作戦会議
作戦会議
星流れの山の拓けた場所に建つ丸太の小屋の前にある焚き火で月は、食事の準備を始めていた。
「あなた方はその、……人というか、お肉を食べないのですか?」
食事の準備に使う材料を見てキョトンと問いかける広樹に月は朝採れ山菜を手に広樹をチラリと目線のみで見て山菜選びに思考を戻し「頭に立つ者が変わると民も変わる。変われないものもいるがな」と呟く。
「こうやって、人間と変わらない食物を食べることもできるが、実際は人の味を知っている鬼が人を見て我慢して、ほかの食材で満足するかしないかの話だろうな」
月は鍋を掛けている火の加減を見ながら広樹に「どう受け止めるかは、お前ら鬼狩りに任せるしかないがな」と優しい光を目に宿した月が呟くのを広樹は見ていた。
「あなた方はどちらなんですか?」
真剣な声色の広樹に月はふとこれまでのことを考えていた。
「最初から、人の肉の味は、知らないんだ。仕えた方は肉は食べていたが、全てが山豚などだったからな」
「えっ、そうなん?!」
月の話に、灑が驚愕している表情を見せて声を上げていた。
「……その中でも、人参しか与えられてない時期もあった」
ゲンナリした表情で呟いている月を見て灑は「邪悪な顔を見せるときあるからてっきり……」と灑は月の言葉に爆笑しながら言う。
大爆笑をしている灑を見て月は大きなため息を付く。
「そうだったんですね」とじゃれ合う月と灑を見てうなづいている広樹だった。
始は隣に立つ緑を見上げてなにか言いたそうにしているのを緑は気付かないふりをして空を見あげた。
「私は山の中で生まれましたし、木の実や木の皮、で飢えをしのぎましたかね」
緑は“ここまでよく育ちましたよね”と他人事の様に呟いているのであった。
食後、早朝に伝令に走った夜が戻るまで各々自由行動をしているなか、獣道の草が揺れ、掻き分けて近づいてくる音に全員は警戒の色を強め他と同時に浮かび上がった人影に身構えたが人影を認めた月は力を抜いていた。
「……龍成か?」
月は安堵の息を着くと同時に現れた人影に声を掛けていた。
「うん? ……あぁ、月様もいたのね」
雑草を掻き分けて丸太の小屋を見つけた龍成も構えを解く月を確認して声をあげる。
「ひとりで来たのか?」
「夜様から話を聞いて一緒に来てるよ。本気じゃない夜様はほんと抜けてるからねぇ」
月の言葉に龍成はくすくすと笑いながらうなづいている。
月と話していると遠巻きに眺めていた者たちは龍成の傍に近寄ってきた。
「ま……まってください! 休憩なしでこの距離はもう無理です!」
体力が尽きかけている夜がフラフラと龍成が出現した場所から現れてようやく龍成に追いついた様だった。
「あら、夜も帰ってきたわね」
緑は夜に気がついて水を差し出す。
夜は緑より差し出された水を一気飲みをして、月を見た。
「天華様に報告の時にいたので来てもらいました!」
「……梅子婆さんの命令でもあるけどな」
夜が胸を張りながら言う隣で冷静に訂正を重ねていた龍成である。
「さて、あんたたち、処分されそうになってるんだな」
龍成は鬼狩りの新人たちを見ていた。
「えっ」
「どういうことだっ!」
広樹は戸惑ったような表情で声を上げて、始は龍成の言葉に噛み付いてきた。
龍成はそんな2人を見てキョトンと「あんたらエンヴィーに飲まれて失態犯した。それが問題になってるんだろ?」と肩を竦めつつ言っている。
広樹と始は、顔を真っ青にして真実を受け入れられない表情をしていた。
「御館様が修行しろって……」
カタカタと震えながら呟く始。
「鬼がいる場所で丸腰で修行に向かわせる大将がどこにいるのさ」
龍成はおかしくない?と2人に言い切る。
「君たちは、夜通し見張ってくれてた月様達に感謝するべきだね。」
「礼はいらないが……」
龍成の言葉に月は声を出していた。
「ところで、月様」
龍成は月に向き直り話し出す。
「ここの魔の外見は? 確認できましたか?」
龍成の言葉にうっすらと影を見た気がした月は「多分、熊みたいな……」と悩みながら当てはまる動物をだした。
「……あとかなり食べますね」
緑も横から口を挟んだ。
「たべるって?」
緑の言葉に龍成は首を傾げる。
「見ている限りでは、形ないものもあるものも、なんでも制限無しに食べまくって寝るって感じですね」
緑の言葉に龍成の脳裏には“暴食”の2文字が浮かんでいた。
「……」
冷や汗ダラダラの龍成を見て緑は首を傾げる。
「……やばい、相性最悪に悪いかもしれない」
龍成は呟いている。
「なぜだ?」
龍成の言葉に月は首を傾げていた。
「“喰う”はグラトニーの特性で外見の姿はスロースなんだけど」
龍成は調べたことを伝えた。
「術式も食っちまうんだよね」
龍成の言葉にその場にいる全員は固まってしまっている。
「……えっ……術式を食べちゃうって……」
夜は龍成の言葉に問う。
「……腹いっぱいになるまでありとあらゆる術をぶっぱなすって戦法は無理なん?」
灑は首を傾げる。
「むちゃ言うな。あんたらはどうか分からないけれども、人間は持てる能力値の容量が限られてるから生命力が落ちて下手すりゃ死ぬ」
龍成は当然できると考えていた灑に反論していた。
「……なるほどな」
月は落ち着いている様子でうなづいていた。
「今回、術師の協力は実質は、望めないということか」
「あの。僕たち手伝えると思います」
月の言葉に広樹が声を出していた。
「……動けるのか? 武器もないし大人しく護られていいんじゃね?」
広樹と始を灑は丸腰の2人を見て止めに入っていた。
「やるしか生きて出られないんだったらやるしかないじゃん!」
始は今の状況で半ば自棄になっての意見の様だった。
「……、いや、今回は、やめといた方がいいよ。手が増えるのには大歓迎だけど灑の言う通り“丸腰の2人”は戦力外だ」
龍成は苦く笑って始に現実を突きつけるが今の始は現状を気づいていないようである。
「助かっても、秘密裏に消されるんじゃないのか?」
灑の言葉に始と広樹は灑を見てしばらく考え込んでいた。
「生き延びたら、死んだ事にしてここに住めばいいんじゃないですか?」
緑は考え込んでいる始と広樹を見て“あなた方が此処に残ってもいいなと思えるなら”と優しくうなづいて言う。




