お昼休み・中
痛みがないことの有用性は、雅哉は身をもって知っている。同時に、そのことが持つ空虚さも。
そして、痛みがないことによる不都合も、何度も何度も経験済みだ。傷を見て震えるクラスメート、心配そうにする両親、いつもと変わらない感覚でもいつも通りに動かない体のジレンマ……いくつだってあげられる。
「…………」
何度も何度も感じ、実感している。だから、今更そういった一般論で諭されたところでストレスがたまっていってばかりで、なのにその分の発見や喜びなどは微々たるものだ。
割に合わない――と思う。
だから、そういった話ならば半ば強引にでも逃げてもよかったのだが、この2人の話となるとそういったストレスはほとんどない。
言っている本質はあまり他人と変わらないのかもしれないが、その内容は割と違っている。
「それじゃあ、いつも通り。今日から数日、放課後は一緒に帰るぞ。逃げるなよ?」
「逃げたらジュース1本ずつだからねっ! あと、あたしにはパフェも!」
「あっ、ずりぃ! 俺も『カラアゲェ!』1個な!」
些細な言い合いをする智一とさとりに、ひらひらを手を振って不承不承を装いながら了承した。けれど、そこからは一切の嫌悪感などは伝わってこない。
「はいはい……。わかったよ、今日から2日、逃げずに一緒にかえりゃいいんだろ?」
その通り、と2人してにぃっと笑う。
この結論に至るまでに聞かれた内容は、今日の喧嘩相手と人数――学校の不良先輩とあと10人弱、今後問題になりそうか否か――多分問題ない、そして心配だから傍にいていいか? といういつも通りの確認だけだった。
怪我をよくないといい、傷があっても痛みを感じない雅哉を心配し、行動を共にする。喜びが、雅哉の胸をジワリと広がった。
人の喜びが対応の表面でなく、本質によってもたらされるものだとしたら、2人の行動はほかの一般人と比べて、内容よりも本質の方が違っているのかもしれない。
「……ありがと」
小さく漏れた言葉に、2人は一層笑顔を深くした。




