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勇者が望んだ救世主  作者: サスケ
11/61

11 魔境メルドアの森

 


「もう、うっとしいのです」


 斬っても斬っても次々襲ってくる魔物の群れに苛々しながら、不気味な色の大樹に囲まれた【メルドアの森】を進んで行く。


 この森はCランク以上の魔物が数多く存在する危険な森であり、魔境の1つとしても数えられる場所であった。


 そんな場所に1人で立ち入る等、自殺行為と森を知る者なら答えるだろう。

 しかし、それはBランクハンターだと話は変わってくる。


 魔物を狩り生活する勇敢な者達をハンターと呼ぶ。

 常に死と隣合わせであり、常人ではとてもやっていけぬ危険な仕事だが、世界が魔物に脅かされている現在では人気の職業となっている。

 そんな数多く存在するハンター達の中でもBランク以上のハンターは実力的にも申し分なく、Cランクの魔物が襲いかかってきても単体で撃破できる実力を持っている。


 先程から彼女に襲いかかるDランクの魔物ブラッドウルフの群れなど彼女の敵ではないのだ。


 彼女の目的は、メルドア大森林奥深くにある世界樹から取れる雫を入手する事だった。100年に1度、世界樹から湧き出る雫は、あらゆる怪我や病気を治す癒しの雫らしく、丁度今年が100年目であった。



「そろそろ危ないのです」


 ブラッドウルフの群れ等敵ではなかったがCランクのギガントボアが何度も現れ始め少しずつ傷が増え、体力がなくなっていくのがわかる。

 回復薬も残り僅か、最深部までは後少し。僅かな水分を補給しながら天を仰ぐと、日が落ちそうだ。暗闇が支配すればもう駄目かもしれない。

 一刻も早く世界樹まで辿り着かなければと、疲れ切った身体に鞭をうつ。

 魔物が現れては斬り伏せ、少し歩いて魔物が現れ斬る。何度か繰り返した所で世界樹が見えてきた。


 後少し。


 重い足を動かそうとしたその時




【グガァァァァァァァァァァァッ】




「嘘!? ブルドラ!?」


 Bランクの魔物である森の主であるブルドラが雄叫びをあげながら空から凄まじい速さで下降してくる。

 森の主であるブルドラは、鉄をも引き裂く鋭い爪に強力なブレスを吐き出す恐ろしい魔物だ。

 出会ってしまえば運が悪かったと諦めるしかない。

 それはBランクの彼女とて例外ではなかった。

 万全の状態でも勝つ事は難しい強敵だ。今は疲れ切っている上に、回復薬もあと僅か。万全ではない。

 最深部まで辿り着き、雫を入手する。ついでに彼女自身も雫を頂戴して体力、魔力を回復させる予定だったのだ。

 ここで引き返すとなると、間違いなく森を抜ける前に体力が尽き、暗闇に包まれるだろう。


 そもそも見逃してくれるか?


 答えは否だ。


 戦い、倒すしか彼女には生きる道はなかった。


 ブルドラの空からの攻撃を紙一重で身体を投げ出して避ける。



「こおぉぉぉのぉぉぁぁぁぁぁぁっ!!!!」



 自らを鼓舞するように、叫びながらブルドラに斬りかかる。


 狙いは足と翼だ。


 俊敏な動きと、空中からの攻撃を避ける為に放った凄まじい剣速による連撃は、ブルドラの足と翼に確かなダメージを与えたようだ。




「ガァァァァァァァァァァァ」


 ブルドラが突進して爪を振り下ろしてくるが先程よりは俊敏さがない。


 何とか避けて胴体を斬る。


 我武者羅に何度も何度も斬りかかりブルドラの動きも大分鈍ってきたが、自身もダメージを何度か受け、その度に僅かに残った回復薬を使い誤魔化してきたが、回復薬が底を尽き、数分が経つ頃には満身創痍な彼女の姿があった。もう後がない彼女に、ブルドラが突進しながらブレスを吐き出した。


 何とか避けようとしたが右手が巻き込まれ、後方に激しく吹き飛ばされる。



「あぁぁっっっ!」



 経験した事のない痛みに、叫び声をあげながら膝をつく。

 右手はブレスの直撃によって、骨が砕け、肘から先が千切れかかっていてピクリとも動かない。


 もう剣を握る事は出来ないだろう。


 ブルドラの突進を、何とか避けようとするが、完全には避けきれず吹き飛ばされる。


 身体が動かず呼吸がうまくできない。


 今にも閉じそうな目でみた光景は、ブルドラが涎を垂らしてゆっくりと近付いてくる姿だった。


(お父さん、お母さん、助けられなくてごめんなさいなのです)


 大切な家族を想い、目を閉じた瞬間



「・・・・・・ぁ!!」



 ドゴォォォォォン!


