15 ジークとそっくり
俺は今、凶悪な魔物が蔓延る魔境メルドアの森で正座させられている。
「ダイスケ君、何度も言っているのです! 例え精霊様だろうと、ジークはまだ子供なのです。だから虐めたら駄目なのですよ」
「い、いやでもな? 見た目はこんなチンチクリンなジークだが、果てしなくウザ・・・・・・」
「ダイスケ君!」
「はい、ごめんなさい」
ライラに説教されているわけだ。
俺の横ではジークが笑いを堪えて、こちらを見ている。
こ、この野郎! また調子に乗りやがって! そんな余裕なジークにライラが
「ジークもあんまり人を馬鹿にしたら駄目なのです! 立派な精霊様になれないのです!」
「えっ? ラ、ライラ、何で僕まで? いいかい? そもそも僕・・・・・・」
「ジーク!」
「ごめんなさい」
ぷぷっ、怒られてやんの! ざまぁ!!
ジークが悔しそうにこっちを睨んでいる。
「二人ともわかったのです? わかったなら仲直りするのです」
「ジーク、悪かったな。反省しているよ」
「ダイスケ、悪かったね。僕もとても反省しているよ」
ライラの言葉に従いジークに嫌々だが誠意を込めずに謝る。
ジークの言葉にも誠意を感じられない。生意気な奴・・・・・・
「いい加減にするのです!」
「「は、はいっ!」」
ライラが大きな声を上げ、あまりの迫力に、ハモって返事をする俺とジーク
「もう! ダイスケ君はジークを虐めないと約束するのです。ジークはダイスケ君を馬鹿にしないと約束するのです。そしたら私もジークの事は黙っているのです。わかったのです?」
「「約束します」」
またしてもハモる俺とジーク。
怒っているのに顔は笑顔なんだ。
可愛いけど、めちゃくちゃ迫力があるんだぜ?
「ふふっ、よかったのです。私もジークの事は他言しないのです。約束するのです」
ニコニコしてジークの事を他言しないと、約束するライラ。
謎の迫力はなく、笑顔が可愛い。
まぁ、とにかく問題はあったが約束してくれたし、大丈夫だと思いたい。
俺とジークには失敗は許されないのだから・・・・・・
こうして仲直りして、当面の問題を解決した俺達は、街とは反対方向に森を進んでいる。
再び俺の方向音痴さを発揮してる訳ではなく、ライラの付き添いで。
ライラがソロで危険な魔境の森に来た理由は、世界樹の雫を手に入れる為であって、まだ手に入れてない訳で。
ブルドラクラスの魔物に襲われると危険だし、一緒に街に行く事にもなっているので付き添う事にした。
ジークを肩車し、他愛ない話をしながら世界樹へ向かっていて、ふと、そう言えば結局精霊の扱いはどうなんだ? と思う。ライラは精霊様と言っていたし驚いてた様子だったが・・・・・・うーん、よくわからんな。聞いてみるか。
「なぁライラ、結局精霊ってのはどういった扱いなんだ?」
「精霊様は神の使者として崇められている偉大な存在なのです。とっても偉いのです」
やっぱり偉いのか。ジークの考えで間違っていないようだ。でも、そうならおかしくないか?
「ふぅ、僕の考えていた通りだったね。しかし、疑問がある。ライラ? 君の僕に対しての態度に敬う感じがしないのだが?」
俺が考えていた疑問をジークが先にライラに投げつける。
そうなのだ、ライラがジークを精霊って知っても、あんまり接し方が変わってない、寧ろ説教してたしな。
「ジークは可愛いのです! 敬う気持ちも勿論あるのです。でも可愛いと思う気持ちが強いのです」
「ふむ、なるほど。確かに僕は偉大な大精霊でありながら、圧倒的な可愛いさも兼ねている。これからも存分に可愛いがってくれたまえ」
「ふふっ、生意気なのですよ」
それでいいのか大精霊・・・・・・
俺の肩からライラに抱っこされたジークは、頭を撫でられ満足そうな顔をしている。ってかよく考えたら何でライラはジークに触れる事ができるんだ?確か普通は無理だって言ってたぞ? 俺は例外らしいが。
「ジーク、何でライラはジークに触れれるんだ?普通無理なんだろ?」
「ん? そんなの僕がライラが触れるようにしてるに決まってるだろ。そうしないと可愛い僕をライラが可愛がられないだろ?」
ただの甘えん坊だった。
そんな甘えん坊の言葉を聞いたライラが嬉しそうにジークの頭を撫で続けている。そもそも、こいつ可愛いか? 俺からしたら生意気で憎たらしい顔をしているんだが。
俺が怪訝に思っていると
「ダイスケ君もジークを可愛いがってあげないと駄目なのです。こんなに可愛いのです。もっと仲良しになるのです」
「いや、そんなに可愛いか?? 生意気な顔をしてると思うんだが?」
ジークがムッと頬を膨らませているが無視だ。すると俺の言葉を聞いてか、ライラがクスクスと笑い、不思議に思った俺が「どうした?」と聞くと、ライラは衝撃的な言葉を発した。
「ダイスケ君とジークはそっくりなのですよ。ふふっ、初めてジークをみた時はダイスケ君の弟だと思ったのです。突然姿を現したのにはびっくりしたのですけど、何か事情があって隠れてたと思ったのです。だから精霊様だなんて考えてもいなかったのです」
な、なんだと!? 俺とジークが似ているだと?こんな生意気で憎たらしい顔をした奴と?馬鹿な!
