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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第2章 守りたい平凡な日常
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澱みと核

澱みと核


退屈な授業中に、景色に溶け込みそうな薄い黒い靄が校内を包むかのように揺蕩たっているのを気づいた(れい)

周りの目を盗んで近くに流れてきた黒い靄に触れて見る。

 黒い靄が放たれていた淀みの核がある場所へと一瞬にして意識が誘われたかのように飛ばされた。

( 体育館裏か…… )

 澱みがある場所を認識をした瞬間、離れていた意識を体内に戻し授業を再開するという器用なことをやってのけた玲は昼休みになるのを今か今かと待っていた。


 玲には、生まれた時から澱みを見る目が備わっていた。

 そして、その澱みは鬼と呼ばれるものとは違う生き物を生み出すことがあることを理解していたのだった。


 先程、見つけた澱みの核はまだ小さいはず、核を司る者の対応をしたらすぐに消えるだろう。


 お昼休みの時間を告げる鐘がなり、そのまま歩き出していた。

「お、おい! 玲!」

 朝の事を謝りに破李(はり)は来ていたが早足に教室を出ていく玲に声も掛けるも彼は立ち止まることなく歩いていく。

「……何があったんだ……」

 破李は玲に取り残されて困惑していた。


 破李の声には気づいていたが、早く対処しなければならないと体育館裏へと向かう玲。

 見えている黒い靄がどんどんと濃くなっていく。

「……」

体育館裏の澱みの場所にたどり着いた。

 そこには、姿が透けている者が有刺鉄線のような霊的な鎖に縛られながら立ち、玲が来たことにより怯えの表情を見せた。

【 ……なんで、こんなになっても何処にも逃げる場所がないのに…… 】

 死した彼からの思念が玲に流れ込んできていた。

 生きていた時の記憶が映画のフィルムのように広がり、玲の前に映し出していた。

「……そうか」

 目を閉じて彼をみつめた。

 一般人含めて能力者も多数通う雪月学園(ゆきづきがくえん)になる。

 一般枠で入学したい子で能力が弱い者も異能があるのなら、強制的に能力者のクラスへと放り込まれるため、弱いものいじめに発展していく。

 彼はいじめにより、生命を失い、異能の力が強い者に飲み込まれてしまったのだろう。

「……縛られているのか?」

 玲の言葉を聞いて無言でこくんとうなづいている。

「酷いな……」

 有刺鉄線のような鎖で幽体の少年を縛った見たこともない学園生徒に「大人数で寄ってたかって、悪趣味だ」と悪態をつく。

「ちょっと、痛むかもしれないが耐えてくれ」

 周囲に誰も居ないことを確認をして幽体を捕らえている鎖を氷で包み込み壊していく。

 玲が扱う能力は強大であることを理解しているため玲は能力を使う時には周囲に誰も居ないことを絶対条件にして、慎重になっている様だった。

「あんた、動けるか?」

 玲は、心配気に幽体の少年に目を向けると自由になった自分の身体を見て幽体の少年はキョトンと玲を見ていた。

【 あ、ありがとう 】

「……向かう先は向こうだ。光に向かって歩けばいい」

 玲は斜め上を指さすと天国への階段が現れていた。

幽体の彼は玲にお礼をして光の階段へと向かって歩き出し、光の中へと姿を消していく。

 幽体の少年が天国の階段に足をかけたと同時に闇の種は、ゆっくりと型を崩し、黒い核や黒い靄の線が消えて行ったのを確認して玲は、教室に戻ると破李はまだ待っていた。

「よっす! 玲、朝ゴメンな」

 破李は手を合わせて来る姿を見て玲は大きなため息をして「別におこってねぇーよ」と玲は軽く笑って応えた。



✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼



 家へと帰る道の途中で、朝の散歩で見た銀髪の少女のことをふと思い出した。

 まるで心の奥底が“思い出せ!”と訴えかけてきているようだったが何を忘れているのか、何を思い出せと言っているのか自分胸に手を当てて見ても解らないのだ。

「翁に聞いたら何かわかるのかな」

 ボソッと玲は呟いていた。


 翁は、幼い頃から玲の面倒を見てくれていたため色々と相談ができるだいぶ歳の行った父親代わりでもあった。

 しかし、最近翁が忙しそうで玲から面会を頼むことができていないし、破李や琉李に頼むほどでもないと思い。

 自分の家に置かせて貰っている翁が自費で収集した秘蔵の鬼狩と鬼に関する書物を読むことにして、家へと帰ってきた。

 玲は《人間を助ける鬼姫》という書物を持つ。

 鬼狩りの祖が書き記したものと、鬼灯の祖雪太郎(ゆきたろう)が書き記したもの2つ存在している。

 ふたつの書物は途中まで同じ事を書いてあったが、雪太郎が著したものは、少し書き出されていた。

煉華(れんげ)様は、一部の鬼狩り達に殺され、天華(てんか)様は鬼狩りの襲撃を受け行方知れず。我ら鬼灯は捜索するが、情報は何一つ掴めず」

 雪太郎の文字が震えており、無念の念が玲の心に突き刺さる。

「……しばらくして天華様の従者夜が天華様の髪を持って来たので屋敷の中で大事にすると受け取った」

 雪太郎の書物はここで終わった。

「……天華、の状態が書かれていない。遺髪とは書いていないから、死んでは無いのか」

 玲は書物を冷めた目で見つめて考える。

「だけど、鬼狩りの中で鬼と対立していた、鬼は鬼なのに」

 文字の羅列を指でなぞりながら考える。

( 館の長が天華を求めている。……鬼は狩るものと言っていたはずの人が )

 玲は頭の中で答えが出ないまま、疑問だけが巡る。

「……似ている雰囲気の鬼を差し出している馬鹿野郎がいるかもしれないな」

 本を閉じて玲はため息を吐きつつ呟く。

 朝の時間で見かけたあの銀髪の少女が狙われるかもしれない、と玲の思考に何かの思考が入ってくる。

玲は、悶々と答えの出ない問題の中で何故か「朝の少女は守らないと行けない気が……」とたったそれだけの答えだけがさらりと出たことに戸惑ってしまったのだった。

 

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