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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
16/61

16 ライラが望む事

 

 俺は全力で森を駆ける。


 行く手を遮る狼を殴り飛ばし、猪を蹴り飛ばし、街へと向かって疾走する。

 こまめに空高く跳び、街の方向を確認しているから方向を間違え心配もなしだ!

 落下しながら青の大樹を蹴り更に高く跳び、また落下している最中に手頃な大樹があれば蹴って跳ぶ。我ながら効率のいい移動だと思う。


 先程まで叫んでいたライラとジークは静かになった。

 ライラは俺にがっしり抱きついて小刻みに震えている。ジークは振り落とされないように、俺の髪の毛をがっつり掴み、痛い。つかハゲるからまじでやめろ!


 走り続けた俺は日が暮れる前に森を抜ける事に成功する。中々の速さだったと思う。我ながら頑張ったもんだ。

 昨日寝てない事もあり、少し疲れもあったので森を抜けた所で休憩する事にしてライラに声をかける。


「ライラ? 大丈夫か? とりあえず森を抜けたし休憩しよう」


 震えて俺の胸に顔を埋めていたライラが顔をあげると、顔は真っ赤に染まって涙目で何だかよくわからない表情をしていた。

 とりあえず顔が近くて俺も恥ずかしい。近くでみるとよくわかる。

 ライラは可愛い。美少女だ。髪の毛の長さも肩にかかる程度で俺好みだ。

 いつまでもこうしていたいが、女性経験のない未熟な俺の下半身が反応してしまいそうなので、優しくライラを地面に立たせてやる。

 後頭部にしがみついて震えるジークを引き離して、やっと一息つけると大きく息を吐き出していると


「ダ、ダイスケ君! そ、そこに、す、座るのです! 私は怒っているのです!」


「そ、そうだ! ダイスケ! そこに正座したまえ!!」


「えっ? 何で??」


 俺は怒り狂った二人に説教された。






 長かった説教も終わり、今は歩いて街へと移動している。

 ライラの話では日が暮れる頃には辺境の街リンジャーへと着けるらしい。

 全力で走り続けた事もあって少し前から定期的に腹が鳴っている。何か美味いもんがあるといいなぁ、と笑みを浮かべていると


「ダイスケ君! 何故笑っているのです? 本当に反省しているのです?」


「ふっ、どうせダイスケの事だ。美味い食べ物が町にないか考えていたのだろう。食いしん坊め」


 俺はどうやらまだ許されてないらしい

 エスパーがいるが、エスパーは無視。

 エスパーにだけは食いしん坊とは言われたくない。


「ライラ、さっきも言ったろ?? 悪かったよ。反省してるから機嫌直してくれよ?」


 ライラが怒っている理由は単純だ。

 俺が大して説明もせずに、抱き上げ、超スピードで移動した事で、恥ずかしいと同時に怖かったらしい。

 心の準備があれば全然違うから、きちんと説明してほしかったと。

 急いでいたから仕方なくないか? とはとても反論できる雰囲気ではなかったので、大人しく謝り続けたのだが、ライラの顔は恥ずかしさからか今も真っ赤に染まっている。


「そんな簡単に直らないのです!」


 頬を膨らませ俺を睨んでいるが、威圧感など感じず、可愛いだけだ。

 しかし、このまま機嫌悪いままはよくない。ライラはとても良い娘だし、救えてよかったと本当に思う。

 レムレールの事を色々教えてもらって感謝している。

 だが、街に着けばお別れだろう。

 ライラは故郷に、俺とジークは街で情報収集し、ミアの不幸を取り除き救ってやる為に動くつもりだ。


 こんな状態で別れるのも寂しいもんだし、せっかく出会えたんだから笑って別れたいもんだ。何か機嫌を直してくれる方法がないかと考えていると、ライラに抱っこされている、無視していたエスパーと目が合った


 エスパーはニヤリと笑うと、ライラから離れ、俺の肩の上に移動して、耳元で囁いた。


「ダイスケ、ライラの機嫌を直す方法がないか考えているね?? 精霊である僕に人間の感情を理解するのは難しいが、いい案があるよ。聞きたいかい?」


「本当か? 聞くだけ聞こう。どんな案だ?」


 俺はそんなわかりやすい人間なのか、ジークが鋭いのか。

 とにかく俺に案はないし、いい案があるなら是非聞きたい。


「ライラが望むお願いを、ダイスケが出来る限りで何でも聞いてあげるってのはどうだい?? これならライラが望む事もわかるし、機嫌もよくなる可能性が高いよ?」


 なるほど! 俺に出来る限りのお願いを聞くと。ライラとはまだ付き合いが浅いし望む事も俺には到底わからない。

 だがらこそ、ライラに提案してもらうわけだな! 素晴らしい案だ!


