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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
17/61

17 辺境の街リンジャー

 

 ライラから聞いた話によると、アストリア王国最南端に位置する辺境の街リンジャーは、辺境とだけあって周辺に多くの魔物が棲息し、王国領土の中でも人々が住むには過酷な場所らしい。

 しかし、過酷な場所ながらもある理由から街の規模は大きく、賑わっているとの事だ。

 そんな辺境の街リンジャーに、日が暮れる頃、俺達はついに到着した。




「おぉ! 凄え! 何か想像してた感じと殆ど一緒だ!」



 門を抜けてまず目に入ったのは大きな広場だ。様々な露店が出ていて、旨そうな匂いがあちこちから漂ってくる。

 その広場からは三方向に大通りが広がっていて、各通りの入口付近に看板がたっている。

 西の通りを行くと歓楽街

 北の通りを行くと住宅街

 東の通りへ行くと職人街と書いてある。

 俺がいた世界と違い近代的ではない。

 ぱっと目に付いた建物は木造や石造りで二階建ての建物が多い。

 地面は舗装されてないし、街行く人々も、冒険物のゲームに出てくるような、中世とかそんなイメージが湧く格好している。


 うん、凄くいい!! 異世界って感じが凄くする! 俺が住んでた世界と全然違うが、田舎暮らしだった俺としては問題ないしな!


「ダイスケ君、まずは今日の宿を確保するので、西通りに行くのです」


 キョロキョロと挙動不審に街を観察していた俺にライラが話掛けてきた。

 いかん、夢中になってたな。


「あぁ、悪いな。じゃあ西通りに行こうか」


「ふふっ、初めて来た街で目を輝かせてるダイスケ君子供みたいなのです」


 姿を隠蔽しているジークが髪を引っ張ってやがる。ライラの意見に同意ってか? 生意気な、自分も子供のくせに。

 クスクスと楽しそうに笑うライラの横を歩き西の通り歓楽街へと向かった。








 歓楽街に入って数分歩いた所で目的の宿を見つける。【夕暮れの狼】という名前だ。ネーミングセンスが謎すぎて嫌な予感しかしないのだが、ライラが言うには王国全土にある【夕暮れ】のチェーン店らしく、値段もそこそこ、料理もそこそこでハンター御用達の宿らしい。

 まぁライラが言うならと、木製の扉を開き宿の中へと足を踏み入れる。

 目の前には受け付けらしき場所があって、左手側には幾つかの部屋と階段があり、右手側は食堂のようだ。


 多くの人が食事をしており混雑している。

 格好をみる限り、兵士やハンターが多いようだ。ちなみに豆知識だが、ハンターかどうかを見分ける方法がある。ハンターは必ず腕のどちらかに特殊な紋様が刻まれた腕輪をしているらしいのだ。


 そしてランクが上がると腕輪の色が変わっていくシステムらしい。


 ライラの腕輪は赤色だ。


 Fランクは白、Eランクは青、Dランクは黄、Cランクは緑、Bランクは赤、Aランクは虹、Sランクは黒となっている。


 何でも遥か昔から存在している腕輪らしく神からの贈り物とされている。どういった仕組みでハンターの実力を判断して色が変化していくかは、現在もはっきりと判明していないとの事だ。


 例えばCランクのハンターと対等の実力を持った奴がハンターになったとする。ギルドの試験にも当然通るが、腕輪をつけると色は緑ではなく、白からはじまる例もあったらしい。

