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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第3章 今を往く現実と涙の思い出
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怖い夢の対処方法知りたいです!

怖い夢の対処方法知りたいです!



公園から、その足で久しぶりに鬼城(おにしろ)の館への門をくぐる。

「……あ、(れい)だ……」

 遠巻きに年若い鬼狩りや、鬼狩り見習いたちのヒソヒソと話している声が聞こえてくる。

 内容は何も聞こえては来ないが、表情からしていい話をしている訳では無いのだろう。

 遠巻きの鬼狩りや鬼狩りの見習いの声を無視しつつ鬼城の翁の部屋へと向かう。

「翁……今、いいか?」

 翁の部屋の前に立ち止まり静かに声をかけた玲に室内の翁は「入れ」と短く帰ってきたのを確認した後にゆっくりと扉を開いて中に入っていた。

 戸を閉めるのを確認した翁は玲を見て「どうした?」と声をかけていた。

「あまり、鬼城の館に近づかないやつが何かあったと見て間違いないんじゃないのか?」

 翁の言葉に玲は周囲を見回している。

「ちょっとだけ……な」

 翁を見て人間らしい表情出す玲を見て翁はうなづいた。

「……鬼城の歴史の原本は、あるんだよな?」

玲の言葉に翁は言いにくそうな表情をしている。

「この場所にある記録書はほぼ全部と言っていいほど改訂(かいてい)をされてあるな」

 翁の言葉に玲は顔を(しか)めたのを見て翁は軽く笑った。

「……改訂されていないものを取り扱う一族もあったが、御館様が知っている奴らは粛清(しゅくせい)されて残っている一族は、見つかってはいない」

 翁は息をつく。

「……そうだったんだ」

 玲ははぁ~と息を付いて呟いていた。

 翁は懐から封筒を取り出して玲に手渡していた。

「……次会った時にでも渡そうかと思ってな。持っておった」

 翁は笑って言う。

「……家に帰って見てみろ」

 翁の言葉を聞きつつ玲は封筒を内側の胸ポケットに直しこんでいた。

「……ふと、聞きたかったことがあったんだ」

 玲は真っ直ぐと翁をみた。

(じい)さんは、本当はあっちのばあさんと一緒になりたかったんじゃないのかな?って」

「そうじゃのぅ、まぁ、……振られてしもうたんじゃがな」

 玲の言葉に呟きながら乾いた笑いをしながら言っていた。

「ほれ、もう帰れ。お主の嫌いな奴が来るぞ」

「じゃ、また今度な」

会いたくない人物を指されて玲は挨拶はそこそこに立ち上がり翁の部屋から出て行っていた。

 早々に、鬼城の屋敷から出たいと早足で玄関まで歩いていたところ、いつもは薄暗い部屋から出てくることがない(れん)が廊下に立って玲を待ち構えていた。

「……お屋敷に来たのなら、こちらにも挨拶くらいしに来ても良いと思うんだけど?」

 蓮は作り笑顔を貼り付けて玲に聞いてくる。

 声の響きは完全に皮肉を込められていることは理解していた玲は無表情で蓮をみた。

「……この地は好きになれませんので……それに好かれてもいない人のところには別に行かなくていいかと思いましたけども?」

 真っ直ぐ蓮を見て玲は言い切っていた。

「お互い合わない方が、周囲も自分たちも精神状態の安定にもなるでしょう」

 軽く笑いながら言う玲に「そう……だね」と蓮もうなづいていた。

「じゃ……なにかあれば報告だけはしてね」

 蓮はまた薄暗い部屋に戻って行くのを玲は見送っていたが、すぐに玄関から外に出たのだった。

 玲は自宅へと戻り翁から手渡された封筒を開いて中身を確かめていた。

「手紙と別の封筒?」

 玲はふたつを手に取り頭の上で?マークを作っていた。

「……この封筒を送り届けろってことか」

 玲は封筒の住所を見続けて呟く。

 手紙の送り場所は何となくわかった。


 行くべきか悩む玲であった……。


 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


 白磁の月が浮かぶ深夜。

 

 眠っていた結華(ゆうか)がうなされている様で息が乱れている。


 淡いピンクの花びら舞う寺院の桜の根元でまう血飛沫。

 ゆっくりと倒れていく身体――



 ガバッと身を起こして結華は震える手で自分の身体を確かめていた。

 痛みもないし、怪我もないことを確認してほっと息を吐いた。

「……一体、誰の目線なの……?」

 結華は震えている身体を落ち着けるために自分自身を抱きしめていた。

 最近、夢を見ていなかった。

 いつも、夢の目線の主は幸せな夢だったはずなのに、今回は、全然違っていた。

 目尻から流れ落ちた涙を、手の甲で涙を拭いていた。

「水を飲んで落ち着こう」

 台所に降りて行くなかで、熱さと激痛を伴ない、流れ出たどろりとした肌を伝う液体のリアルさ。

 生命の源である血液の流れる感触は今でも鮮明に残っていた。

「どうしたんだい? 結華?」

「ばあちゃん……」

 梅子は真っ青になっている結華に駆け寄り、背中をさすっていた。

 安心させるかのような優しいその感触に結華は「夢を見たの」と伝えていた。

「……夢……か」

 梅子は『2代目の鬼灯夢華(ゆめか)は特殊能力で夢読みを持っていたはず』と思う。

「……天華様に会いに行ってみようかのぅ」

 ぽつりと呟いた梅子の言葉に結華も「私も着いていくっ!」と声を上げていたのであった。

「……さあ、安心してもう一眠りしておいで……」

 梅子は安眠のおまじないを施して、結華を部屋に送り届けた後に、月を眺めた。

「結華はなんの力もないただの人と同じと思っておったが、……まさか2代目と同じ《夢渡(ゆめわたり)》の力があるとは……」

 梅子は結華の顔を眺めて静かに呟く。


 “夢”に関する異能の力を使いこなしたのは夢華のみだったと史料にはある。


 夢華は生まれ落ちてずっと夢渡の力を本能で使いこなしていた為、使い方を記したものが残っておらず梅子ですらお手上げ状態になっていた。


 天華に会う事を決めた今、天華が対処方法を知っていることを祈るしかない梅子だった。

 

 

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