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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第4章 星流れの山での異変
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丸太小屋の主、緑

丸太小屋の主、緑


森の中で少し開けた所に出た夜と月、(さい)は目の前に建てられてある小さな丸太の小屋を視覚に捉えた。

 丸太の小屋がある拓かれた場所から見上げた空にはうっすらと月が薄暗くなりつつある空に姿を変えていた。

「あれ? いない?」

 夜は周囲をキョロキョロと見回しながら呟く。

「諸用で、どこかに出てるんじゃないのか?」

 あちらこちらと歩きながら探す夜。

 そんな夜に対して月も周囲を注意深く観察しながら声をかけていた。


 太陽が素早く山の裏へと隠れて行ったすぐ後、闇が世界を包み込んだ瞬間、山自体が震えた。


 地面にしゃがみこんで頭を守りながら夜は「じ、地震ですか?!」と焦っている。

「いや、違う……」

 月は声を上げて呟いていた。

「……違うって、地震だろ!」

 灑は倒れないように踏ん張りながら声を上げている。

「……はっ!」

 夜がなにかに気づいたかのように走り出した。

「こっちです!」

 走り出した夜の声に月と灑の2人も遅れないように走り出している。

「こっちから、(ろく)の気配がしますっ!」

 夜の言葉に月は首を傾げていた。

「まて、こっちには、エンヴィーと同じ気配がしてるんだが? 夜……気の所為とかじゃないのか?」

 月は、肌で感じる気配に先を走る夜に声をかけた瞬間、草木の間から勢いよく走り出してきた鹿の角のある女。

「……よる?!」

 走り出てきた女は夜を見止めてスピードを落としていたが、夜は避けきれずに正面同士で女と激突していた。

 両脇に気絶した青年を2人抱えているのを落としていないようだ。

「うわー、いたそー……」

 灑は呟く。

「あ、緑?!」

「……ひとまず、丸太の小屋のあるとこまではしってー!」

 両脇に気絶している2人の体を抱えている痛みと衝撃を耐えた女は目の前の3人に声をあげる。

 灑と月は痛みで涙目の夜を引っ張り、先導して走る緑と呼ばれた女の後を追うように走る。


 丸太の小屋まで戻り、全員がいることを確認して大きな光を作りようやく息を着いたように夜たちを見た緑。

「……死ぬかと思った」

 夜以外は、全員膝を付いて肩で息をしていた。

「……水は、そこにあるから好きに飲んで……」

「あれ? この2人……」

 灑と月に水の在処を教えている緑が地面に横たえた青年2人を見て夜は呟く。

「知り合い? 人間だけど??」

「……この2人鬼狩りですよ」

 緑の言葉に夜は首を横に振り、2人の正体を緑に教えていた。

「しかし、武器らしい武器は持ってないけど?」

 灑は丸腰の2人を見下ろしていた。

「結構、定期的に丸腰の鬼狩たちが投げ込まれているわよ?」

 緑はあっけらかんと答えていた。

「……なんかの任務に失敗したとか、嵌められた人のいい鬼狩りとか……」

 緑は思い出しながら話を続けていた。

「ある時期から、ここは鬼狩りたちの処刑場よ?」

「何?!」

 緑の言葉に月は驚愕の声を上げていた。

「……ある時期……って?」

 驚いてはいるものの夜は首を傾げて緑に問うていた。

「大量に鬼を遺棄して行った人間たちがいるのよね」

 緑は驚愕の声を上げた月を見て言う。

「待て、ここは一般人向けにも拓かれた山ではなかったか?」

「そのはずね」

 緑は月の言葉にうなづいている。

「……助けた鬼狩りだった子たちが少しの間は協力してくれるんだけどね」

 緑は小屋の近くにある墓を見て呟いていた。

「熊の鬼が強すぎてどうにもならないんだわ」

 苦笑いを浮かべて緑は呟いていた。

熊の鬼(あいつ)、光に怯えて巣穴に戻ってくれることを突き止めてくれたから人工の光で一般人の入り込む所は何とか守っているんだけど……」

 緑は腕を組んで鬼狩りの2人を見下ろしてため息を付いていた。

「……こんな風に、餌が定期的に投げ込まれているこの状態だといつまで抑え込めるかなのよね」

 いつかは“術で作り出した光源”だと見抜かれて熊の鬼にかき消されてしまうだろうということは予想できている為に、緑は頭を抱えている状態なのだろう。

 雰囲気では困ってるようには見えないが……。

「人工の光で騙せるものなんか?」

若草色をした光源を見て灑は緑に問う。

「……いや、あいつだけ有効なのかな?……他の鬼たちは、人間が蹴散らしちゃって試したことはないんだけど……」

 緑は一瞬灑と月を見て口を閉じていた。

「と、……夜はともかく、アンタたちふたりだれ?」

 ちと遅すぎる緑の反応に月はため息を付いていた。

「俺は、月と言う」

「うん、ツキね?」

 緑はうなづいて次に灑を見た。

「灑」

「……サイね」

 うんうんと緑はうなづいて「このふたりは……、夜の下僕でいいのかな?」と真面目な顔して夜を見ていた。

  (ろく)の言葉に黒いオーラを醸し出し「……は?」と呟いた月の視線から逃れつつ、月を見ずに夜はカタカタと震えて緑に「ドウキダヨ」と訂正をしている夜である。

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