 では必ず白から始まるのか? となるとそれも違い、始めから青や黄に変化するものも存在する。

 ちなみに腕輪を着けるのはハンターの義務であり、証であり、強制らしい。外す時は、ハンターを引退する時に、ギルドに行き特殊な方法で外してもらうとの事。

 まぁそんな不思議な腕輪だがハンターかハンターじゃないかを判断できる便利な代物だ。


 とりあえず宿の受け付けをしようと正面に進むが誰もいない。

 目の前の机の上に「御用のお方はこちらをどうぞ」と書かれた紙が置いてあり、小さな鐘のような物が置いてあったので、鳴らしてみる。


 チリーン


 チリーン


 チリーン


「はぁーい! いらっしゃいませ!」


 鐘を鳴らしてすぐ奥の扉から赤色の髪をした小さな女の子が出てきた。


「2部屋借りたいのです」


 ライラが、女の子にニコリと微笑み用件を伝える。

 女の子は少々お待ち下さい! と言い空き状況を調べている。小さいのにしっかりした子だ。何だか微笑ましい。


「申し訳ございません、今は2人用の1部屋しか空いてません」


 女の子がしょぼんとして頭を下げている。ライラも「あ、空いているのは、ふ、2人部屋なのですか?」と慌てている。


「ライラ1部屋しか空いてないなら俺は他の宿を探すからライラはここに泊まっていいぞ?」


 俺は空気を読んだ。

 こう言えば、ライラも泊まれるし女の子もせっかく来たお客を帰さずに済むし一石二鳥だ。

 まぁ他の宿の場所知らないから女の子に場所を教えてもらえば問題ないだろう。

 俺が女の子に手頃な宿を聞こうと口を開きかけた所で


「あ、あの、ダ、ダイスケ君が大丈夫だったら、2人部屋なのですけど、私は平気なので問題ないのです」


 ライラが予想外な提案をしてきた。

 俺としては問題ない・・・・・・よな?俺の不屈の精神力、忍耐力があればおかしな事は起きないと思う・・・・・・多分。

 異世界レムレールでは恋人でもない出会ったばかりの男と女が同じ部屋で過ごすのは普通の事なのか?

 ハンターだからこそそういった状況に慣れているのかもしれない。

 うーん、どうするかな。ライラが俺に気遣って無理してるなら申し訳ないし


「ライラ、俺を気遣って無理をしてないか?? 俺は別に泊まれるなら他の宿でも問題ないぞ?」


「む、無理なんてしてないのです! 大丈夫なのです! それに、暫く一緒に行動するのですから宿も同じ方が、べ、便利なのです!」


 ライラが手をパタパタと慌ただしく動かしながら、話してる最中、姿を消してるジークが俺の耳元で誰にも聞こえないような小声で囁いた。


「ダイスケ、肝心な事を忘れているよ。僕達は金銭を一切もっていないのだよ」


「あっ」


「ど、どうしたのです??」


 思わす間抜けな声を出してしまった。

 ライラが不思議そうに俺を見ている。

 そうだった。俺達は一文無しの貧乏人だった。


「気にしないでくれ。ライラお言葉に甘えさせてもらっていいか?」


 俺に選択肢等なかったのだ。もしここでライラが提案してくれなければ、街へ来たのに野宿になる所だった。

 どんな所でも寝れる特技を持つ俺だがやっぱり布団で寝た方が疲れもとれるし有難い。


「もちろんなのです! では1部屋お願いするのです」


「わかりました! 2階の203号室となります。一泊銀貨5枚となります」


 ライラが銀貨を払い、部屋の鍵を受け取る。後でライラに謝らなければ。俺が稼げるようになるまでは借りておくとしよう。


「お食事は別途料金がかかりますのでご注意下さい。それではごゆっくりどうぞ!」


 ライラが女の子の頭を撫でて「ありがとうなのです」と銅貨数枚を渡している。

 女の子も嬉しそうに「ありがとうございます」と笑顔だ。

 そんな様子に心を和ませつつ、俺とライラは部屋へと向かい、荷物を下ろし一息ついた。










「ライラ、すまん。俺金持ってないんだ。だから金を稼ぐまで宿代は待ってくれ」


「ふふっ、そんなのわかってるのです。それにお金なら魔境で手に入れた魔石をハンターギルドに売ればすぐ報酬が貰えるのです」


 なっ!? 何故俺が金を持っていない事に気付いた!? まさかライラもエスパーなのか? それとも、やっぱり俺がわかりやすいのか? 謎すぎる。

 しかし、俺とした事が魔石の存在忘れてたな。

 俺がぼっちで見張りをしている時に襲って来た狼と猪の身体から取り出した魔石が大量にある。ちなみにライラが教えてくれて判明したんだが、狼がDランクのブラッドウルフ。猪がCランクのギカントボアらしい。


 魔石がどのくらいになるかわからないが、宿代くらいにはなると思いたい。

 早くライラに返したいし、早速ギルドに行って売りに行こう! と決心した俺は立ち上がると、隠蔽を解いたらしいジークがライラの膝の上から


「ダイスケ、駄目だ! ギルドは後回しでまずは食事にしよう。僕は早く美味しい物を食べたい」


 なっ! またエスパーか! 俺は何も言ってないのに、恐ろしい奴だ。


「そうなのです! 美味しいご飯を食べるのです! ギルドは夜遅くまでやっているので、その後でも問題ないのです」


 まぁ、俺も腹減ったし、ライラがそう言うなら後回しでもいいか。


「あぁ、わかった! ならまずは飯を食いに行こうか!」


 宿を出た俺達は、ライラに先導され歓楽街の奥に歩き出した。







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