18 ハンターギルド
「美味い! 何の肉かわからんけど美味い!」
「ふむ、僕の舌を満足させるとは中々の肉だね」
「喜んでもらえてよかったのです! いっぱい食べるのです」
ライラに案内された店は、肉料理屋だった。わかりやすく言うと焼肉だ。
俺もジークも夢中になって肉を貪っていて、ライラは控えめに頬張っている。ちなみに、個室で物凄い快適だ。
ライラはジークの事も考えて個室がある店を選んだのだと思う。
個室じゃないとジークは姿を隠蔽しているわけだから、食事は出来ない。
正確には食べれるには食べれるんだが、食べ物が宙を浮いて消えるという謎の現象がおこるだろう。そんな現象が起これば目立ってしまうし、ないとは思うが精霊の存在を勘付かれる可能性もある。
でも個室なら問題なし。誰も見てないからジークも隠蔽をといて満足そうに肉を貪っている。途中で食べ過ぎると高くなりすぎるなぁ、と手を止めたのだが、ライラにお金ならたくさん稼いでいるから遠慮しないで好きなだけ食べてと言われたので、俺とジークだけで軽く10人前を平らげた。
大満足だ。腹がパンパンに膨れてもう食えない。どうでもいい話だが、俺はともかく、ジークのちっこい身体で何故こんなにも食えるのか謎だ。
「ふぃ~、食った食った。ライラご馳走様、美味かったよ」
「ダイスケの言う通りだよ。ライラ実に美味だった」
「どういたしましてなのです!」
爪楊枝で歯の隙間を弄りながら話すジークがおっさんのようだ。
ライラは食事中からずっとニコニコしていて今もニコニコしている。
「この後は用事あるか? ないならギルドで登録やら魔石を売りたいし、案内してもらえないか?」
「はいなのです! 旅路に必要な物は明日の出発前に揃えるので、ギルドに案内するのです」
食後に他愛のない話をしてから店を出て、俺達はギルドへと向かう。
食事代は多分高かったと思う。
ライラが金貨を数枚だしていたのがちらっと見えたんだ。俺の勝手な価値観だと数万円だ。稼げるようになったらお返ししないと・・・・・・何が喜んでもらえるだろうか?と思考しながら、ライラと共に歓楽街を抜けて、職人街へと向かう。ジークは俺の肩の上で寝ている。満腹になったから眠くなったんだろう。お子様すぎる。
「ダイスケ君着いたのです。ここがハンターギルドなのです」
職人街に入って数十秒で、ギルドに到着した。周りの建物に比べても数倍大きな木造の建物がギルドらしい。
看板には確かにハンターギルドと記されている。さぁ何が待ち受けているのか。定番のギルドならまず受付をしているのは可愛い女の子のはずだ。
そして、新参者だと荒くれ者達に舐められ絡まれる・・・・・・みたいなありきたりな展開が簡単に想像できる。
異世界にミアを救う為に来たわけで、楽しむ為に来たわけじゃないが、今までの所俺は楽しんでいる。俺自身もびっくりだ。元の世界で異世界を妄想したりとか、憧れていたとかそういったわけじゃないんだが、胸が高鳴りっぱなしだ。ワクワクしながら俺はギルドの大きな扉を開き中へと足を踏み入れた。
目に入ったのは大きな広間で、想像していた通り、いかにも腕には自信があるぜ!みたいな奴らが屯っていて、混雑している・・・・・・ってか汗臭い。
「うん、臭い以外は大体想像通りだ!」
「ダイスケ君何を言っているのです? 私はダイスケ君の魔石も含めて換金してくるのです。ダイスケ君はその間にハンター登録するのです! 登録は右手の受付なのです」
ライラに促され、俺は魔石をライラに預け、右手の受付へと向かう。
ハンター登録専用の受け付けなのだろう。他の受け付けに比べても明らかに空いている。
数分で俺の番になった。
「登録で間違いねぇか?」
「あぁ、間違いない」
「ならまず試験をする。なに簡単な事だ。この奥の扉を進むと試験官がいるからそいつと模擬戦闘してこい。終わって合格したらもう一度ここへ来な」
