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雅哉の体質

 授業の合間の休み時間に智一が離れた席からやってきて、さとりはすぐ後ろの席でその会話に混ざっていく。

 休み時間で今朝の遅刻で落ち込むさとりに、雅哉はやや同情的で、智一は単純に面白がっていた。

 自業自得だろ、眠かったんだし、それが自業自得、うっさい起きられないんだから、努力がたらねー、努力しないあんたに――と、やいやい言い合っている2人の頭をがしりと掴んで、静かにしろとブレーンバスターをかけながら静かにさせる雅哉。いつも通りの風景だ。

 授業が終わり午前中の最後の休み時間になると、待っていたとばかりに智一はやってくる。

「さて雅哉。さっきの話、聞かせてもらうぜ――今日の相手はそんなに手ごわかったのか?」

 そうして雅哉は智一から今朝の顛末について聞かれていた。

 その言葉を聞いて、さとりも「そういえば……」と視線を上げて何かを思い浮かべながら口をあける。

「今日はなんか疲れていたみたいだけど……なに? また喧嘩してたの?」

「……ああ、まあな」

 取り立てて隠すことでもないので、雅哉はあっさりと白状する。

 その肯定に、さらに智一が補足を咥えた。

「さっきの体育の授業に見たら、こいつ腕にあざ作ってやがった……かなりデカくて青いやつ。ただ殴られてもあんなのできねえだろ」

「えっ? なにそれ!」

 悲鳴にも似た驚嘆がさとりから上がる。だが、言われてみれば確かにわずかな違和感は雅哉から感じ取っていて、納得のいく部分もあった。

 見せてみろ――と言って、腕に手を伸ばされた雅哉はあっさりと自分で腕まくりをした。

 そこには衝撃の大きさが図り取れそうなほどにはっきりとわかる青あざが、見事な顔をのぞかせていた。

「うわ……痛くないの?」

「ああ、問題ない」

 雅哉は気負いなく、本当に何でもないと告げる。ただ、その言い方からは多少裏があると読み取れた。それでさとりはじっと黙る。

 一方その言葉にやや怒ったように、智一がさらに聞き返した。

「……で? 今日の相手はそんなに強かったのか? こんな怪我をこさえるくらいに」

「まぁな。1対10くらいだったから、ちょっと食らっちまったんだよ。……別に痛くもねえし、問題もねえよ」

 知ってるだろ? と暗に聞くように、その口調はやや投げやりだ。

 確かに、智一もさとりも知っている。特に智一は、中学時代からの付き合いだけあって、さとりよりも密接に。

 2人の知っていることを、どうにもならないというかのように諦念のにじませた声で告げ、なんでもないと告げた。

「オレに『痛み』はないんだから」

 痛くないんだから、痛みに動きを邪魔されないんだ――こんなあざ、何の問題もない。

 そう、告げた。

「……チャイムが鳴ったな、ほら席に戻れ」

 それと同じくして、チャイムが鳴り響く。もうこの話は終わりだ――とばかりに突っぱねて、2人を追い返した。

 2人は納得いかない表情のままに、席に戻っていく。

「納得してねえからな」

「同じく、ね」

 そんな2人の声を聴いて、雅哉は「ああ、まだ話は続きそうだな……」と、安らいだ気分でそう諦めたのだった。


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