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お昼休み・後

序章・・・ではなく、ようやく物語の始まりかけが終わりです

いうなれば、冒頭の序章、ですね

 そういえば、というさとりの言葉に残り二人の視線が集まった。

「最近このあたりで起きてる事件って、知ってる?」

 事件、という言葉に智一も雅哉も首をひねった。

「はぁ? 事件?」

「しらないな……」

 自慢かどうかはわからないが――多少の自慢になるかもしれないが、2人とも情報には気を使っているつもりだ。

 雅哉は朝のニュースを1日も欠かさないし、地方紙にも目を配っている。智一の方は新聞は見ないが、親が見るニュースを隣で流して見ているし、何より町の知り合いや学校の生徒からもたらされる世情についてはよく耳を傾けていた。主に流行に気を配ってはいるが、世情についても同じく気を配っている。

ちなみにさとりも独自の情報網を持っているらしいのだが、雅哉も智一もそれがどういうものなのか知らない。にもかかわらず、さとりは時折2人が知らない情報を持ってきては披露したりするのだった。

「やっぱりね」

 情報通である2人の反応をみて、予想通りだと表情で物語って、さとりはうなずいた。そのさとりに訊ね返す。

「事件ってなんだ?」

「内容が気になるな」

 年のころは関係なく、人というのは未知に対して少なからぬ畏怖と、そして興味をそそられるものだ。

 その2人は自分の知らない情報を聞かされ、怪訝になる前にやや驚き、好奇心に駆られた。

 2人の反応をさらに予想通りであるとみて、さとりは一層笑みを深くして口を開いた。下手にもったいぶっても、いいことがないと知っている。

「どうもね、最近このあたりで、人が倒れる事件がいくつもあるみたい」

 さとりのこの言葉に、まず首を傾げたのは雅哉だ。

 雅哉は首をひねりながら、声を上げた。

「うん? 倒れるってなんだ? 何かで殴られるとか、あるいは1服盛られるとかか?」

「や、そういうのじゃないんだけどね……」

 言葉を濁すさとりに、雅哉はさらにわからないという表情を浮かべた。

 一方、さとりの言葉を聞いて何か思い当たることがあったらしく、智一の方は別の意味で首を傾げていた。

「んー……それならなんか聞いたことあるな。日中に人が倒れるってやつ……」

 商店街のおばちゃんとか、ご近所さんから聞いた、と言いながら智一は口ごもる。

 その様子を見て、どうしたんだ? と雅哉は問いかけた。

 なぜ彼が口ごもったのかが分からなかったからだ。

「ん? どうしたんだ、トモ」

「いや……なぁ、さとり。それって事件か? 俺が聞いた話じゃ、単に人が倒れるだけで、事件というよりも事故だったはずだが……」

 智一の主張を聞いて、彼が口ごもった理由に得心が言った雅哉は、なるほどと無言でうなずきながらさとりを見た。

 確かにその話だけを聞いたのなら、事件というよりもどちらかといえば事故だ。持病や日射病などをほうふつとさせる。

 何の根拠もなくさとりがそれを事件というとも思えない。さとりの方はというと、智一の情報網に「さすが」と相槌を打って、一瞬悩むそぶりを見せた。

 言おうか言うまいかを悩んでいるのか? と一瞬思ったが、それを考えるくらいならそもそも言い出しはしないかと考え、きっと考えをまとめているのだろうと結論付ける。

「なんていうかさ……その倒れた人たちがどうなったか知ってる?」

「いや……さすがにそこまでは」

「俺はそもそもその話さえ知らなかった」

 2人は率直に答えて、じっとさとりを見つめる。

 この場面だけを見たならば、どことなくさとりが2人に迫られているように見えなくもないが――むしろ雅哉の悪評を考えると、雅哉ともう1人がさとりを脅しているように見えるかもしれないが――この場で主導権を握っているのは間違いなくさとりだった。

 さとりはじっと息を止め、一呼吸分の間を無駄にあけて口をあける。

「……その人たち、まだ1人も目覚めていないんだって」

「まじか……」

「ぬぅ……?」

 もたらされたその情報に、雅哉と智一はともに絶句した。

「あと、なんか警察もちょっとあわただしくなっているみたい。外から見た限り、関係があるのかは知らないけれど」

「……ああ」

「なるほどなぁ」

 これは、確かに事件かもしれない。その事件が何事もなく収まればいいと、3人はほのかに期待しただけだ。

 もちろん、一方でその非日常に遭遇するという刺激を、かすかにでも欲している期待も存在したのだが、あたりまえだがそんなものは無力な夢想そのものだ。


 ――この時にはそれが実現するとはそれこそ夢にも思わなかった。

 

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