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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
22/61

22 神の意思

 


 肉を食べながらライラに地図を見せ、滅んでいる街や村がないか確認した所、ライラが知る範囲でだが、幸いな事に最近滅びた街や村はなかった。


 夜の見張りは、話し合いの結果、交代で行う事になり、前半は俺で後半がライラ。今は俺が見張りをしている為、ライラはスヤスヤと眠っている。


 さて、ジークもライラに抱っこされてアホ顔で寝てしまって暇なので、情報を整理しようと思う。

 ミアの日記とライラの情報を加味して地図を見れば、行くべき街や村は大分絞られる。


 王都から西の【水の街ルメラ】


 王都から南西の【モルグの村】


 王都から南南西の【アーデル村】


 王都から南南東の【辺境の街リンジャー】


 王都から東の【ドラハの村】


 5箇所まで絞られた。

 更に幸運な事に、リンジャーには、いつでも精霊陣の効果で戻って情報収集できるし、今向かっているのはアーデル村だ。これで実質残り3箇所になる。

 もしかしたらリンジャーかアーデル村にミラ達がいる可能性だってある。

 見つけたらとりあえず目標達成で、次の行動に移れる訳だが、今の段階でミラ達を見つけても大きな問題がある。

 何故捜しているのか、理由が説明できないからだ。

 昨晩ジークも言っていたが、不審がられてシラを切られる可能性だってある。

 勿論、意外に不審がられず、悩んでいたのが取り越し苦労だったって可能性もあるが、やっぱり納得のいく、捜していた理由があった方が安心だ。

 思いつくのは、ミアの名を出す事なんだが、これは難しい。

 精霊王様と交わした約束の1つを破ってしまう事になるかもしれないからだ。



【異世界から来た事を誰にも話してはいけない】



【時を遡った事を誰にも話してはいけない】



【レムレールに何が起こるか誰にも話してはいけない】



【勇者を救い、世界を救うという目的を誰にも話してはいけない】



【魔王は全て葬る事】



【矛盾した発言や行動をしない事】



【勇者の日記を誰にも見られてはいけない】


 約束は全部で7つ。


 異世界から来て時を遡った事を誰にも話さない、これらは問題ない。


 レムレールにこれから起こる事を誰にも話さない、これも今は問題ない。


 ミアを救って世界を救う目的を誰にも話さない、特に問題ない。


 魔王は全て葬る、これは何とも言えない。不安要素ではある。


 ミアの日記を誰にも見られてはいけない、これは問題ない、ジークのアイテムボックスに保管してるからだ。


 問題は、矛盾した発言や行動をしないって約束だ。




 俺はミアをよく知っているが、ミアは俺の事を知らない


 もし、ミアの名を出せば、ミアとミラ達が上手く再会出来たとしても、ミアが俺の事を知らないとミラ達が知れば、矛盾が生じる可能性が高い。

 何故会った事もない俺が、ミアがミラ達を捜索している事を知っていたのか? ってなると思う。


 そもそも、会った事もない俺が、ミアとミラ達が心許せる関係だと知っている筈がないのだ・・・・・・いや、風の噂でとか、人から聞いたとか適当な事を言えば大丈夫かもしれないが、賭けになるし危険すぎる。


