来を俺とジークたった2人で変えなければいけないんだ。
常に全力で油断せずに行動しなければ変えれる未来も変えれない。
何て未熟で愚か・・・・・・いや、意味がない自己嫌悪はもうやめよう。
今はやるべき事をやるだけだ。
二度とライラを泣かせるものか!
そして、不安を早く取り除く!
今俺が出来る事はアーデル村へ全力で走り続けるだけだ。
ジークが教えてくれた方向をひたすら真っ直ぐ進んで行く。
魔物がいれば、殴り飛ばし、障害物があれば、力任せに破壊する。
ジークも急いだ方がいいと分かっているのか、休憩を求めてこない。
酔いやすいジークが、しんどくない筈がない・・・・・・ってか気を失ってないか?反応がなさすぎる。ちょっと心配だ。
ライラはしっかり俺に掴まって、時々俺に、方向を教えてくれている。
何度か目が合うが、どうやら俺の事を心配してくれているようで、不安そうな顔をしている。
俺の事何てどうでもいいからそんな顔をしないでくれ。
まだ大丈夫、心配するな! と言ってあげたいがそんな余裕はないので、大丈夫と意味を込めて、笑いかけるくらいしか出来ない。
全力で走り続けて、どのくらいの時間が経ったかわからないが、日はとっくに昇り、昼過ぎくらいだと思われる。
感覚的には10時間以上は走り続けていると思う。
俺の体力はまだ大丈夫だが、少し危うくなってきた。
休憩なしだと後数時間程で体力がなくなるだろう。どうやら俺も人間だったみたいである意味安心だが、早くライラを安心させてやりたいので、何とかもってほしい。
そんな事を考えていると、反応がなかったジークから髪が引っ張られ、休憩の合図があったので、徐々に減速して、近くにあった綺麗な湖の湖畔で休憩を取る事にした。
「はぁ、はぁ、2人共大丈夫か?」
「・・・・・・はいなのです」
「・・・・・・」
ライラも辛そうだ。
殆ど同じ姿勢のまま10時間以上も高速で移動していたんだ。
振動もあるだろうし、辛くて当然だと思う。
ジークは・・・・・・反応がない。
まさか・・・・・・
「うぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「・・・・・・ライラ、浄化頼めるか?」
「は、はいなのです! ジーク大丈夫なのです? 無理させてごめんなさいなのです」
後頭部から背中にかけて嘔吐物をかけられるのは2回目だが、ジークを責めようとは思わない。
ジークが最も辛かった筈だ。
昨日は数時間でへばっていたのに、10時間以上も耐えたんだ・・・・・・途中限界で意識を失ったみたいだが。
ライラに浄化で綺麗にしてもらい、長時間頑張ったジークにキャンディを1個渡して、俺はその場で座り込み、息を整える。
少しでも体力を回復させておかないと、ペースが落ちてアーデル村に着くのが遅くなってしまう。
「ふぅ、中々辛かったよ! まぁ暫く意識を失っていたようなんだが。ミ・・・・・・ライラ、村まで後どのくらいかわかるかい?」
「ここはアーデル湖なのです。村までは歩いて半日程度の所なので、もう少しなのです」
ジークは俺の予想通り、意識を失っていたようだ。
ライラによると、村まで後歩いて半日程度の距離という事は・・・・・・俺なら数時間程度の筈だ。
数時間なら何とか体力もギリギリでだが、持ちそうだ。
「ジーク、ライラもう少し頑張れるか? 何とか体力が持ちそうだ。すぐにでも出発しよう」
「ふぅ、後一踏ん張りか。頑張ろうか」
「そんな!? もう少し休んでいいのです! 無理しなくてもいいのです」
「大丈夫だ! 早くライラの安心した顔が見たいからな。そうだろ? ジーク?」
「勿論だよ、ダイスケ」
「あ、あう、2人共・・・・・・ありがとうなのです」
ライラに方角を教えてもらい、僅かな水分を取って、再びアーデル村へと走り出す。
村に近付く程魔物が出現する頻度が上がってくる。
殴り、蹴り飛ばし、難なく撃退するが、体力はジワジワと削られていく。
若干だがスピードも落ちてきたような気がする。
まずい、まだか?まだ着かないか?