「ふむ、やはりライラもそう思うかい? 実は僕も少し、ほんの少しだが似ているなと思っていたのだよ。まぁ圧倒的に僕の方が可愛いんだが」
本当に似ているのか? 俺はこんな生意気な顔をしているのか? だとしたら俺は・・・・・・
余りにショックで、俺は歩みを止め、その場で膝から崩れ落ちる。
「な、なんでそんなにショックを受けているんだ! 失礼だぞ、ダイスケ! 可愛い僕に似て喜ぶ所だぞ!」
「あぁ、そうだな。光栄です」
「くぅぅぅ! 心がこもってないぞ!」
「ふふっ、そっくりなのです」
世界樹に到着するまでに俺の心はやさぐれてしまった。
魔物に襲われる事もなく、無事世界樹に辿り着いた。
デカイ!!
しかも青くない!普通の大樹だ!
「ライラ? 何処に雫があるんだ??」
「緑の葉に紛れて、一枚だけ白い葉があるはずなのです、その葉から採れる雫なのです」
上を見上げて、世界樹の葉を目を細め観察してみる。
うーん、白なら目立つしすぐ見つかりそうだけど、そんな簡単に見つかるもん・・・・・・あっ、多分あれだ。
「ライラ、あれじゃないか??」
「えっと、はい! 間違いないのです! 後は容器に雫を採取すれば・・・・・・」
ライラは器用に世界樹の太い幹をよじ登り、白い葉の近くまで移動する。
そして、腰に下げたポーチから透明な瓶を取り出し、慎重に白い葉にあて、葉をゆっくりと傾ける。
すると、虹色の液体が瓶にほんの少し溜まった。
ライラはニコニコして、瓶に蓋をし丁寧にポーチに収納し、ゆっくりと大樹から降りてきた。
「もう大丈夫なのか? 量少なそうだったけど?」
「はい! 水で薄めて使用するらしいので問題ないのです」
水で薄めても効果があるって相当な優れもんのようだ。
確かに全回復しそうな名前だしな。
よくよく考えれば、世界樹の雫を必要としていたって事は誰かが危ない状態なんじゃないか?? 魔境にソロで来る程だ、ライラの大切な人なんだろう。
急いだ方がいいんじゃないか??
「ライラ、急がなくていいのか? 誰か危ない状態なんだろ?」
「はっ、そうなのです! 急ぐのです! お父さんとお母さんを助けるのです」
助けたいのは両親か・・・・・・良い娘だ。
よくよく考えれば、急がなければならない状況なのに、俺とジークのせいで余計な時間も使わせている・・・・・・よし! ここは俺の出番だな!
俺とジークのせいでロスした時間を取り返す為にも、全力を出すとしよう。
そうと決まれば行動あるのみだ。
俺はライラに近寄り
「前と後、どっちがいい?」
「えっ、どういう事なのです?」
「いいからどっちだ?」
「?? じゃあ前がいいのです」
俺は左手をライラの肩に回し、右手を膝の裏に当て、そのまま持ち上げ抱え込んだ。お姫様抱っこってやつだ。
後ろに背負った方が走りやすいんだが、ライラが前がいいというなら仕方ない。
「ふぇっ!? ダ、ダイスケ君!」
「しっかり掴まってろよ? ジークもな? 行くぞ!!」
俺の肩の上でうたた寝していたらしいジークが、なんだぁ? と寝呆けているが無視だ!急がなければ
ダァァァァン!
俺は地面を強く蹴り上げ、街へと向かって走り出した。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
「ひっ、ひぃぃぃぃ!」
ライラとジークの叫び声が魔境の森に響き渡った。