 よって、ミアがミラ達を捜索しているだなんて、俺が知っている筈もない・・・・・・つまり、ミアを理由には出来ない、矛盾が生じてしまう可能性が高いから。

 じゃあ、精霊王様との約束を無視して全て正直に話せばどうか? とも一瞬考えたが、それもない。


 約束は守る為にするもんだ。


 守れない約束はしなければいい。


 そもそも、精霊王様に約束を必ず守るようにと言われているし、破れば何か不吉な事が起きる可能性もありそうだ。

 だから約束は絶対に守る事にする。




 そんな訳で、勇者とか関係なく、ある理由から、ミラ達を捜していた! その後で何とか勇者と再会させる! って流れにしたいが難しい。


 一体どうすれば


「ふわぁ、ダイスケ小腹が空いた。肉を焼いてくれたまえ」


 この馬鹿精霊が! こっちが悩んでるってのに、腹が減って起きやがって! ・・・・・・俺も腹減ったな。

 とりあえず悩んでも仕方ないから肉でも食うか。


「あぁ、待ってろ」


 考え過ぎて頭がパンク状態だった俺は小腹が空いた事もあり、気分転換にジークと夜食を食う事にした。



 晩飯の残りの肉を豪快に焼いて、木の枝に刺してジークに渡し、肉を食っていると



「難しい顔をしているね。何を悩んでいるんだい?」


「?? そんな難しい顔してたか?」


「もぐもぐ、してたよ。何か悩んでいるんだろう?もぐもぐ」


 意識はしてなかったが、顔に出てしまっていたらしい。

 まぁ、どうせ意見を聞こうと思っていたし、ジークに約束の事も含め、矛盾が出ない理由を考えていると告げる。


「ふむ、この問題はなるべく早く答えを出した方が後々楽になるだろうからね。勇者の名は出せない、ダイスケが顔も知らないミラ達を捜しているのは不自然・・・・・・尚且つ王都を追放されたミラ達のアストリア王国での扱いがわからないが、何か問題を抱えているのなら警戒される可能性も高いね。凡人のダイスケでは答えが出せないのはまぁ仕方ないね・・・・・・フフフ」


 腹が膨れて満足なのか、ご機嫌な様子のジークが不適に笑う。

 まさか、何か良い案があるとでも言うのか?


「その通りだよ! フハハハハァ!」


「馬鹿! 静かにしろ! ライラが起きちまうだろ!」


「はっ、僕とした事が。すまない」


 ジークが大声で笑い出し、疲れて眠っているライラを起こしてしまったんじゃないかと、焦ってライラの方向を見ると幸い起きていないようだった。

 とりあえず一安心だ。起こすのも悪いしライラが起きてしまうと話の続きが出来ないからな。


「気をつけろ! それで良い案って何だ??」


「僕だよ」


「はっ?」


「だから僕だよ」


 良い案が僕・・・・・・つまりジーク?

 どういう事だ?


「わからないかい? ダイスケ、僕は誰だったかな?」


「空間を司る大精霊ジークだろ?」


「そうだ。この世界で精霊の存在価値があるのは覚えているよね?」


「勿論だ! 神の使者だろ?」


 異世界レムレールに於いて、精霊の存在は希少で偉い存在なのはライラに確認済みだ。だからこそ、騒がれない様にと、ジークの存在を隠蔽していこうと決め・・・・・・


「ミラ達、いや、君が救おうとしている勇者の大切な人々に限っては、僕の存在を明かそうと思う! これで全ての問題が解決するよ。わかるかい?」


 ジークの存在・・・・・・つまり精霊の存在を特定の人達だけに明かす? それに一体何の意味があるって言うんだ?


「精霊は神の使者だろ?? つまり、ダイスケが顔も知らないミラ達や勇者の大切な人々を捜したり、守ろうとする行動は、全て神の意思という事にすればいい! 神から精霊である僕が命じられて、契約者であるダイスケと命に従い行動している・・・・・・といった感じだよ。どうだい? 素晴らしい案だろ?」


 ジークの言葉を聞き、俺は衝撃を受ける。

 何て素晴らしい案なんだ!

 精霊という存在を最大限活用して、全ては神の意思という事にして行動する。これなら精霊と契約している俺が顔も知らないミラ達を捜しても、神の意思って事にしてしまえば、全て解決だ! 矛盾が生じないと言うか、確かめようがないだろう。



「ジーク! 素晴らしすぎるぞ! 流石大精霊様だ!」


「ふむ、聖なるお菓子を2個でいいぞ? そのぐらいの対価は貰わないとね! フハハハハハァァ!」


 ぷぷっ。キャンディ2個でこんな全てが解決するようなアドバイスをくれるなんて、お得すぎる!