可愛い女の子の受け付けを想像していたが、眼帯をつけた髭がもじゃもじゃの海賊みたいなおっさんが受け付けをしていた。俺の想像したギルドがまた一歩遠のいていく・・・・・・はぁ、と溜息を吐いて、まぁそんなもんだよなと自分を納得させ海賊のおっさんの指示に従って、おっさんの後ろにある扉に入る。
「い、痛いよぉ、もうやめて!」
「軟弱者がぁ! 貴様にハンター等100年早いわっ! 出直してこい!」
丁度模擬戦闘が終わった所らしい。
試験を受けていた者が、ボロボロな状態で小走りで広間へと戻っていった。
不合格という事なのだろう。
「まったく、最近の若い奴は・・・・・・ん? 何だ? 貴様もハンターになりたいのか?」
「そうだ! だから試験をさっさと始めよう」
「ほぉ、自信があるようだな。いいだろう、そこにある武器を好きに使え! 準備が出来たらいつでもかかって来な」
目の前の試験官はハゲの大男だ。
俺よりも大きく筋肉が盛り上がり、薄手の布の服がパツンパツンだ。
元の世界だと、何もしていないのに通報されるレベルだ。どうみても、凶悪な犯罪者にしか見えないが、こういった者がハンターになるのだろう。
腕には赤に輝く腕輪・・・・・・Bランクだ
近くの壁に幾つかの種類の武器が立て掛けている。
剣、大剣、斧、槍、お馴染みの武器があるが、刃は潰されていて訓練用だとわかる。まぁ、俺には必要ないが。
俺の戦闘手段は素手での格闘術と、本気の時に使う、修練用の六尺棒を使った棒術だ。Bランクなら中々の実力はあるのだろうが、模擬戦闘だしな。
「武器はいらない、いつでも大丈夫だ」
「てめぇ! 舐めてんのか!!」
大男が顔を紅潮させ、怒鳴る。
舐めているわけじゃないんだが、素手で戦う奴は少ないのだろうか?
棒を使うか? いや、棒は今ジークの空間に収納してもらっている。取り出すのを見られるのはまずい。ってかジーク寝てるしな。
やっぱり素手でいくしかないようだ。
「舐めてるわけじゃない、だけど素手で充分だ」
「この餓鬼がっ! ボコボコにしてやるよ! かかってこい!」
試験開始って事で、俺は大男に向けて走り出す。大男の武器は巨大な斧だ。
斧は威力が高い強力な武器だが、懐に潜りこんでしまえば、長所を消せる。
まぁ斧だろうが剣だろうが、俺のやる事は変わらないんだけどな。相手の攻撃を避けて殴る!ただそれだけでいい。
全力で殴れば、Bランクのブルドラを一撃で殺す事が出来たので、手加減する事にする。模擬戦闘だし、人殺しにはなりたくないから、二割くらいの力でいくかね。
大男は俺の早さに驚きつつも、即座に斧を横に構え、力いっぱい薙ぎ払った。薙ぎ払いの速度も中々の速さで威力もありそうだ。
俺は、上には回避せずスライディングで斧を躱す。跳んでしまうと動きに制限がかかるし、地に足をつけていた方が不足の事態にも対処しやすいから、上には避けず、下に避ける事にした。
「なっ!!!」
大男もまさか、俺が下に避けるとは思わなかったのか、驚きの声をあげている。巨大な斧を薙ぎ払った後なので、無防備だ。懐に潜り込んだ俺は、大男の腹を二割くらいの力でぶん殴った。
ドンッッッ!
「っ!? がっ、がはぁ」
大男が膝を着き、斧を手放し腹を抑えている。手応えもあったし勝負有りだな。大男が落ち着くのを待ってやり、頃合いを見て声をかける。
「まだやるか??」
「ぐっ、い、いや、もう充分だ。合格だ」
「わかった! お疲れさん!」
無事に試験に合格したようだ。
後は手続きをすれば俺もハンターだ!
広間へと戻った俺は海賊のおっさんの元へ再び出向いた。
「合格って言って貰えたぞ? 手続き頼むよ!」
「その姿見りゃわかる。無傷とはな。アーロンも老いぼれたか」
さっきのハゲの大男はアーロンと言うらしい。ちなみに海賊のおっさんの腕輪も赤でBランクだ。ってかBランクで受け付けって何でだ?こんなおっさんの受け付けで誰が得をすると言うのか・・・・・・
「荒くれ者が多いからな。若い女だけには任せておけねぇんだよ。護衛も兼ねての臨時の仕事だ」
なっ! 何故俺の考えている事がわかった!? まさか、エスパーなのか?
