23 ジークのお手柄
ライラがミランダで僕達が捜していた少女・・・・・・信じられない話だ。
僕達がレムレールの743年6月のあの魔境の森に辿り着いたのは、予定外の事だった。
予定では後5年程前のレムレールに来る筈だったが、僕が慣れない力を制御しきれなかった結果だ。
更に、本来なら街へと向かっていたはずが、ダイスケの方向音痴のせいで街から遠く離れてしまったが、幸いにもその結果ライラの命を救う事が出来た。
僕の未熟さとダイスケの方向音痴さが無ければ救えなかった命。
予期せぬ事態が重なった結果救った少女が僕達が捜していた少女ミランダで行動を共にしている。
こんな事が・・・・・・
「あ、あの、ジーク?」
「はっ! すまないライラ・・・・・・いやミランダ。少し考え事をしていてね」
「いいのです。それで、何で私を・・・・・・お父さんとお母さんを捜しているのです?」
当然の疑問だね。
先程ダイスケと話しといてよかった。
まさか、僕が捜していた理由を説明する事になるとは思わなかったが
「ふむ、ミランダそれはね、我が主の命・・・・・・つまり、神の意思なのだよ」
「っ!? か、神様の意思なのです!?」
「そうだよ、精霊である僕と契約者であるダイスケは神の命に従っているわけだよ。詳しくは話せないが、これで納得してくれるかい?」
「勿論なのです! 神様の意思を否定するなんてしないのです」
ふぅ、何とか納得してもらえたようだ。
ミランダの言い草からして、僕達が想像しているよりも、レムレールでは神を信仰しているようだね。
という事は、精霊である僕も想像以上に・・・・・・うしし!
とりあえず、これで第一関門突破。
これからも人を捜したりだとか、助けたりだとかで、神の意思を理由にすれば、問題なさそうだ。
まぁ、精霊である僕がいるからこそ成り立つ理由だからね。
また僕の偉大さをダイスケが感じとる事だろう!
それに・・・・・・よくよく考えれば、お手柄じゃないか?
ダイスケより先にミランダの居場所を・・・・・・まぁライラがミランダだっただけなんだけど、把握したわけだ。
そして今アーデル村へと向かっている理由はライラの両親、つまりミランダの両親を救う為であって、僕達の目的でもあるわけだ。
うん、これは間違いなくお手柄だ。
仮面の失敗を完全に取り戻せただろう。
ライラがミランダだと教えてやったらダイスケは驚くかな?
いや、この僕でも驚いたんだ! 間違いなく驚くだろうね。
フフフ、ダイスケの驚く顔が目に浮かぶようだ・・・・・・フッ、フハハッ!
「フハハハハァァァ!」
「!? ジーク? どうしたのです??」
しまった。
興奮しすぎて、心の笑い声が出てしまったようだ。
気をつけなければ、僕もまだまだ未熟だね。
「驚かせてしまったね、ダイスケのあの生意気な顔が驚く様を想像してしまって、ついね」
「ふふふ、そんなに私がミランダで驚くのです?」
「きっと凄く驚くよ? そもそも何故、家名を名乗ったんだい?」
「それは、お父さんに、男性に名を名乗る時は家名だけ答えろって小さい頃から言われているのです」
「?? それは何故かわかるかい?」
「私にもよくわからないのです」
ふむ、家名の謎は解けないな。
何か理由があるのかもしれないが、まぁどうでもいいだろう。
「ミランダ、夜が明けたらダイスケをこき使って、なるべく早く、君の故郷へ向かうとしようか。容体が悪いのだろう?」
「ダイスケ君も精霊様の契約者と言っても人間なのです。あまり無理をさせては駄目なのです・・・・・・容体は、私が半月程前に村を出た時には、衰弱して立ち上がれない程だったのでよくないのです・・・・・・考えたくはないのですが、もしかしたらもう手遅れかもしれないのです」
まずいな。
半月前で既に危ない容体って事は手遅れの可能性もあるね、これは急いだ方が・・・ん? なんだ?