足が重い
横っ腹が痛い
そろそろやばい・・・・・・あれか!?
日が暮れ始め、体力が尽きかけ、焦り始める俺の目の前に薄っすらだが、門のようなものが見え始める。
「ライラァ! あれがアーデル村か!?」
「そうなのです!!」
声を張り上げライラに確認を取り、俺は最後の力を振り絞り、地を強く蹴り、スピードを上げる。
ダァァァァァァァン!
「う、うわぁぁぁ! な、何者だぁ!? 魔物かぁ!」
門番っぽい村人が俺達の姿をみて慌てている。
それにしても魔物とは失礼な!
怪しまれるのは仕方ないと思うが。
門番を無視して、門を通り過ぎ、徐々に減速して、丁度村の広場の様な所で止まった俺はライラを優しく降ろす。
ジークは既に隠蔽しているようだ。
流石大精霊様。
何とか村まで体力がもってくれてよかった。
安心した俺は疲れて果てていた事もあり、その場でへたり込んだ。
足がいう事をきかず、暫く動けそうにない。
後はライラの両親が手遅れじゃない事を祈るだけだ。
「ライラ、早く行ってやれ!」
「で、でも・・・・・・」
「いいから早く行け!」
「っ! わ、わかったのです、ありがとうなのです、ダイスケ君」
俺を心配してか、動こうとしないライラに少し声を荒げて、両親の元へと向かわせる。
「お、おい! 貴様、何者だぁ!」
「ん?」
先程俺を魔物呼ばわりした門番が、人を集めて、俺を取り囲もうとしている。
疲れて動けないし、揉め事は勘弁だなぁっと思っていると
「っ! 虹色の腕輪!? Aランクハンター!?」
どうやら俺の虹色に光る腕輪を見て俺がAランクハンターだとわかったようだ。
「はぁ、はぁ、そうだ。とりあえず怪しい者じゃないから剣をしまってくれよ」
「あ、あぁ、わかった、剣を下げろ」
ハンターってのは、信頼されているのだろうか?
俺がハンターってわかった途端態度が軟化したようにみえる。
それとも、Aランクだからか??
まぁどうでもいいか。
とりあえず今は休みたい。
「なぁ、この村に宿はあるか?」
「あぁ、そこの角を曲がった所にある。小さな宿だが飯が美味い」
「よっと。わかった、ありがとう」
重い身体を持ち上げて立ち上がった俺は、広場の角を曲がり、【夕暮れの湖】という看板が出ている建物へと入った。
カランカラン
「いらっしゃい! おや? ここらじゃ見ない顔だね? 泊まりかい?」
「あぁ、とりあえず2泊頼むよ。幾らだ?」
「あいよ、朝と晩の食事付きで銀貨8枚だよ」
商売人っぽい受け付けのおばちゃんに金貨を渡し、銀貨2枚のお釣りと部屋の鍵を受け取る。
「部屋は階段を上がって、目の前の部屋だよ!」
「あぁ、ありがとう」
「食事は朝が1回目の鐘が鳴ってから2回目の鐘が鳴るまで、晩は5回目の鐘が鳴ってから6回目の鐘が鳴るまでの間だからね。遅れたら別途料金を貰うから注意しておくれよ!」
「わかった」
食事の説明を聞き終えて、階段を上り、目の前の部屋を開けて、目に入ったベッドにうつ伏せに倒れこむ。
「ダイスケ? 大丈夫かい?」
「すまんジーク、少し眠らないとやばそうだ。もし何かあればすぐ起こしてくれ」
「わかったよ」
「あぁ・・・・・・頼ん・・・・・・」
体力を使い果たした俺は、そのまま眠りについた。