 ありがとうジーク!

 テンションが上がり思わず騒いでいると


「ふわぁ、2人共どうしたのです? とっても嬉しそうなのです」


 騒ぎすぎてライラを起こしてしまったようだ。眠そうに瞼を擦っている。


「すまん! ライラ、ちょっと悩み事が解決して騒いでしまった」


「全くダイスケはお子様だから困るよね。そんな事より早く対価を!」


「ふふ、楽しそうなのです。そろそろ交代の時間だし、気にしなくていいのです」


 相変わらず優しいライラ素晴らしい。

 ジークにキャンディ2個を渡して、俺は明日の為にライラと見張りを交代して眠る事にした。





 *********



「ジーク? 何を食べているのです?」


「フフフ、よくぞ聞いてくれたね。これは聖なるお菓子なのだよ! ダイスケが賢すぎる僕に感謝を籠めてくれた贈り物さ」


「聖なるお菓子? 聞いた事ないのです。美味しいのです?」


「非常に美味だよ。大精霊である僕を満足させるんだからね」


「ふふっ、可愛いのです」


 ダイスケがアホ顔で寝てる中、僕は寝ずにライラと見張りを行っているのには理由がある。

 聖なるお菓子を食べるという事も大事な理由だが、ライラに聞いておきたい事があるからだ。

 おバカなダイスケは頼りにならないから、賢い僕がサポートしてあげないと!

 可愛い僕の頭を撫でて可愛いがるライラに早速質問するとしようか。


「ライラ、聞きたい事があるんだが、いいかい?」


「聞きたい事? なんなのです?」


「僕とダイスケはある少女とその家族を捜していてね。家族の名は不明だが少女の名はミランダ。知らないかい?」


 僕が聞きたかったのは、ダイスケが捜索するミランダとその家族を知っているかどうかって事だ。

 アーデル村に住み、世界を渡り歩く高ランクハンターのライラに訊ねるのは当然だ。

 まぁ、勿論過度な期待はしていない。

 知っていたらラッキーだな程度だ。


「えっ! ミ、ミランダ!? ミランダって名だけでは何とも言えないのです。何か特徴とかないのです?」


 むっ!

 期待していなかったが手応えあり!

 ふむ、特徴は確か


「栗色の髪の毛で目が大きくて可愛い女の子で、数年前まで王都に住んでいて、年はダイスケと同じくらい? だったかな。僕が知っている特徴はこのくらいだ。心当たりはないかい?」


「っ!? え、え、あ、あの、あるのです」


 何て幸運なんだ!

 期待していなかったが、まさか心当たりがあるとは!

 フフフ、これはお手柄だぞ。

 聖なるお菓子2個・・・・・・いや3個は固い!


「よかったら詳しく話してくれないかい?」


「えっと・・・・・・その・・・・・・」


 む?ライラの様子がおかしい。

 酷く動揺している様に見える。

 まさか・・・・・・もう死んでいるのか?

 可能性としては有り得る事だ。

 もしそうならば残念な事だが、どちらにしろハッキリと確認しとかないと


「もしやミランダはもうこの世にはいないのかい?」


「っ!? 違うのです! ちゃんと生きているのです」


 予想が外れたようで一安心だ。

 ダイスケは勇者の大切な者、全てを救うつもりだからね。

 しかし・・・・・・ライラの様子からみて何か言いづらい理由があるようだね。


「ライラ、とても大切な事なんだ。何か事情があるのかも知れないが、知っているなら教えてくれないかい?」


「私なのです」


 ???

 私なのです?

 何を言っているんだ?


「何を言っているんだい? 君はライラだろ?」


「ライラは家名なのです。私の名はミランダ・・・・・・ミランダ=ライラなのです」


「えっ? ・・・・・・つまりライラがミランダで僕達が捜している少女って事かい?」


「多分そうなのです」


「何て事だ・・・・・・」


 僕は余りにも予想外の事態に驚き言葉を失ってしまった。


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