↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/38

31 淫魔との邂逅

 意気揚々とサキュバスがいたという部屋へと。

 だが、俺は最後尾だ。間違っても童貞だと見抜かれてはならないのだから。


「やや、やい! お前がサキュバスか!?」


 へっぴり腰のダニエル。いいぞ、その調子だ。

 お前が前線に立ってくれたのなら、俺の童貞が察知されることもないだろう。


「何じゃお主は? なかなか香しい匂いを出しておるじゃないか?」


 サキュバスは言葉を操るらしい。ダニエルの啖呵に対して冷静に返答している。


「ぼぼぼ、僕は童貞だからな!」


「クック、鳶が鷹を背負って……。いや、鴨が葱を生むじゃったか?」


 頭は悪いようだ。

 まあでも、ダニエルの童貞臭に反応してくれたのなら幸いである。


「そんな破廉恥な格好をして僕を誘惑するな!」


「お主、このピッチピチスーツの中を見たいか?」


 サキュバスは前世でいうレオタードのような格好。尻尾と翅の生えたエロい女性にしか見えない。


「いいのじゃぞ? 妾はGカップじゃぁ。ほんの少し精気を吸わせてくれたなら、揉むなり吸うなり好きにしてよいぞ?」


「ほほほ、本当か!?」


 ダニエルは純粋すぎるぜ。淫魔とも呼ばれるサキュバスの思うつぼじゃないか。


「もちろんじゃとも、さあこっちへ来い……」


「むぅ、魔物と分かっていても僕は双子山に取り憑かれた山男だ……」


 フラフラとダニエルがサキュバスの元へと歩む。

 いいぞ。まさに計画通り。精気を吸い始めたら斬り掛かってやる。


「確かに美味いが、これじゃない!」


 吸い始めたのも束の間、サキュバスが声を張る。更には勘が鋭いのか俺と視線を合わせていた。


「こっちへ来い。そこの童て……」


「わーわーわー!!」


 クソ、既に察知されていたか。

 こうなると隣に立ち、童貞だと口にさせないようにしなければ。


「おいサキュバス、俺が童貞って口にするなよ? 一億本の釘を身体中に刺し、いたぶりながら殺す」


 小声で耳打ちする。

 これは交渉ではない。脅迫なのだ。俺の矜持心を守るためだけの。


「お主、なかなか悪魔的なことを……」


「精気なら吸わせてやってもいい。だが、童貞だと口にするのなら、尻の割れ目が頭の先まで続くと思えよ?」


「なんと恐ろしい奴じゃ!」


 こちとらプライドで生きてるんだよ。

 それを守るためには血で血を洗う覚悟であり、魔物とも取引できるってものだ。


「良いな? 返事はイエスしか認めん」


「凶悪な奴じゃの。分かったのじゃ。早く剣をしまうのじゃよ……」


 元は悪魔なのだから力で制圧すべき。

 殺しても良かったのだが、ダニエルに性教育を施すという目的で生かしても良い。詳細なレポートを用意させる道具としてな。


「妾はサキュバスの女王インマーじゃ。よろしくの」


「俺はアルフレッドだ。それでインマー、お前を生かしても良いが、条件がある」


「まだあるのかえ?」


「尻尾を寄越せ。我が主人はサキュバスの尻尾さえあればそれでいい。生殺与奪の権利は俺にあることを忘れるなよ?」


「サキュバスにとって尻尾とは心臓と脳、目と口と鼻に耳、更には胸と尻と翅の次に重要なのじゃぞ!?」


「それなら問題ねえな!」


「うぎゃあああ!!」


 面倒なので俺はサキュバスの尻尾を斬り落とした。

 交渉じゃない。これは蹂躙なのだよ!

[※流石です!]


「お主は悪魔じゃぁ! 血も涙もない!」


 元悪魔が何を抜かす。俺は公明正大な人間なんだ。目的のためには容赦しないだけ。


「それでアルフレッド、尻尾をくれてやったのじゃ。精気を吸わせてくれんか?」


 やはり元が悪魔。対価を求めてきやがったか。


「この男の精気を吸え。ただしミイラにするな」


「嫌じゃ! この男の精気は嫌なのじゃ!」


「どうしてだ? 好みと合致するだろ?」


 ダニエルは主人公なんだ。俺の方がハンサムとはいえ、そこそこ良い感じだと思う。


「この男の精気は直ぐに胸焼けがする。純粋さが濃すぎるのじゃよ」


「なら諦めろ。俺はお前に施すつもりなどない!」


「吸ってもいいと言ったじゃないか! 嘘つきなのじゃ!」


 騙された方が悪いってのに、この淫魔はうるさいったらありゃしないな。


「アル、その魔物は危害を加えないのでしょうか?」


 リアーナ、あまり近付くんじゃない。俺はまだ小声で会話する必要があるんだ。


「そこの女、言ってやってくれ! この童て……」


「わーわーわー!!」


 クッソ、そういえば俺も弱みを握られていた。

 ミイラになるのは勘弁して欲しいが、皆に童貞だと知られるのはもっと嫌だ。


「てめぇ、翅ももいでやろうか?」


「汝、まさか……?」


 ヤバい。童貞だと公表されたくないことに勘付かれたのかも。


「超絶ドSなのか!?」


「超絶バカで助かったぜ!!」


 危ない。あまり強気に出るものじゃないな。弱みを握られているのだし、すり寄るのも手だ。


「妾はドSにも寛容じゃ。しかし、精気を吸わせてくれたらじゃがな?」


「サキュバスはミイラになるまで精気を吸うって聞いた。それに途中で止めると気が触れるってことも」


「妾は女王じゃぞ? 管理くらいできる。気が触れない吸い方をするし、ミイラ化させるのは自制心のない低級夢魔じゃ」


 マジで女王なの?