不思議に思い、上を見上げると、ミランダの瞳から涙が零れ落ちていた。
「ミランダ? 大丈夫かい?」
「ご、ごめんなさいなのです、だ、大丈夫なのです」
共に行動した数日間でそういった素振りは見せなかったが、本当は心配で不安で仕方なかったんだね。
僕が容体を聞いた事によって、感情を抑えきれなくなってしまったみたいだ。
もしかしたらもう手遅れかも知れないが、諦めずに最善を尽くすべきだね。
まぁ頑張るのはダイスケで僕じゃないけどね。
「ミランダ、予定を変更してすぐ出発する事にしようか・・・・・・ダイスケを起こそう」
「え、だ、駄目なのです! ダ、ダイスケ君、まだ少ししか眠ってないのです! 疲れているのです!」
「ダイスケなら問題ないよ・・・・・・多分」
もしダイスケが起きて話を聞いていたならば、すぐ出発しようとする筈だ。
ダイスケはお人好しだからね。
お人好しじゃなければ、何の得もないのに、全てを捨てて、命を賭けて、顔も知らない勇者の為に、異世界にわざわざ来たりしないしね。
何も考えてない馬鹿という可能性も否定できないけどね、ぷぷっ。
アホ顔で眠っているダイスケに足早に近付いた僕は、耳元に顔を近付けて精一杯叫んだ。
「起きろぉぉ! ダイスケェェェェ!」
「っ!? な、なんだ!? どうした!? 何かあったか!?」
あっさり起きたダイスケ。
しかも、起きた瞬間に立ち上がり周りを警戒していて、眠そうな素振りは一切みて取れない。
寝起きが悪くなくて助かったよ。
寝起きが悪くて暴れられたら、僕は今頃・・・・・・考えるだけでも恐ろしい。
さて、早く状況を説明しないとね。
「ダイスケ、予定を変更して今すぐ出発しよう。ミ・・・・・・ライラの両親の容体はかなり悪いらしい。ライラが不安で泣いているぞ?」
「なっ!? ライラァ! 大丈夫か?? ちょっと待ってろ、身体解したらすぐ出発してやるからな!」
「え、あ、あの、ダイスケ君」
僕の予想通り、文句も言わず出発の準備をするダイスケ。
単純な奴だ。
そうそう、ダイスケにはライラがミランダだって事はまだ教えない。
もっと時間に余裕がある時にダイスケの驚くアホ顔を見たいからね!
おっと、ミランダにも口止めをしとかないとね!
僕は状況が掴めず、困惑するミランダに近付いて、耳元で小さく囁く。
「ミランダ、ダイスケにはライラがミランダって事は黙っといてくれたまえ。然るべく時に僕から話すからさ?」
「あ、えっと、わかったのです」
よし、これで完璧だ!
いつダイスケを驚かしてやろうか考えるだけで楽しみだ! うしし!
「ジーク! ライラ! 準備出来た! 行くぞ!」
起きてから数分で準備を整えて、元気いっぱいなダイスケ。
僕が予想していた以上に準備も早く、元気なようだ。恐ろしい男だ。
「あ、あのダイスケ君、無理しなくても大丈夫なのです。しっかり睡眠を摂らないと疲れがとれないのです」
ミランダ・・・・・・甘いね。
まだダイスケの事がわかっていないようだ。
ダイスケは無理何てしていないのだよ。
普通の人間とは違うというか、多分人間じゃないのだよ。
「問題ない、すぐアーデル村に連れていってやるからな! だから泣くな。きっとライラの両親は助かるさ!」
ダイスケがミランダの涙を優しく拭い、頭を撫でて元気付けている。
「あ、あぅ、ダイスケ君」
ミランダは顔が真っ赤に染まり俯いている。
僕もミランダの件を伝えたらご褒美に頭を撫でて貰わないと。
「ジーク行くぞ! アーデル村はどっちだ?」
「よっと、地図で見た限りでは、あっちの方角で間違いないよ! 細かい方角は要所でライラに確認すればいいだろう。僕も気持ち悪いのを我慢するからダイスケは僕に気にせず全力で走ってくれて構わないよ」
僕がダイスケの肩によじ登り、顔を真っ赤に染めているが、泣き止んだミランダをダイスケが前に抱えて準備万端だ!
「わかったジーク。ライラもしっかり掴まっとけよ?全力出すからな! 休憩したい時は合図くれ! じゃあ行くぞ!」
ダァァァァァァァン!!
ダイスケが地を蹴り、アーデル村の方角へと走り出した。
「あががががががぁぁぁ」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
こうして僕等は夜が明ける前にアーデル村へと出発した。




