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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第2章 守りたい平凡な日常
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手を組む決意

手を組む決意


結華(ゆうか)が学校から戻ると新顔の存在に一瞬表情が凍りついていた。

「結華、問題解決まで一緒にいることになった。こっちの男性は(さい)さんで、この子は清律姫(せいりつひめ)さん」

 結華に説明している時、部屋の隅の方で夜が畳にのの字を描いていた。

「何が……あったの?」

 結華の質問に月が「名付けの事で少々な……」とため息を付いて「灑に名付けたら夜だけの特権だったと大騒ぎしていた」と説明していた。

 その説明を聞きつつ月と灑をギッと睨みつける。

「雪太郎の時はさほど気にしてなかった気がするんだが……」

 ため息混じりに呟いた月の言葉を夜が反応した。

あの子(ゆきたろう)は、私が拾ってきて、私が名付けを天華様に頼んだからいいんですっ」

「どんな理屈だ!」

 夜の言葉に速攻で突っ込んだ月。

 夜の様子を見て脱力と共に大きなため息をつく。

「……夜ちゃん、今日、友達に持っていったクッキーの残りだけど食べる?」

「たべますっ!」

 結華は、台所に引っ込んですぐに戻ってきて夜の口にクッキーを放り込む。

「……さて、名付けの話から話がそれるが……」

 月は結華をみた。

「昼間、病院から連絡が来てな、明日から都合いい日に迎えに来れる人が来院したら退院していいらしい」

「梅子……、戻れるんですか?!」

「ほんとに?!」

 夜の反応が早いのは何故なんだろうか、と月は思いながら結華の反応に頷く。

「……ねぇ、梅子って誰……?」

 灑と清律だけ首を傾げているため、天華は「この舘の主で……」と軽く説明した。

「……まさか、火の術を使う?」

 灑の言葉に天華はひとつ縦に首を振る。

「……あいつが襲って、喰われかけてた……」

 灑の言葉に月が灑の胸ぐらを掴んだ。

「あいつ、とは何者だ?」

 月の眼光は今にも人を殺せそうなくらいの怖い光を浮かべていた。

 灑は襟首を掴む月の手を叩いている横でおろおろと取り乱す清律。

「……締められてると言えねーよ!」

 ゴホゴホと咳き込みながら月を見て灑は声をあげていた。

「……うちらが襲われた蛇みたいなやつだよ」

 両手をあげて灑は言う。

「正体は、分からないけど。寺の奴らは《魔》とか《(けがれ)》とか言ってた」

 片目しかない金の目で月を真剣な顔で見つめていた。

「……まだ、この辺に潜んでるのは間違いない」

 灑の言葉に月は手のひらに爪が食い込むほど握りこぶしを作っていた。

「この辺の人間は、当たりを引いたらあいつにはご馳走だ。ちなみにあいつの当たりになるのはオレの神さん、あんたの姫さんとそっちのお嬢ちゃんだな」

 清律、天華から結華を指さして言う。

「苦労なく食べて吸収しようとするならそっちの人の子だろうと思う」

 灑は結華を見て呟いていたが、結華と清律を見比べて納得する。

 清律の場合は、付かず離れず守っている灑と事を構えないと食えないし、清律自身もそう簡単に喰われることはない。

 今は、消耗してまで吸収するより喰える獲物を食べて力をつける方を優先するだろう。

 結華の方は、家に居るうちは守る者が3人いるが、外出中にひとりでいるところを狙えば苦労なく喰えるし、力も吸収できるだろう。

「……結華の守護が最優先か?」

 納得したであろう月は、天華に問いかける。

「この家に張っている結界を強化します。月は隠形の術は出来ましたよね?」

天華の言葉に月はうなづいていた。

「……わかった」

月は天華の言いたいことを汲み上げ、うなづいていた。

「月が護るのなら安心できますね」

 夜も月を眺めてのほほんと答えていた。


 天華は安心していると着物の袖を軽く引く感覚に引っ張られている袖の方を見た。

「……清律姫、どうしました?」

 明るい橙の瞳を天華に向ける清律を見つめて首を傾げる。

「結界術を教えて欲しいんだと」

 灑は清律の言葉を代弁していた。

「……あんたとは、会話してみたいらしいから言葉を取り戻したいけど無理なら念話で話したいから練習中だとさ」

 灑の言葉に清律は真っ赤になって灑の後ろに隠れていた。

「わかりました……」

 天華は清律を見て頷く。

「まずは、結界術、教えますね」

 天華の言葉に嬉しそうに灑の身体の後ろから出てきていた。


 

 和やかに結界談義し始めている天華と清律のふたりを眺めて灑は、夜と月を呼んで結華、清律、天華から離れた。


 

 守護の結界があるのだが、天華とある程度引き離された夜は不機嫌に灑を見て「一体なんですか?」と声をあげる。

「夜の姐さん、月の旦那」

 灑は振り返り声をかけた。

「今回の敵、蛇じゃないっすか」

「……それが?」

 灑の言葉に夜は首を傾げる。

「対策のためにオレと手合わせしません? 動きなら同じはずだから役立つはずっすよ」

 灑の言葉に夜は目が点になっている。

「面倒事を避けそうな奴だと思っていたが……」

 月が灑を見て言う。

「……これが一番、面倒事を避けれるはずだからかなー」

 月の言葉に頭を搔く。

「どうせ、あいつオレも狙ってるはずだしねぇ~。今回、手ェ、組みましょ?」

 ニヤと笑って灑は月と夜をみてやる気のあるのかないのか分からない声音で言っているが月はうなづいていたが夜が「ヤです」とキッパリ拒否の意思で即答していた。

 月と夜がお互いの顔を見合せた。

「……どうして手を組む方向なんですか?」

呆れた顔の月が「夜、お前、」と頭を抱えた姿に対して食ってかかる夜に対して月は冷静に「天華様の事を考えたら手を組むべきだと考えた結果なんだが?」と月は平然と答えていた。

「月と私と2人でやれるはずです!」

 まだ吠え続けている夜に月は大きなため息を着いていた。

「まず、清律姫が龍神だとする。敵に莫大な力を捧げることになる」

 清律を指して月は夜に説明をする。

「天華様を守りつつ清律姫まで守れるか?」

 月の言葉に夜は悔しそうにしていた。

「……ま、守れないかもしれません。天華様が危ないならば間違いなく清律姫は見捨てる自覚はあります」

 夜の言葉に月は頭を抱えていた。

「お前は。覚えてるのか分からないが、記憶が合っていれば清律姫は龍神と竜王の娘だ」

 月の言葉に夜は驚いた表情で、灑を見た。

「……なんであなたと一緒にいるです?!」

「そーいう反応になるよなー」

 真っ青になっている夜の声に灑は軽く笑いながらうなづいていた。

「色々あるんだが、まぁ、実際は……オレも知りたい」

 灑は素っ気なくであるが、後半は自虐的な声色で呟いていた。

 夜はそんな灑を見つめて「手を、組みましょ」とうなづいていた。

 

 

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