12 ライラ
(私は・・・・・・生きてるのです?)
意識を取り戻した彼女は状況を把握できず、周りを見渡す。
彼女を死の間際まで追い込んだブルドラの姿はみえない。
すぐ近くに焚き火があり暖かく、焚き火の側には、焼けた肉が大きな葉に包まれている。
(どうなってるのです?)
「おう、気がついたか??」
不思議に思い首を傾げている彼女に背後から声がかけられる。
彼女は驚き身体がびくりと反応するも、咄嗟に近くにあった剣をとり、声がした方を向く。
「おいおい、そんな警戒すんな。身体は大丈夫か?? 痛みはあるか?」
「・・・・・・っ!!」
振り向いた彼女の視界には黒い髪に黒い瞳の青年がいた。
眼つきが鋭く、背丈は彼女よりも頭1つ分くらい大きい。
そんな青年を一目見た瞬間、彼女は強い衝撃を受け混乱していた。
(彼を一目見た瞬間に身体中を駆け巡った衝撃は・・・・・・何なのです?心臓が激しく波打ってるし、顔も熱いのです。上手く呼吸もできてないのです)
青年は動揺する彼女をみて、敵意がないようにか、両手を頭上に上げている。
(私の身体に何が・・・・・・何か悪い病気に・・・・・・それとも怪我でも・・・・・・怪我!?)
そこで彼女は気がついた。何故自分は剣を握れ、立ち上がれているのかと。
ブルドラによって右手はブレスの直撃で骨は粉々に折れ千切れかけ、身体中至る所に裂傷や打撲があり死にかけていた筈だ。それが先程まであった全身を走る痛みがなく、今は理解不能な動悸に、顔の紅潮。わからない事だらけで混乱している彼女に
「おい、大丈夫か? まだ痛いのか?」
黒髪の青年が心配して声を掛ける。
わからない事だらけで動揺は治まらない彼女だったが、心配してくれている青年に何とか言葉を返す。
「い、痛みはないのです。その・・・・・・何が起こっているのかよくわからないのです」
「ならよかった。状況がわからず混乱してるのか。えっとだな、まず青い竜みたいな魔物は俺が倒した、その後に君の怪我を治した。他に何か聞きたい事あるか?」
青年の言葉を聞き、意識を失う前に黒い髪をした誰かがいたのを思い出す。
(私がブルドラに殺されかけていた時に助けてくれたのはきっと彼なのです。怪我も治してもらって・・・・・・私ったらお礼も言ってないのです!!)
「ごめんなさいなのです! 気が動転してて、遅くなっちゃいましたが、命を助けてくれて有難うなのです!」
慌てて頭を下げて、お礼を言う彼女に
「あぁ、気にすんな! 俺が助けたくて勝手に助けただけだしな、礼なんて必要ないぞ」
青年は頭を掻きながら、二カッと笑う。その姿を見て、彼女の胸が更に高鳴る。
(眼つきは鋭いのに笑顔は無邪気な子供みたいで凄く素敵なのです。心臓が激しく脈打ってるのがわかるのです。私は一体どうしちゃったのですか? 生まれて17年、人生の大半を剣に捧げ肉体を精神を鍛えてきたけど、こんなのはじめてなのです)
彼女は大きく息を吸って心を落ち着ける。何度か繰り返す内に大分落ち着いてきたようだ。そして大切な事を思い出す。彼女が魔境メルドアの森にソロで来た理由・・・・・・世界樹の雫である。
「あの、世界樹の雫は全部使ったのです? 命を救ってもらっといて厚かましいのはわかっているのです。でも、もし残っているなら・・・・・・」
「ん? 世界樹の雫ってなんだ??」
青年が彼女の怪我を治してくれたとわかり、それに世界樹の雫を使用したと思った彼女だったが、会話が噛み合わず首を傾げる。
(惚けているのです? とりあえず質問に答えるのです)
「この奥に【世界樹】があるのです。そこで取れる雫の事なのです。雫にはとても強い癒しの力があって、どんな怪我や病気も治せると言われているのです。100年に1度、僅かな期間にしかとれない、それが世界樹の雫なのです」
「まじか!? そんな便利なもんが存在してたのか!」
(えっ!? 本当に世界樹の雫の存在を知らなかったのです? なら雫は使われていないのです? じゃあ私の怪我は・・・・・・)
「あの、雫を使ってないなら、どうやって私の怪我を治したのです?」
「さっき言わなかったっけ? 俺が治したんだ。魔法で」
青年の言葉を聞き、彼女は驚きを隠せない。
彼女が驚くのも無理はないだろう。
ただでさえ使い手が少ない回復魔法。そんな希少な魔法を使うばかりか、瀕死の重傷だった彼女を完全に治せる程強力な回復魔法を青年は使えるという事なのだから。
(凄いのです。きっと聖女様と同じくらいの回復魔法の使い手なのです。そう言えば名を聞いてないのです)
「あの、私・・・・・・ライラなのです。よかったら名を教えてほしいのです」
「名乗ってなかったな、俺はダイスケだ。よろしく、ライラ」
「あ、よろしく、ダ、ダイスケ君」
「あぁ、腹減らないか?いい肉が手に入ったから飯にしよう」
「は、はいなのです! お腹すいたのです。えへへなのです」
これが本来ブルドラにより命を落とす筈だった彼女と異世界から来た青年の出会いで新たな未来へと向かう流れの始まりだった。
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意識を戻した女の子は、特に身体に異常もなそうで本当によかった。
名前はライラ。
栗色の髪と瞳の女の子だ。
顔も目がくりっとして大きく可愛い。
背も160くらいあるかないかで、とても戦えるようには見えないが、俺はかなりの実力者とみている。
身の丈に合わぬ大剣を片手で持ち上げ、会話をしながらも隙を中々みせない・・・・・・いや、襲おうとか思ってないよ?
