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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第3章 今を往く現実と涙の思い出
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燈月宮 火群明詩

燈月宮 火群明詩

少し時間が遡る。

洋館前に立ち止まり呼び鈴を鳴らそうとしていた彼は白月宮(はくげつのみや)もとい、龍成(たつなり)である。

 緩慢な動作で呼び鈴を押す。


 ――ピンポーン


 呼び鈴がなり数秒待つと『はい?』と知った声が帰ってきていた。

「龍成だけどー?」

 声の主が予想の人物であるため、軽く名乗り次の反応を待っていたら「そのまま、そこから入って」との声に導かれて玄関への扉を開いた瞬間――。

 玄関までの中庭ではなく、目の前には目的の人物が使っている作業場が広がっていた。

 出迎える形で黒髪姫カットの赤と緑のオッドアイを持つ女性が作業台を背に立って龍成を見ていた。

「おっかしいなー何で屋敷の中の明詩の作業場にいるんだろう?」

「……ごめん。案内を頼める人形(うちの子)たちが今バタバタしていてね、時短にもなるからそっちとこっちの空間をねじ曲げてここまで繋げちゃった」

 外の門を潜っただけで室内、しかも明詩の作業室にいることを龍成はげんなりして目の前の女性を見ている。

 やること規格外すぎる女性はつり目の赤と緑の目を龍成に向けて軽く笑っていた。

「……明詩(あかし)の作るあんたの子(にんぎょう)たちは苦手だから気にはしないんだけどさ、気軽に外国の別荘と日本の実家の玄関の空間を繋げるのやめろよ」

 龍成の言葉に「そお?“ゲート”を開発して、活用してたらすっごい楽なんだけど……」と言う明詩は龍成の話を聞く耳持ってないようだ。

「まぁ、うちの要件はこのランタンを届けに来たくらいだからいいんだけどね」

 エンヴィーの生命を代償に燃えている青黒い炎が揺らめくランタンを持ち上げて龍成は呟いていた。

 明詩も色違いの目でランタンを見て腕を組んでランタンを眺めている。

「前に作ったランタンと同じ内容量で作ったんだけど、……空きが足りないって言うのが納得できなくて速攻で持ってきてくれて助かったわ」

 両手をワキワキとしながら目を輝かせている明詩に龍成はどうぞお好きにという具合にランタンを手渡していた。

「ところで前、って?」

 龍成はランタンを眺めている明詩に聞いてみていた。

「仕事の話になるから所々は端折るけど?」

「……必要そうなとこだけでいいや」

 明詩はちらっと龍成を見て、龍成も納得したようにしていたので、言える範囲で説明しようと口を開いていた。

「封じてしまった方がいい“魔”の存在が確認されてね。力の大きさ等を調べて作ったのが封魔具(ランタン)のきっかけなんだけど」

 暴れ回る魔を封印するための道具を作ってくれと話が持ってこられて明詩が西洋風の燭台を作り封印したらしい話が今になって明詩本人の口から龍成の耳に入ってきた。

「お前、何気に燈月宮の仕事してたんだな」

思わず明詩に対して龍成が呟いていた言葉に「……一体、私をなんだと思ってるのよ」と突っ込まれていた。

「まぁ、同ランクの“魔”を吸収して同化したくらいしか説明が出来そうにないわね」

 ランタンの中にある魔を調べた様で呟いている明詩の言葉を聞き、「呪いの蠱毒を作ってる最中とか?」と龍成は笑って言う。

「……毒虫の呪いより、強悪になるんじゃない」

 悪趣味な呪いの作り方ね、と続けながら明詩はランタンを真剣な目で見続けていた。

「何体いるか分からないから、空き容量で悩んでいるけどどうするのがベストなのかしら?」

「うーん、人間の煩悩の数、て想定してそれを賄えるくらいの空き容量を何個か作ってればいいんじゃない?」

 真剣に問いかけた明詩に対して、気楽に答えた龍成に瞬時に呆れた表情で龍成を見つめている明詩。

 そんな明詩に気づいて龍成は「えっ、なんか問題でもある……?」と首を傾げている。

「ところで、……これは興味本位で聞くんだけども、前の“魔”を封印したランタンって見ることができる?」

 机にエンヴィーのランタンを置いて、明詩は戸棚から別のランタンを取り出してきて見せる。

 取り出したランタンの炎の色は黄色で、エンヴィーより小さいものである。

「炎の大きさが小さいな? ……これが、まだ何も取り込んでいない状態のやつか?」

 龍成は明詩を見た。

「そうね。命名の法則で言うなれば、色欲(ラスト)らしいわ」

 苦々しい思いをしたらしく明詩が呟いていた。

 

 

 

 

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