 誰かの声が微かに聞こえたと思うとその直後凄まじい衝撃音が鳴り響いた。

 一体何が? と、何とか目を開けると、そこには、黒髪のオトコの背中が見えた。


「だ・・・・・・」



 何か言ってるがはっきり聞き取れない。

 彼女はそのまま意識を手放した。





*********




 俺は街へと向かい、大きな狼の群れを殴り殺しながら走り続けていた。

 しかし、ある事を疑問に思い、足を止め、その場で足に力を込め、高く跳び上がり、周りを見渡してみる。


進行方向に街がない。


 むしろ、逆の方向に昨日よりも小さく見える。

 ・・・・・・やってしまった。俺の方向音痴さを舐めてたようだ。

 


「ダイスケ、まさかとは思うが進むべき方向を間違えてたとか言うつもりじゃないよね?」


 くっ、その通り何だが言いにくくなった。かなりの方向音痴だという事をすっかり忘れていた俺が悪いんだが、ジークの俺を馬鹿にしたような顔を見ていると素直に謝りたくもない。


 どうしたもんかと考えていると



【グガァァァァァァァァァァァッ】



 遠くの方から雄叫びが聞こえてきた。


「うわぁぁ、一体何だぁ!?」


 ジークは驚き、俺の肩の上で小さくなっている。その後も音が聞こえ続けている。どうやら誰かが戦っているらしい。思案していた俺は自分の失敗をなかった事にする名案を思いつく。



「ジーク、黙ってて悪かったな。実は数時間前から邪悪な気配を察知していてな。急遽気配がする方向に進路を変えたんだ。耳をすませてみろ? 誰かが戦っている音がするだろ? 世界を救う事が目的で、寄り道してる暇なんてないのかもしれない。だが目の前に救える命があるかもしれないのに見捨てる事なんて俺にはできなかったんだ」


 うん、完璧だ!


 完全に偶々だが、うまく便乗できた。


 とりあえず戦っている人を助けに行こう。

俺必要ないかも知れないけども。



「見苦しいぞダイスケ! 方向間違えたって素直に・・・・・・うわぁ!」


 ジークが何か言っていた気がするが、ここは無視して全力で走り出す。

 数分走った所で、大きな20メートル以上はあるだろうか?青い鱗をした竜が血塗れになっている女の子に向かって止めをさそうと近付いている光景が目に入った。


「くっ、間に合え!」


 青い竜が鋭く尖った爪を振り落とそうとした瞬間


「間に合ったぁぁぁ!!」


 ドゴォォォォォン!


 右手で全力で青い竜の横っ腹を殴りつけると、青い大樹を薙ぎ倒しながら遠くに吹っ飛んでいった。

 手応えあったし多分死んだな、うん。

 そんな事よりも、女の子は無事か!?


「大丈夫か?」



 女の子に声を掛けるが返事がない。

 意識を失っていているようで、息はまだあるが酷い怪我をしている。

 右腕は骨が折れていて尚且つ肘から先が千切れかかっている。

 身体中から出血をしていて一刻の猶予もなさそうだ。


「極癒光」


 俺は迷わず極癒光を使う。SPを大量に消費するのは痛いが目の前の救える命を見捨てるなんて事は俺にはできない。

 徐々に女の子の身体を優しい光が包み込み、みるみる怪我を治していく。やがて光が消えていく。

 どうやら解析の効果通り、無事に完治したようだ。

 千切れかかっていた右腕も問題なさそうだ。意識は戻っていないが、女の子は安らかな顔しているので大丈夫そうだ。



「ジーク、この子の意識が戻るまではここにいよう」


「そうだね、それにしても瀕死の状態から完治してるみたいだね。凄い力だよ。さすが精霊王様」



 俺とジークは予定を変更して、今日も野宿をする事にした。




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