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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第2章 守りたい平凡な日常
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混乱は風と共に

混乱は風と共に


陽のあるうちに白月宮(はくげつみや)鬼灯(ほおづき)邸へと移動してきた。

しばらく目を離したうちに、結界が新調されている気配がするため、白月宮は慌てて中庭に駆け込む。

「……梅婆?!」

 話を聞こうと居間に座っているであろう人物に声をかけて見たが、予想と違う人物に白月宮は思考が停止していた。

「あれ? 侵入者ですか?」

 黒いボロボロな着物を着ている圧倒的な黒髪で金色の瞳の美女がキョトンと顔でこちら、すなわち白月宮を見ていた。

「というか、お前の方が侵入者だろうがっ!」

 現れた黒い女に蛇女を重ねたようで白月宮は渦巻く風を立ち上らせて怒鳴る。

「……えっ? ええええ??」

「ここは鬼灯家の物だ。即刻、出ていくことをおすすめするっ!」

 侵入者扱いされて意味わからず怒られて、戸惑っている夜が涙目になっていている。

「出ていかない場合は実力行使をする」

 冷徹な声の白月宮の気配に夜はカタカタ震えて頭を抱えてしゃがみ込んだ。

「怖いよっ! て、天華(てんか)様あああっ!!! たすけてぇええ!!!」

 白月宮を中心に暴風が吹き荒れる中庭の傍の縁側で夜は大音量で叫ぶ。

 

 各々が自由に過ごしていた夕焼け小焼けのなる空に夜の鳴き声が紛れて聞こえてきたものだから慌ただしく中庭の正しくは、夜の鳴き声の方へと集まってきていた。

「どうしたの?! 夜さん!」

「水が出なくて困ったのか?」

 結華(ゆうか)の声と呆れたような月の声が先に到着した。

「あれ? 龍兄?」

 結華の声に荒ぶる風神になりかけていた白月宮の周辺の風が一気に霧散しそよ風のみ残して消えて行った。

「結華、……こいつらは、知り合いか??」

 警戒はしたままに白月宮は1番先に来た結華に「脅されて言わせられてるんじゃねーのか?」と声をかけていた。

「何言ってるの? 昔からの憧れの夜さん、月さんじゃない」

 結華の言葉に白月宮はしゃがみこんで嘆いている夜を指さして次に結華の隣に来た落ち着いて腕を組んでこちらを眺めている月を指さしている。

結華が中心として話している最中に天華と(さい)清律(せいりつ)がかけて来ていた。

「結華、何言ってるんだ? 従者のふたりが主を置いてくるわけないじゃないか」

「天華さんならここに来たよ?」

 結華は隣に来た天華を指さして言う。


 完全に動きを止めた白月宮と天華の出現に大泣きしながらしがみつく夜で混乱が一応ではあるが収束を迎えたのである。


 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


 全員が落ち着いて居間に座った。

「……ま、……まじで天華様?」

 目の前に座る天華をみて、白月宮はものすごい感動している。

「……さっきまで殺す気だったやつとは思えねぇ」

 そんな白月宮をみて灑は若干引いている。

「だいたい、会っただけでそんなに感動できるもんなのか?」

 ダルそうに天華と白月宮を見比べて呟く。

「伝説級の人たちだぞっ!人っていうか鬼??」

 白月宮は灑をみて停止した。

「ってか、お前だれ?」

 ようやくと言ったところで、初顔のふたりに気づいたように声をあげていた。

「……今更かよ。まぁ、天華様に名付けてもらった蛇の鬼、灑だ。ちなみにこっちは清律だな」

 白月宮は清律をみて「清律神社の??」と呟いた。

「まぁ、違ってはないかな……」

 灑はうなづいていた。

「全滅したのかと思っていましたが、大丈夫だったんですね」

 白月宮の口調が柔らかくなっていた。

「……祭り治しができるのか??」

 灑は疑問に思っていたことを問いただしていた。

「その辺は清律姫様の意思になると思いますよ」

 白月宮は清律を眺めて呟く。

 白月宮は今回の蛇女の痕跡を追って清律の寺へも赴いていた。

 建物も何もかも壊滅的被害を受けたようなものだし、宮司一家はもれなく蛇女に殺されていたようで何も残っていない状態であった。

 ただ、物理的に人々を殺して呑み込んだ後を見つけ、発生源は清律神社の近くと決まった。

「ところで、龍成(たつなり)兄ちゃん、何かあったから来たんじゃないの?」

 結華はキョトンと白月宮を見ていた。

 悠長にお茶を飲んでワイワイ話している状況なのかと問われたようで白月宮はこほんとちょっと顔を赤くさせていた。

「結界を貼って欲しいんだけど……結華はできる?」

「出来るわけないでしょ?!」

 白月宮の言葉に焦って首を横に振りながら言う結華。

「……じゃあ、どうするか……」

「結界云々の話ならば張ってますよ」

 白月宮の真剣な悩み顔に天華は口を挟む。

「害意あるもの拒否する類のものを……ですけど」

 天華の言葉に目に見えてほっとしている白月宮の様子に結華は首を傾げる。

「ならば安心だわ。……俺風間龍成(かざまたつなり)で現白月宮だ」

 龍成は“以後よろしく”と気楽に挨拶していた。

「……はい、よろしく……」

 龍成の挨拶に夜がつられて頭を下げるもハッと我に返って龍成を見た。

「じゃーなくて! この人から何か変な匂いしますっ!」

「龍成兄ちゃん、香水つけてるからじゃないかな?」

 夜の声に結華は首を傾げて匂いを嗅ごうとしている。

「結華、ダメです!」

 夜が結華を止める。

「夜ーそれ酷くない? 出会いが最悪すぎたとても結華従兄弟みたいなものだよ?」

「いや、あなたがどうこうではなくて、……なんと言っていいのか」

 結華を後ろに庇いながら夜はなんと言っていいのか分からないようにしている。

「今までどこにいたんだ?」

 しょうがなく月が警戒しつつ、言葉を探している夜の代わりに問いかけていた。

「今まで、って蛇の魔って面倒だから俺たちが呼んでる名前で統一させてもらうね。エンヴィーを追って少し接触してみて、コテンパンにされつつあったから逃げ帰ってきた……って感じかな」

闇色の蛇をエンヴィーと龍成は呼んでこれまでの事を笑いながら話して聞かせてくれていた。

「そしたら獲物認定されて多分術かなにかで“標的設定(マーキング)”されちゃって、いやはや困ったねぇこりゃ」

 困って無さそうな龍成の言葉に灑は慌てて清律を見ていた。

 清律は片目でこちらを見つめている灑を不思議そうに見て首を傾げていたが、灑は安心させるように頭を撫でてほっと胸を撫で下ろしていた。

「神さんには、マーキングはなかったわ」

「……んで、ここで説明するけども、《嫉妬の蛇》エンヴィーは、嫉妬心を喰らうんだけど嫉妬心がなければ普通の人は活動エネルギーの食糧として吸収されるんだよ」

 ホッとした灑の後から龍成の話した内容に全員が愕然とした表情をしていた。

「……大なり小なり、みんな持っていると思うけどね。発生源は清律神社内の家族内の人間関係だったよ」

 少し、ほんの少しだけ優しい声色で話していた。

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