とにかく腕が立つのは間違いないと思う。よって先程殴り殺した青い竜はライラよりも強かったわけで、という事はかなり強い魔物だったって事だ。そんな上位の魔物も問題なく倒せたわけだから、このレムレールの世界である程度やっていける自信が出た。
ライラはさっき俺が焼いた青い竜の肉を美味しそうに食べている。
いやぁ、食料に余裕がないから正直助かった。食えるかどうかわざわざ解析使ったからなぁ。
鳥肉みたいな味で調味料なしでも普通に食えるくらい美味かった。
あ、忘れてたが、ジークは今姿を消している。
まぁ俺の肩の上にいるんだけどね。
ライラには視えないようにしているらしい。そのため喋る事もできず、肉を食べる事もできず、不満そうに俺の髪を引っ張ってくる。
まぁしょーがない事だ、諦めろジーク、俺がジークの分も肉を食ってやるから・・・・・・いてっ、いてて、本気で引っ張るな! ハゲる!
「こんな美味しいお肉はじめてなのです! 何のお肉なのです?」
「これはさっきの青い竜の肉、まだまだあるから好きなだけ食えよ」
「えっ? 青い竜ってブルドラの事なのです?」
ブルドラ??あの青い竜の名前か。
しかし、安易な名前じゃないか?青い竜なだけにブルードラゴンを略してブルドラ! ってか。
違うかもしれんけど、多分そうだろう
名前つけた奴も適当につけたんだろうな、まぁ魔物に本気で名前考えるのもおかしい気がするが。
「おう、見た目はまずそうだったが美味いだろ?」
「はい! 凄く美味しいのです! それにしてもBランクの魔物を1人で倒すなんて、ダイスケ君はハンターじゃないのです?」
ハンター?? 何だっけか?
ミアの日記にちょろっと出てきたような気がする。
まぁ名前からして想像はできるけどな
おそらく魔物を狩って生活してる冒険者みたいなもんだろう。
異世界ではよくあるギルド的なもんもあるのだろうか?
「いや、ハンターじゃない。ライラはハンターなのか??」
「やっぱり・・・・・・あっ、えっと、ブルドラを倒す実力があるなら高ランクのハンターしかあり得ないのです、それでダイスケ君の名前聞いた事なかったのです。私はハンターなのです! 最近Bランクハンターになったのです!」
胸を張り、得意気な顔をしているライラだが、俺は視線をライラからスッと外した。
あまり意識しないようにしていたが、ライラの胸はかなり破壊力がある。
少し動くと、それはもう揺れている。正直ずっと眺めていたいが、女性はその手の視線に敏感だという話をじいちゃんから聞かされている。
ただでさえ不気味な森の中で2人っきりだ(ジークも一応いるが)
俺にそういう気はないが勘違いされて警戒されても面倒臭いしな。
よって俺は極力ライラを視線から外すようにする。
俺は紳士で誠実な童貞なのだ。
さてと、Bランクは多分高ランクだろう。ステータスの能力でいう所の熟練者レベルだ。だから多分高ランクだと思うが、一応聞いてみるか。この世界の事を少しでも知るいい機会だ。
「俺はちょっとした訳ありで、常識に疎くてな、ハンターの事・・・・・・いやよかったら世界の事色々教えてくれないか?」
「ハンターを知らないのです!? あっ、ごめんなさいなのです。馬鹿にしたわけじゃないのです! 私がわかる範囲でなら大丈夫なのです。まずハンターというのは・・・・・・」
不機嫌なジークを放置して、夜遅くまで俺はライラによって異世界レムレールの事を色々教えてもらう事が出来た。




