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朝露鬼譚-桜梅桃李-  作者: 猫祝 しわす
第2章 守りたい平凡な日常
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書物は財産です

書物は財産です



――少し時間が遡る。


 

朝日が登った通りを散歩がてら見回りながら歩き回る少年は懐かしい気配にふと立ち止まる。

「……」

思わず懐かしい気配を探して目線を彷徨わせていると真向かいの通りに玄関を掃く銀髪の少女。

見つめていると出入口から慌てたように走ってくる栗色髪の少女が銀髪の少女と少し話をしている。

「……半鬼?」

 銀髪の少女を見て少年は呟く。

 見ていると栗色の髪の少女は結華(ゆうか)で銀髪の半鬼の娘は天華(てんか)と呼びあっていた。

 彼女たちは平凡な会話をしているようだった。

「……まぁ、悪い気配はしないから様子見するしかないか」

 冷えたアイスブルーの眼を鬼灯の家から外し散歩を再開し始めていた。

背中に刺さってくる視線には気づいていたが敵意もないため気づかないフリをしてそのまま歩き続けていた。


 ただ、背中に感じた優しい視線はどこかで感じていた心地よい物だと魂が反応していた。



 ✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼••┈┈••✼


 

学校へと向かう背中に衝撃が走る。

「……ったぁ」

 玲は、誰だよと思いながら振り返ると同級生の灰色の髪で青い眼の鬼城破李(おにしろはり)

 鬼城家直系の男がそこににこやかに立っていた。

「よっ、(れい)。今日の見回りひとりで動いたらしいじゃん? 」

「お前、起きるの遅いからだろ」

 腕を肩に回した破李の言葉に玲は冷たい眼を向けて呟く。

「 ? 」

 破李は首を傾げる。

「俺が起きるの遅くても誰か他の人と出ても良かったはずじゃね?」

  破李は玲を見ていた。

「……声掛けても現役の奴らも、見習いの奴らも無視じゃん」

  玲は破李の腕を外して呟く。

「まぁ、あんた強すぎるから周りから妬みの対象だもんね」

 破李はのんびりと答えた。

「妬むくらいなら自分が努力しろってね」

 ニヒヒと笑いながら続けて破李は言う。

「……あんたら兄弟くらいだ、俺に構うのは」

琉李(るり)兄もオレもあんたより強いし、何より仲間だと思ってるからな」

 のんびりと玲を見た。

「……そういや、お前も、琉李もなんだかんだあっても鬼狩りの中では上位組だったな」

「……もっと褒めろ。ところでだ、玲。話し込んでるけど登校時間、もうそろそろヤバないか?」

 破李は自分の持つ時計を玲に見せて学校を指さして言う。

「……余裕だったはずなのに……」

 玲は破李の持つ時計で時間を確認した後に、破李にブツブツと文句をいいながら小走りに学校に向かう。

「ふははは、ふたりで仲良く遅刻しようぜ!」

 破李の言葉に玲は、盛大にため息を着いていた。


 ちなみに、破李の時計は壊れていたのか遅刻することなく余裕で着いたのである。

 走って体力消耗した玲は文句を言うことなく自分の教室へと向かっていった。

「玲、めっちゃ怒ってるよな」

 破李は呑気に呟いていた。

破李も「……後で謝ろっと」と呟きながら自身の教室に向かっていた。


 破李が教室に着くと人だかりができている。

 中心に居るのは鬼灯結華(ほおづきゆうか)だった。

「なあ、これなんだ?」

 近くに立つ同級生に話を聞くために破李は声をかける。

「……あいつの家に救急車が止まってたのを見たやつがいてさー」

 同級生は破李を見て“なんで知らねーんだよ”と言う顔をしつつ話をしてくれた。

「……確か、うちのじーさんと仲が良い、ばーさんとあの子一緒にすんでたよな?」

 昨日の救急車騒ぎの話していた同級生はキョトンとした顔をする。

「……知り合いなのならなんで知らねーんだよっ!」

 思わず突っ込んだ同級生は悪くない。

「一番内容知ってるはずのお前が知らないんなら、情報が出てないんだし、当事者本人に聞くしかないじゃん、だからみんなしてあーやって鬼灯に群がってんの」

 同級生は投げやりに説明した。

 何度も言うが、同級生は悪くない。

「なるほど」

 破李はうなづいて席に向かう。

「おろ? お前は話し聞きに行かねーの?」

「じーさんが知り合いなだけだから関係ないし」

 同級生は破李の言葉にふーんと納得していた。

「まぁ、因縁のある一族同士だから細々と情報交換してるのが逆に珍しいのか」

 破李は肩を竦めて見せた。

「爺さんがあっちのバーサンに力の使い方を教わったりしたらしい、……まぁ、鬼城の残ってる書物なんて鬼城に都合のいいものしか残ってないみたいだからじーさんからは、知識をつけたいなら鬼灯のばーさんのところに行けってくらいは言われるかな」

「おま、こんな所で鬼城のお家の情報開けっぴろげすぎだって」

 破李の言葉に同級生は肩を落として脱力感に苛まれている。

「……ホントのことだしな」

 破李は中心で困ってる表情の鬼灯結華を眺めて呟く。


 鬼城家の起こりと鬼灯家の起こりは同時だと伝えられている。

 歴史が同時期に発生しているならふたつの家にあるものは同じであろうとこれまで誰も鬼灯家の書物に興味も惹かれなかったが、唯一、鬼城の翁が興味を示した。

 鬼城の翁は鬼城家に残る不自然に繋げられた古文書類に気づいて懐疑の目で見るようになっていた。

 幼い頃から( 目に見える場所や表だけではなく目に見えない場所や裏をも見るようにしろ )と破李と琉李に対して鬼城の翁は教育してきたのだった。

まだ学生の身の上なためか、鬼城の施設の中を自由に歩かせてもらえるはずもなく何も情報がない。

 破李達が唯一持っている情報は“鬼狩りは人を喰らう鬼を狩るもの”ということくらいだった。

 ため息を着きつつ破李は、黒板の上の時計を眺めていた。

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