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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第2章 守りたい平凡な日常
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奪った梅子の力

奪った梅子の力


夕闇を獲物が留まっている場所まで身をくねらせて走る。

「……居た」

マーキングを追って地面を滑るように走って来たエンヴィーはひとつの家を中心にとぐろを巻き、ゆっくりと近づいていた。

 

ニコニコと笑みを浮かべていた清律(せいりつ)がなにかに気づいて表情がサッと青ざめていくのを結華(ゆうか)は気づき、清律の目線を辿った結華も脂汗を浮かべる。

「……?」

サッと顔色を変えた清律と結華の2人の目線を全員がたどると黒髪の女性が透明な壁に阻まれているようにしてこちらを見て笑みを浮かべていた。

 しゅるると結界の周りを彼女の胴体が包囲している。

「居た」

 マーキングしていた白月宮(はくげつみや)を見据えて呟くが一人一人の顔を見て清律を見た時浮かべている笑みを濃くしていた。

「……あの時、喰えずじまいだった獲物が一緒に居る」

 ニヤっと笑みを浮かべて結界を壊そうと力を込める。

 怯えて(さい)にしがみついている清律、そんな清律を守るように抱き寄せている灑。

 天華はエンヴィーを巻き込んで、先程構築していた対エンヴィー用の結界を展開していた。

「清律姫、守護結界の維持をお願いいたします」

 天華は清律に声をかける。

怯えて集中出来てない清律の様子を「……無理だ」見て灑が冷静に分析して声をあげる。

「天華様の作ったものを作り替えるとか修理するならともかく、……維持くらいならできるよ」

 龍成は「封魔具(もの)が届くまでの間なら」とのほほんと答える。

「……獲物が減ったが、まぁ、許容範囲だな」

 結華の姿が見えなくなりエンヴィーは不平をくちにするが、結界を新しく構築展開した銀髪の少女を見下ろした。

「……他の奴らに分け与えるのはもったいないし私が喰ろうてやる」

エンヴィーは(多すぎるかもしれないから食えそうになければ、欲しいやつに分ければ問題はなかろう)と考え対峙している者たちを見下ろして居た。

「マーキングってすごいわなー。あっという間に追いつかれちまってるわ」

「やれやれ」

 白月宮の軽い声に月と夜はため息をついて結界より出て構えて居た。

「灑は、清律を守っててください」

 天華は怯えて震えている清律を灑に任せるようにしていた。

「オレは、……?」

 白月宮は天華を見た。

「結界の維持お願いしますね」

 満面の笑みを浮かべて即答で天華は月と夜に合流していた。

 鬼の膨大な力を込められた結界を白月宮は滝汗を流しながら維持に集中する。


 天華は氷の力を操りながらエンヴィーの動きを封じながら夜は肉弾戦と月は棒術での攻撃をしている。

「……邪魔だな」

 動きを封じる氷を凄まじい勢いで溶かし、夜へしならせた胴体で吹き飛ばす。

「夜!」

 天華の声に夜は受け身を取り天華の傍に着地した。

「……うー、痛いです……」

 エンヴィーの攻撃が思いのほか重すぎた様で夜は涙目でガードに徹した腕を見下ろして凹む。

「夜は休憩……」

エンヴィーに向けて氷の槍を放つが、エンヴィーに近づくにつれ溶けて体に当たる頃には針のような氷の粒へ変わる。

「こいつは……」

 月はエンヴィーの使う力を見て目を見張る。

「梅子の火か」

「あのババアの力はあんたに効くようだな!!」

 月の言葉に被せるようにエンヴィーは吠えていた。

 エンヴィーの手には炎が出現している。

「……他人の力を使いだしたら能力が消費されるのはすぐだ、さっさと使い切らせてしまえばいい!」

 龍成は天華達に声をかける。

「ふむ」

 天華はうなづいて大きな氷塊を多数作り出して居た。

「えっ……ちょ、ちょっと……天華様っ?!」

夜は慌てふためいて天華を見た。

エンヴィーはそんな天華に手元の炎を放出する構えを取ったのを見て夜は素早くエンヴィーへと向かっていく。

夜の行動と共に月も背後からエンヴィーへと向かっていった。

「……」

夜が火傷をしながら突進していく様を見て清律はグっと身体に力を込めた。

 まるで怯えを抑え込むようなそんな姿を見せて夜を水の守護する力を発動させた。

 夜を避けるように氷塊がエンヴィーに叩き込まれていく次から次へと氷塊をとかして行く。

 蒸発していく水蒸気が霧となりエンヴィー達を飲み込んで居る中、エンヴィーの借り物の力が尽きそうなようだった。

「……ちっ」

 エンヴィーは舌打ちをして今持ちえている属性上での相性が悪い清律に狙いを定めた。

「結界の中だろうが食いちぎって呑んでやるよ!」

 スルスルと素早い蛇のような動きで腹にある大きな口を広げて清律一点狙いをしていたが、灑が同時に動いていた為、灑によって胴体を掴み動きを停められていた。

「……また、邪魔するのか」

「またってなんの事かな……」

 エンヴィーの言葉に灑はエンヴィーの胴体を掴んだまま悩む。

「……対峙したのは今日、初のはずだけど……?」

「灑、気をそらすなっ!」

 灑が意識を取られかけた瞬間月が怒号を飛ばす。

 月の声により灑は抑え込む力を込めている。

「……くそっ」

 さっきの氷と水の合わせ技で梅子から奪った力もあと1、2度使えるかどうかの状態である。

 下手したら、エネルギーとしてどんどん目減りしていっているの感じている。

「……これで弱体化しているだと? 」

 天華の力を身をもって体験しているエンヴィーは愚痴をこぼしている。

「……弱くなってるのは本当ですよ」

 天華は次なる大きな氷槍を作り出して居た。

「これまで補助系や治療系しかしてきてませんし、貴方の持ってる情報が何処からの物でいかほどなのか不明ですが……」

 エンヴィーは残り僅かな炎を天華に向けて放つ。

 天華は大きな氷槍をエンヴィーに向けて投げ放っていた。

 氷と炎の蒸発でできた蒸気と衝撃が周囲を包み込んだ。

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