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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第2章 守りたい平凡な日常
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青黒い炎

青黒い炎


身体のあちらこちらを氷の槍に貫かれていた。

氷の槍に傷つけられた場所からはとめどなく黒い体液を流し続けているエンヴィーはゆっくりと霧が晴れていく中でまっすぐ天華(てんか)を睨む。

「戦意が削がれてないですよっ!」

 夜は天華の傍に来て、相手が動いたらすぐにでも迎撃できるように構える。

「……痛覚、持ってないのか?」

 月はエンヴィーの姿を見て呻くように呟いて居た。

「あの、腹にある大口に毒投げ込んでみたけど効いてもないなー」

 (さい)はこの戦いの為だけにヒキガエルから搾り取ったらしい毒物をエンヴィーの腹の口に投げ込んでいたようだった。

 しかし、効く訳でもなかったようで灑はもうお手上げ状態で乾いた笑いしか出ないようである。

「いつの間に……毒なんてものを……」

 夜は思わず灑に対して突っ込んで居た。


 天華が構築した結界内の何もない場所にいきなり出現するようにドアが作られゆっくりと開かれる。

龍成(たつなり)様、大変、お待たせ致しました。主は今席を外せないようなので、(わたくし)がお持ち致しました」

 ドアの向こうから桐箱を抱えた黒髪の美女が白月宮の隣に出現して桐箱を差し出して来ていた。

 龍成が桐箱を受け取ったのを確認すると美女は1回頭を下げて扉の向こうに消えた後に、出現していたドアもすぐに形を残さずに消えていた。

「……天華様っ!届いた!」

 桐箱を開きながら龍成は天華に声を上げた。

 龍成の言葉に天華はうなづいたのを確認した龍成は『未来永劫、その命、力尽きるまで灯りをともし続けることを命ず!』桐箱から取り出した西洋のランタンを持ちあげ、呪文を唱えていた。

 ランタンの装飾と似た黒い鎖がエンヴィーを絡め取り、しばらく抵抗をしていたが、黒い鎖がランタンの中へとエンヴィーを引きずり込んで行った後、ガラス窓には青黒く燃える炎が揺らめていていた。

 

脅威が去ったのを確認をして天華は対エンヴィー用の結界を解く。

祈りながら待っていた結華(ゆうか)は目の前に天華達が出てきたのを確認して涙ながらに抱きついてきていた。

「怪我は?」

 天華や清律を見てほっとしていたが、ボロボロの夜と月を見て悲鳴を上げながら処置をしている結華だった

 

青黒いランタンからポンっポンっとふたつの影が吐き出され放り出された。

「……おやまぁ、悪運の強いふたりだねぇ」

 ランタンの反応に気づいた龍成は吐き出された2人を見て軽く笑う。

 天華たちは青い顔のふたりを覗き込んで居た。

「先日、エンヴィーに飲まれた鬼狩りの2人組だよ」

 龍成は“エンヴィーはあれだけ暴れたのにこいつら“吸収”されなかったのかー残念だ”と笑いながら呟いて居たが結華が静かに怒ったので龍成は口を噤む。

エンヴィーの黒い粘液まみれのふたりが怪我しているのを天華は治癒していた。

「……放っておけばいいのに」

 龍成は天華に呟くが、「治癒しても罰は当たりませんよね」という天華に目を丸くするが反対はしなかった。

「じゃこのふたりは外にポイッしてきますね!」

 夜は治療した2人の襟首を持ち上げて鬼灯邸の外に宣言した通りに放り出して居た。

「戻りました! あの蛇女の粘液ばっちいから、手を洗ってきます」

 夜はそのまま手洗い場へと駆け込んで行った。

「西洋の燭台は手の込んだ細工がされてますね」

 天華はまじまじとランタンを眺める。

「……西洋かぶれの宮がいるからでしょうね。これはあいつの作品ですから」

 龍成はランタンを桐箱に直しながら呟く。

「……今、外国で何かを学んでるって言ってたの。明詩(あかし)姉さんかな?」

 結華は天華の隣で説明してくれていた。

「さて、どうやってあいつのところに持っていくか」

火群(ほむら)のお家に置いていけばいいんじゃないのかな?」

 龍成の言葉に結華は首を傾げながらいう。

「あー、うん、そっちの方がいいかもしれんよな」

 龍成は、あまりに気乗りしない口調。

「……明詩姉と喧嘩でもしたの?」

 心配そうな声で結華は問いかけていた。

「……あいつの作る人形が嫌に人間に見えて嫌なんだよ」

 龍成は呟いて居た。

「だけど、動いている人形こっちにはいないかもだからこっちに持って行くことにするわ」

 問題解決、と意気揚々と鬼灯邸を後にする龍成を天華と結華は見送る形になった。

 

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