「エスパージーク! 流石だ! それでいこう! ライラ!」


「なんなのです?」


 俺たちの横でぼっーと歩いていたライラを呼び止め、提案する。相変わらず頬が膨らんでいる。


「俺は本当に反省してるんだ。だからその証として、ライラのお願いを俺が出来る限りだが何でも聞こう!」


「えっ?? 何でもなのです? 本当なのです??」


 動揺しているようだが、いい感触だ。

 これは機嫌が直りそうだ。ジーク、有難う。


「あぁ、俺が出来る事ならな! 何でも言ってくれ」


「す、少し考えさせてほしいのです!」


 そう言うライラの表情は緩んでいる。

 後は俺がお願いを聞けば機嫌も直りそうだ。そうこうしている内に、街が近付いてきた。

 遠く離れた空からみた時は、壁に囲まれた街なのか? くらいな感想を持たなかったのだが、実際目にすると思っていたよりも大きな街のようだ。

 街を囲む石壁は5メートル以上あり、巨大な街全てを囲っているのだろう。石壁の上には鎧を着た兵士っぽいのが見回りをしているようだ。


 俺達以外にも周りにはポツポツと人の姿が見えはじめた。

 商人っぽい格好をしてる人や、いかにもハンターですって格好の人もいる。

 おぉ、あれは馬車か?? 初めてみた! ちょっと感動だ! 街へと戻って行く人々は同じ方向に進んでいる。


 その先には門があって街の出入口みたいだ。門の前には門番らしき兵士が何人かいるが、人々はそのまま何事もなく門を通り抜けているようだし、街に入る為の税とかはなさそうでスムーズに町へと入れそうだ。

 さて、門が近付いてきたし、ジークを隠さないとな。


「ジーク、そろそろ隠蔽しろ」


「わかっているよ、もう失敗はしないよ」


「ダ、ダイスケ君、お願い決まったのです!」


 ジークの隠蔽が終わると同時にライラが声を掛けてきた。

 お願いが決まったようだ。俺に出来る事ならいいんだが。


「わかった、何をすればいいか教えてくれ」


「リンジャーから西に歩いて7日程かかる場所に私の故郷アーデル村があるのですが、アーデル村に同行してほしいのです」


 ライラの故郷に同行? ・・・・・・何故だ?

 同行するのは構わない。リンジャーで情報収集できないのは痛いが、アーデル村でも情報収集は出来るだろうし。


 ジークの力を使ってリンジャー周辺に精霊陣を設置すればいつでも戻ってこれるしな。

 だから同行はできる、ジークも髪を引っ張ったりしていないので問題ないと考えているようだ。同じ考えだろう。


 でもライラにどんな得があるんだ?


 考えても答えが出なさそうなので直接聞いてみる事にする。


「同行するのは問題ない。でも、ライラに何の得があるんだ?? 道中の魔物もよくわからないが魔境程の強さではないだろう?」


「さっきは怒っちゃいましたが、抱っこされて早く森を抜けれて感謝しているのです。遅くなりましたがありがとうなのです。それで、早く村に帰ってお父さんとお母さんを治してあげたいのです。だから、あの、また抱っこで運んでもらえると助かるのです」


 言いながらライラの顔はまた真っ赤に染まっている。

 あれそんなに恥ずかしいのか??

 でも、早く村に帰る為に恥ずかしさを我慢すると。

 両親が余程心配なんだな。雫を手にいれても間に合わなければ意味はないだろうし、手段を問わず急ぎたいのだろう。


 うん、問題ない。


「わかった、問題ない! 同行しよう! ジークも問題ないなら髪を引っ張ってくれ」


 クイッと髪が引っ張られる。問題ないようだ。


「ありがとうなのです! お礼に食事をご馳走するのです」


 ふぅ、機嫌がついに直ってくれたようだ。よかったぜ。うん。


「お言葉に甘えるよ、そうと決まればさっさと街へ入ろうか」


「はいなのです」


 こうして俺達は何の問題もなく門をくぐり、辺境の街リンジャーへと足を踏み入れた。







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