星流れの山に訪れた理由
星流れの山に訪れた理由
月の不機嫌な気配を受けて夜は話を逸らすべく脳内で話題を探っていた。
ハッと星流れの山に訪れた訳を思い出した夜は「……星流れの山の様子が気になって見に来たのですが……」と緑を見つめて言う。
「後、天華様が気になってるようでしたので」
夜の言葉に緑はうなづいている。
「……そうね。一般の人も夜も来るから困ってたのよ」
緑は難しい表情で呟く。
山登りに来る人々もいるが、日のあるうちに帰る人達はまだ生命の安全は保証できる。
だが、泊まって帰る人々を守るためにしている光源を作る事が逆効果になっている時もあった。
光源のないところにテントを張り、眠る人々が全員行方不明となる話が出てきていた。
「夜間通しで来ている奴らは喰われて居るんだろうな」
月は緑の反応で察しているようだ。
「ってことは、このふたりも……要らないモノ扱いってことな」
灑は足元に転がっている青年2人を憐れな者を見るような目で見て呟いた言葉に緑が「可哀想に……」と呟いて
「今残っている熊の鬼に、処分させるつもりで……でしょうね」
緑の言葉に月は気持ち悪そうな表情で青年2人を見下ろした。
「う……うーん」
目を開いた1人の青年。
囲んで見下ろしてきている人外4人の顔を見上げて動きを止めた。
「……ちょ、……はじめ……」
つんつんと隣で気持ちよく絶賛気絶続行中の始を起こそうと試みている。
「もう、なんだよ……」
身を起こした始は息を止めてこちらを見ている人外の目線を受けていた。
「気づいたようですね」
緑はほっとした声色で2人に声をかけた。
「……おれらを喰うのか?」
「……えっ? 食っていいの??」
始の言葉に灑がニヤッと笑って話に乗っている。
「……話が途切れるから灑、ふざけるな」
月は灑の後頭部を軽くはたいた。
「イテっ」
灑は叩かれた頭を抑えて月を振り返って見ていた。
「……私らは人を食べないわ」
緑は心の中で“多分”と呟いていた。
「人肉より美味しいもの知ってますしぃ~」
夜も緑の言葉に同調するようにホクホク顔でうなづいていた。
「……えっ?!」
広樹は夜と緑の言葉に驚きの声を上げていた。
「……まぁ、その話はあとから話すが、何があったのか話せるか?」
月は、座り直した青年2人の前に座り話を聞き出そうとしている。
「……以前、蛇に飲み込まれて任務を失敗しただけなのに、ここに放り込まれた」
始は苦しげに呟いていた。
「ここに訪れた理由としては、修行をしてこいという名目のはずでしたが……」
広樹もうなづいて始の話を引き継いで言っていた。
「……何も持ってないようだけど??」
緑は2人の青年を見て首を傾げる。
「……自分たちが弱いから、体力と筋力をつけろと」
始は呟いていた。
「着の身着のまま放り出されたわけか……」
月は2人を見て悩む。
「……まさか、蛇と同じような奴がいるなんて思わなかった……」
カタカタと震えるながら呟く始。
広樹も同じく震えが止められないようで夜は月と灑、緑を見合わせていた。
「夜、朝を迎えたら少し走って貰えるか?」
夜は月の言葉の裏を読み取り、すかさずうなづいていた。
「……なんか、夜の姐さん。天華様の名前が出てなくても天華様のところに戻れる時に察しが良くなるのはなんでなんだろう」
食い気味にうなづいている夜を眺めて灑は悩む。
「……この子達はここで匿って、月と灑で守ってるから安心してね」
緑は夜に伝えてた後に広樹と始を見て「お昼間に色々集めているから好きなの食べて寝なさい」と小屋を指さして言う緑を警戒を解かずに広樹と始のふたりは小屋に入っていく。
小屋の中に入ると山菜や水、木の実の用意があり、ふたりはキョロキョロと小屋の中を見回してほっと息をついていた。
小屋の中に2人を入れたあと、緑はつい先程作り出した光源を指さして「まぁ、あのどデカい光源があるからこっちには来ないと思うから、朝までゆっくりしてから帰ってよ」と夜に伝えていた。
「……申し訳ないけど私らは野宿ね」
緑は苦笑いを作って月と夜、灑に伝えていたのだった。
「解ってる、ここで無理は言わない」
月は首を縦に振る。
「なんなら見張りはしておくので、緑と夜は寝てくれ」
「えっ……いいの?」
月の言葉に緑は真面目に聞き返して来ていた。
「……あの二人を助けるために力を使ってないのか?」
「使ったけど……ギリギリの戦いばかりしてるから疲れていることに気づいてなかったわ」
緑は月の言葉にキョトンとしている。
「こういう時は甘えるに限ります!」
夜は緑を連れて眠れる場所に身を投げ出して夜空を見上げて言う。
「……では、休ませて貰います……」
言い終わるか、終わらないかで寝息が聞こえてき出していた。
「……じゃ、俺も」
灑も手を上げて去ろうとしているが月は灑の襟首を捕まえていた。
「……お前は、一緒に見張りだ」
「ええー」
月の言葉に顰蹙の声を上げた灑は無視して焚き火のそばに灑を連れて座るのだった。
所々に灯る光源を避けながら光の入らない洞穴に潜り込んだ熊は眠る体制になった。
森の小動物が、熊が入り込んだ洞穴へとそこに居るものに気付かずに入り込んで行くが数秒後、骨を砕く音が続いた。
熊が眠りながら側に近寄ってきたものを吸収したようだった。
しばらく後
夜空の下、静寂のみがその場所には残ったのだった。