驚いている俺をみて海賊のおっさんが笑みを浮かべている。
「ここに来た奴は皆同じ事を考えるって事だ。俺も駆け出しの頃は不思議に思ったからな。この腕輪をつけろ」
エスパーではなかったようで一安心だ。誰もが通る道らしい。エスパーなのはジークとライラで充分だしな。
海賊のおっさんに従い、左腕に腕輪を着ける。右腕だと利き腕だし、邪魔になったり壊したら困るしな。
腕輪を着けると、腕輪がぼんやりと輝き色が変わっていく。
白から青
青から黄
黄から緑
緑から赤
赤から虹へと変わって光がおさまる。
虹って確かAランクだったよな?
「なっ! 虹だと!?」
「綺麗な色だな! もうこれで終わりか? ハンターになったのか?」
「い、いや、後はこの登録申請書に必要事項を記載してくれ、ランクはAランクだ」
「あいよ」
手渡された申請書に、記載していく。
名前はダイスケだけでいいか。年齢は18で、戦闘手段は素手って書いておこう。出身地はボロが出たら困るから無視して、拠点も未定と。
「これでいいか?」
「ダイスケと言うのか、俺はギドだ。これからハンター仲間としてよろしくな! ギルドの規定については中央受け付で冊子が貰える。何か質問あるか?」
「うんや、今は大丈夫だ! じゃあ連れが待ってるから行くよ」
色々聞きたい事もあったが、入口近くで、ライラが壁に寄り掛かり暇そうにしてる姿が目に入ったのでまた次の機会にする。ライラを待たせてしまっているからな。
「待たせて悪いな、無事ハンターになれたよ。魔石はどうだった?」
「虹なのです! 流石ダイスケ君なのです! 魔石も問題なく換金出来たのです」
「よかった! これで一安心だ。とりあえずもう遅いし、宿に戻ろうか」
「はいなのです!」
時間も遅いので、ライラと共にギルドを出て宿へと戻った。
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ギルド内にある訓練場に眼帯をした男が、蹲っている男に声をかける。
「アーロン、大丈夫か??」
「大丈夫じゃねぇよ! 暫く飯が食えなさそうだ。ギド、あの生意気な黒髪の餓鬼のランクはどうだった?」
「虹だ、Aランクだな。Aランクスタートのハンターなんて例がない」
ギドの言葉を聞いたアーロンは痛む腹を抑え納得する。
Bランクのハンターの自分を手加減した素手での一撃で戦闘不能にしたのだ。明らかに格上の実力者だった。
「Aランクか、腕輪の仕組みはわからねぇが、納得だ。あの餓鬼、俺を手加減した素手での一撃でこんな状態にしたんだぜ? 信じられるか? あれは化け物だ。人間じゃねぇ」
「なっ!? 素手の一撃だと!? しかも手加減していただと? 頑丈が取り柄のアーロンをか!? それは化け物だな、だが・・・・・・」
自分よりも一回り以上年下の青年が、ハンターなら誰しも憧れるAランクだという事実に衝撃を受けるが、身体は疼き始めていた。
そんなギドの様子をみて、アーロンも痛む腹を抑えながら不適に笑う。
「くっくっ、考える事は同じだな。こんな身体が鈍る仕事さっさと終えて、魔物を狩りまくってやろう」
「そうだな、俺等も早くAランクにならねぇとな」
「俺の腹が治ってからな。あの化け物の名前は何て言うんだ?」
「ダイスケだ。年は18」
「18だと!? くそっ! 負けてらんねぇ」
「あぁ、俺は上に報告してくる。アーロンも来るか?」
「同行しよう。当事者が居た方が説得力があるだろう。Aランクスタートなんて例がない」
2人は訓練場を出て、ギルド長に今回の件を報告する。
それにより、ギルド長が慌てて本部に連絡を取り、ダイスケの名はギルド上層部で知られる事になったのだった。




