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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第3章 今を往く現実と涙の思い出
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懐かしい気配と忠告

懐かしい気配と忠告


雲が流れる青空の下、天華(てんか)はのんびりと街中を歩いていた。

その隣で、黒髪金色の瞳の女性は口の周りをクリームだらけにしてクレープを食べながら周囲を見回していた。

「……夜、お口の周りが大変なことに……」

 天華の言葉に夜は首を傾げて天華を見つめている。

「んー、嫌な予感はしないからちょっと見てきますねー」

 パタパタと噴水のところまで走って向かっていく後ろ姿を天華はゆっくりと追いかけて歩いている中で腕を取られて足を止めた。

「……なぁ」

 腕を取って声を掛けてきた相手に目を向けて天華は息を飲む。

「ああ! さっき!……雪太郎(ゆきたろう)に似た人だ!」

 夜はクリームを拭い噴水の水で手を洗って振り返った瞬間、間髪入れずに天華の腕を捕まえているアイスブルーの瞳をもつ男を指さして声を上げていた。

「いや、雪太郎って人は知らないんだけど……」

 夜の大きな声に男は困った声で反論している。


 たしかに纏う色彩は違うが、醸し出している雰囲気は雪太郎そのものなのだ。


 懐かしい気持ちが溢れる天華と夜。

 そのためか、夜も警戒せずに2人を見守るような様子でゆっくりと駆け寄ってきている。

「それで、……どちら様になりますか?」

 天華は冷静に雪太郎の雰囲気を纏うが雪太郎とは違う男に声をかけていたのだ。

「逃げませんのでこの手を離してください」

 天華の言葉を受け、捕まえたままになっていた手を彼はぎこちない動きで離していた。

「……自分は、雪月(ゆきづき)(れい)って言うんだけど……」

 数秒間、天華を見つめて戸惑っている空気を出していたが、玲はようやく口を開いた。

「はい。その玲さんは私を捕まえて何を伝えに来られたんですか?」

 優しい口調で玲を見返して問う。


 玲の心の奥底に眠る記憶が垣間見えた気がしたが、すぐに現実の世界に掻き消される。


玲は「……レン、には気をつけろ」という一言だけ伝えて立ち去ろうとしているのを察した天華は玲の手を捕まえた。

 捕まえ返された玲は、通常の人より低い体温の天華に驚きつつも「何?」と短く返していた。

「……一応、忠告に来たけど、俺も鬼狩りなんだけど?」

「あ、ごめんなさい」

 玲の冷たい言葉に天華は玲を捕まえている手から力を抜いた。

慌てて玲は「いや、……別に怒っては無い」と天華へ声をかけていた。

「ところで、レンというのは?」

 夜は玲に声をかけていた。

「今の鬼狩りの頭だな」

 玲は腕を組んで言う。

「はるか昔の鬼姫、銀色の髪に鬼の瞳で鬼狩りと協力して人喰いと対立していた者……あんた天華って言うんだろ?」

「……そうですけども」

 玲の言葉に天華はうなづいているのを見た。

「当人なら尚更、警戒しておくべきだ」

玲の言葉に天華は首を傾げて話をきいていたが、ふと玲を見た。

「やはり、直近で私、レンという方とあったことないと思うのですが……」

「それは知らんが……」

 悩みながら呟く天華に玲は脱力しつつ呟いていた。

夢茨(ゆめじ)の子供ではないのですか?」

 2人の会話に夜が口を挟んでいた。

「……あの子は人と同じだったような……」

 天華の言葉に玲もうなづいていた。

「……人であれば、もう寿命は尽きているはずですよ?」

「……響き的なものは2代目だがな……。こちらの方も調べてみるべきことかもしれないな」

 天華が断言していたが、玲は玲で呟いていたのだった。

「まぁ、忠告はしたからな」

 短く言ってもう話すことは無いと言うように立ち去っていた。

「ところで夜、彼に対しては対立しなかったですね……?」

 にこやかに夜を見つめている天華に夜はのんびりとうなづいていた。

「はい、なんか懐かしい気配でしたので……まるで雪太郎があの人なんだって言うような気がして……」

 夜は玲が立っていた場所を見て呟いていた。


 夜の中では、玲は色が違うだけで雪太郎だったということを天華に伝えてきた。


 夜の見解をきいて天華は「そうなのですね」とうなづいていた。

「……まぁ、煉の事は月に聞けば何らかの情報は教えてくれると思いますよ」

 夜はうーんと悩みながら思い出したかのように天華に「私が問いただしてます」と気合いを入れつつ伝えた。

「……そうですね」

 天華は夜の言葉にうなづいて「お手柔らかにお願いしますね」と笑いながら伝えた後、仮住まいにしている旧鬼灯邸へと戻って行った。

 


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