 それなら安心なのかも。


「アルフレッド隊長、報告がございます!」


 ここで僧兵長が報告に来た。彼は破壊された支部の調査を請け負ってくれていたんだ。


「奥の部屋に大量のミイラを発見しました!」


 えっと、それはどうなんだ?

 今しがた、俺は自制心のない低級夢魔しかミイラを製造しないって聞いたばかり。


「インマァァ、お前は俺に嘘をついたな?」


「違うのじゃ! そのミイラは出来心じゃ! ほんのちょっとじゃて!」


「少なくとも百体はありました!」


 もうこのサキュバスは殺すしかない。ダニエルの性教育はリアーナに任せたら良いだけだ。


「インマー、死ねええ!」


「待つのじゃ! 妾は無修正淫夢を見せることができる!」


 勢いよく抜いた剣だが、ピタリと停止。まるで本能が制止させたかのように。


 無修正淫夢。それって、あんなことやこんなことが謎の光で隠されていないという意味なのか?


「おい、詳しく教えろ。小声でな……」


 密談にて世界の真理を得られる方法を聞く。ダニエルのレポートを待たずして、秘匿された叡智を得られるのかどうかと。


「妾の淫夢は謎の光が及ばぬ。つまりクッキリハッキリスッキリの三拍子じゃ」


 何だってええ!

 クッキリハッキリスッキリとか前世の俺が聞いたら飛び跳ねて成仏するところだぞ!?


「よし、ならば精気の吸引を許す。だが、絶対に吸い過ぎるな?」


「もちろんじゃ。汝は匂いからして美味が確定しておる。ミイラ化して二度と味わえなくなるなど御免じゃ」


 なるほど、やはり世界最高の美男子たる俺の童貞エネルギーは美食家も唸らせるってことか。


 決定だ。ダニエルには悪いが、俺が先んじて世界の真理に辿り着かせてもらう。


「ダニエル、この夢魔は危険だ。俺が犠牲になろう」


「師匠、貴方様を世界が失うわけにはなりません! 僕がミイラになった方がずっとマシです!」


 クッソ、さっきまで怖がっていたのに、急に勇ましくなるなっての。


「ライオール公爵家の跡取りが失われること。俺はそれが何よりも損失だと考える」


「師匠はフローリス世界の宝なのですよ!? 僕が犠牲に!」


 こんなにも反対するなんて予想外だ。

 まさか先ほどの味見で無修正淫夢に気付いてしまったのか?


(許せぬ……)


 師匠を差し置いて真理に迫るなど、世界の道理に反する。

 そのような教育を施した覚えはない。どこの誰に許可を得て無修正淫夢を先んじて見ようというのだ!

[※人柱にしましたよね!?]


「ダニエル、物事には序列がある。お前は年下であり、俺が先に死ぬのは不変の原理なのだよ。つまり俺が先に逝く」


「そんな!? 師匠が先に逝くなんて認められません!」


「我が侭を言うな。もう決めたことだ。もしも俺が死んで生まれ変わったとしても、俺は再びお前の師になると誓うよ」


 第三者には分からぬように会話を続ける。

 お涙頂戴エピソードに偽装し、俺は女体の神秘に迫るだけだ。


 これが唯一の正答ですよね?

 女神様、俺は間違っていないですよね!?

[※知りませんよ!]


「師匠……そこまで?」


「もし仮に俺の気が触れたり、ミイラ化しようとしていたらお前が俺を殺せ。これは師匠として最後の命令だ」


 アヘ顔のミイラとなって、即身仏として祀られるなどあってはならない。

 万が一の場合でも俺はクールなハンサムであり続けなければならないのだから。


「師匠……。分かりました。師匠の覚悟を僕は尊重します」


 分かれば良い。ならば、よく見ておけ?

 俺の生き様を。飽くなき探究心は真実を知ることでしか満たされないってことを!


「さあ、インマァァ! ひと思いにやれぇぇっ!」


「う、うむ……。何だか壮大な話じゃの」


「ご託はいい! さっさと精気を吸いやがれ!」


 何年かかったことだろう。

 ようやく俺は前世の自分に報いることができる。到達できなかった人類普遍の原理へと俺は導かれていく。


「真なる意味で賢者になる時が来たのだ……」

ヤンチャンWEB等、各種電子書籍サイトにてコミカライズが連載中です。

そちらもお読みいただければ幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。