見つかった天華
夜たちが梅子が運ばれた病院へ夜が背負って建物の屋根の上を移動しているのがとある鬼狩りの目に留まってしまっていた。
黒く肩までの髪の女性と背負われた銀色の髪の少女を見て思わず写真に収めている。
「……天華っていう鬼があれなら、御館様の執着も理解できるな」
ふと、鬼違いであれば……と邪な考えが頭をよぎっていく。
( 違う女鬼であったら自分が飽きるまで近くに置いておけばいい…… )とカメラと写真を大事に持ちながら館へと戻って行く。
既に天華と夜が画像に転写された紙を持ち蓮の部屋に向かう。
蓮の部屋に向かうにつれて身体の芯から熱を絡めとっていくかのような冷気が足元から登ってくる感覚に身震いをしつつ前を見据えて歩き出している。
障子に人の影が映し出されたのを気づいた蓮は障子を開いた。
いきなり障子が開かれて弾かれたかのように頭を下げる年若い鬼狩りを見た。
「えーと、だれだっけ?」
蓮は和やかな雰囲気を出して声をかけてきていた。
障子を開くまでは生命すら凍らせるほどの雰囲気でこちらの様子を伺っていたにも関わらずだ。
「……情報収集班、に所属しています。蔵持と申します」
「うん、それでどうしたのかな?」
蔵持は蓮を見て手に持っていた写真を見せていた。
「これがどう……」
蓮は写真を差し出されて言葉を紡いでいたが、写真の中に銀髪の少女の姿を認めて言葉を切る。
深い闇しか見えなかった瞳に光が灯るのを見た蔵持は息を着いた。
「……良く、撮れてる」
蓮は両手で大事に写真を受け取り、恋焦がれた表情を浮かべて天華だけを見つめている。
蔵持は、少々残念な気持ちを隠し、黒い鬼でもいいかと考えを改めて蓮を眺めていた。
「……早速捕縛に向かいますか?」
「捕縛はいいけど、傷、怪我なんてさせちゃダメだよ」
蓮の反応で蔵持は蓮に気付かれずにため息を着く。
「……傷や、怪我、汚れは多少は諦めてください」
蔵持の言葉に絶対零度の殺気に包まれて息が続かない。
「……今、なんて言ったのかな?」
にっこり穏やかな笑顔の裏の殺気に蔵持は息を飲む。
「……申し訳ありません。傷ひとつつけることなくお連れいたします」
「約束違えたら消すから……いいよね?」
頭を下げた蔵持は背筋に冷たいものが走る。
蓮の言葉に本気の空気を感じ取り作戦を練るしか無くなった。
「……じゃ、よろしくね」
障子を閉じ蓮は離れていく気配がした。
しばらく歩き、温かさが戻った時に息を吐いた。
「……生きた心地しねぇー」
蔵持は新鮮な空気を肺に1杯に取り入れ呟いた。
「しかし、どうしたもんか。天華って鬼には従者に狂戦士がいるはずだし、天華自体を無傷で汚れなくって無理な任務じゃね?」
蔵持は“だいたい、鬼狩りの犠牲者も大多数になるんじゃないか?”と真剣に悩み出す。
「……楽に捕まえれる時を狙うしかないか」
色々と考えて行く中で今の状況では、割が合わないと考えに至ったのだ。
夜の闇を大他を這う巨大な体で移動している。
ズルズルと這って移動したあとは生気を取られ、枯れて萎れた雑草が残っていた。
水神のお寺を蹂躙し、綺麗な白い龍の子を食べて消化しようとしたが、小さい蛇と人間に邪魔されて逃した白い龍の子供を探していた。
合間に合間に人をつまみ食いをしたがつい先ほどの老婆の力が美味しすぎて思わず大事に食べようと保存食として持ってきたことくらいである。
「……しかし、どこに隠れた」
キョロキョロと周りを見回すが陽の光が山々から顔を出しつつある。
「時間が……」
空が鮮やかな黄金色に変わり朝焼けが世界を包み込む。
世界が夜明けが訪れていることを理解した黒い魔は、世界の狭間に姿を消したのだった。
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看護士の夜に対してのお怒りの言葉を全員は黙って聞いていたのちに全ての注意事項を伝達して看護士が病室を退室した。
梅子が身を起こした病室のベッドを前に、天華筆頭にして月と夜が扉側に立ち、窓側に翁が立つ。
結華はすぐ側の椅子に座って梅子の言葉を待っていた。
「……結華、心配をかけた」
優しい口調で梅子は言葉を話す。
「して、一体どうした?」
翁は梅子を見て“お前らしくもない”という顔で見ていた。
「瞬発的に何者かに腕を喰われたと思っていたが……」
梅子は左腕を撫でて言葉を紡いだ。
「……実際、喰われたというか、吸収されたというか。まぁ、どっちでもいいか、ひとまず持っていかれたのはわしの保有していた力だった」
梅子の言葉に翁は驚いていた。
「……回復はするのですか?」
夜が心配そうに梅子に尋ねる。
「……心配はないと思われます。削られた力は回復はして来ておりますゆえ」
梅子は夜に答えていた。
「延々と取られ続けることはないんだな?」
月は梅子に問いかけていた。
「そのような感覚はありません」
梅子は目を閉じて自身の状態を確認して月に答えていた。
「ばあちゃん、今日は入院して検査した後に帰っていいって説明された」
結華はしょぼんとして梅子を見ていた。
「……倒れて頭を打ったかもしれないからな」
翁もうなづいている。
「お前は、もう少し休むべきだ。孫娘のことはこちらに任せよ」と翁の言葉に梅子は無視をして天華と月、夜をまっすぐ見つめていた。
「御三方……私が帰るまで、結華を見ていてください」
梅子の「……おいっ」言葉に翁は声を出す。
「……翁、お前は鬼城の者だ。結華を預けられるはずもなかろう」
梅子はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ここにいる中で安全なのは、天華様、月様たちだ。お主が心配をして声をあげてくれたのは礼を言うがね」
梅子の言葉に翁は短く唸る。
「……たしかに、そうだな」
翁は今現在の鬼城の状況を考慮をしてうなづいていた。
「梅子の心労になりそうなことを言ってしまった。申し訳ない」
翁は呟く。
「……それに、お主にはやってもらわねばならないことができてしもうた気もするしの」
梅子は天華を真っ直ぐ見つめていた。
梅子の目線を追いかけて「あぁ、なるほど」と翁も頷く。
「……まぁ、様子見をしつつじゃな」
「一番危険かもしれんがな」
翁に呟く梅子に翁は“気にするな”と呟き笑いながら病室から退出して行った。
「梅子、お前の家にしばし厄介になるが」
月は梅子を見る。
「すぐ帰ります。それまで孫をよろしくお願いいたします」
梅子は結華を見つめて真剣に月と天華、夜を見て頭を下げていた。
「任せてください」
天華は笑顔でうなづいたのを確認してほっと安心した梅子は力尽きたかのように眠りに入っていく。
結華は上布団を被せて、天華たちと家に戻ったのである。




