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26 ド変態、現る!

 俺は炊き出しをしていた。さりとて一人ではない。

 本来なら俺は帝国へ向かっているはずであり、リアーナが手配してくれた助祭君が一緒である。


 本日も大盛況。リアーナ目当ての住人も多くいたけれど、残念ながら彼女はダニエルと一戦交えているところであろう。


「アルフレッド様、住民たちは本当に感謝していると思います」


 ふと助祭君が言った。


 当然だろ?

 感謝されるためにしているんだ。俺の処刑に反対してくれるように。


「もう雪が降る季節になった。食材も高騰している。皆が無事に過ごせるといいな」


「アルフレッド様は一人も死ぬなと命じられたとか。それを聞いたとき涙が零れてしまいました。まさに聖人ではないかと」


「俺が聖人? バカ言うなよ。俺は願望を押しつけているだけだ」


「それが聖人だというのですよ……」


 持ち上げたとして何もでないぞ?

 俺は給与の大半をこの炊き出しに使っているのだからな。


 聖人と言えば聖女リアーナはこの助祭君とも関係を持ったのだろうか?

 モブ感溢れる男だけど、やはり押せ押せで頼み込んでしまったのかな?


「あのさ、リアーナってどんな感じだ?」


 詳しい話はダニエルに聞くとして、助祭君にも性的な感想を聞いておこう。全ては俺のプライドを守るために。


「聖女様ですか? それはもう素晴らしいですよ! いや、ホントに!」


「マジで? そんなにか!?」


「見たままですよ。その存在が聖女ですね……」


 やはり攻撃力が過剰なアレの存在こそ性女ってこと?


 確かにフローリス世界の重力を結集させたかのような力場だと思う。腕に絡みつかれたとき、彼が話すように素晴らしいと感じたし。


「確かに素晴らしいな……」


「私はアルフレッド様ならと思いますけどね? 失礼かもですが、相性は抜群かと」


 マジで言ってんの?

 俺って未経験なんだけど、経験豊富なリアーナと相性が抜群だって?


「本気か?」


「私には分かります。これでもリアーナ様にはかなりお世話になっておりますから」


「かなりお世話に!?」


 モブ顔のくせに、かなりお世話になっているなんて。リアーナが押しに弱いことを知ってか、こいつは頼みまくっているみたいだ。


 やっぱ聖教会はけしからん組織だ。こいつもまた性人だったとはな。


「ま、機会があればだけど」


「アルフレッド様が次期枢機卿に任命されるという噂も耳に入っております。やはり通過儀礼ではないかと存じますが?」


 通過儀礼だって?

 聖教会の男共は全員が彼女のお世話になるってこと!?


「どれだけ破廉恥なんだ……」


「はい? はれ……なんでしょうか?」


 誤魔化しきれないってのに、この助祭君は……。

 パッとしない容姿のくせして、俺に先んじて楽しみまくっているなんて。


「もう良い。片付けは頼んだぞ」


「お任せください!」


 経験者の余裕ってやつを感じる。俺だってアリシアが追放されていなければ、あんなことやこんなことを経験していたってのに。


 最後までリアーナは現れなかった。

 とはいえ、予定よりかなり早く炊き出しが終わったからでもある。助祭の彼が調理を済ませてくれており、俺と彼が手分けして配膳したのだから。


「ああっ! アルフレッド!?」


 王城へと戻る途中、リアーナが駆けてきた。そんなに急いだとして、もう炊き出しは終わったんだけどな。


「聞いてください、アル!!」


「炊き出しは終わったぞ?」


「そんなことじゃないのですよ!!」


 そういや、どうしてリアーナはこんなにも早く平民街に来たんだ?

 確かダニエルにアレの指南をしているはずじゃ?


 ここで俺は疑問とは無関係な話を聞かされることに。


「王城にド変態が現れたんです!」


 ド変態だって?

 ドSの狂人なら王城の主であるのだけど。


「ド変態?」


「そうです! 初対面であんなことやこんなことを要求してくるド変態です!」


 えっと、なんだ。

 よく整理して考えよう。


 俺はダニエルにあんなことやこんなことを頼み込めと言った。それで対象であるリアーナはあんなことやこんなことを要求してくるド変態がいると話す。


 至極簡単な推理に時間をかけてしまう。つまり、それって……。


(ダニエルがド変態!?)


 クッソ、ダニエルの奴どんな頼み方をしたんだよ。ド変態扱いとかリアーナの許容を超える要求だったに違いない。


(これだから童貞は……)


 それは俺もなんだけど、成人して間もないダニエルの妄想は爆発してしまったみたいだ。


 恐らく、あんなことやこんなことじゃなく、「えっ、ウソ! そんなことを!?」的な要求まで投げつけてしまったのだろう。


「すまん。そのド変態は俺の弟子なんだ……」


「まあ、そうでしたの!? アルも苦労しますわね?」


「悪いやつじゃない。気が向いたらでいいから、その……」


「アルの頼みでしたら分かりました。普通に付き合いします……」


「頼むな? 普通ノーマルプレイでいいから突き合って欲しい」


「分かりましたの」


 流石は押しに弱いリアーナだ。俺の意図を理解し、ダニエルに性教育を施してくれるらしい。


「今日の炊き出しはもう終わったんだ。(リアーナが寵愛する)助祭君がよく働いてくれたよ」


「あの子は素直で良い子です。私も世話になりっぱなしですの」


 よほど使い勝手が良いのだろうな。それとも百戦錬磨をも唸らせる凶悪な武器を持っているのか?


「あいつは大きい?」


「ええ、(人間的に)とても大きいですわ。色々と器用にこなしますし」


 モブ顔のくせにロングソード級なのか!?

 いや、バリスタ(大型弩砲)級を搭載しているのかも!?


 しかもテクニシャンだというし、リアーナが気に入るわけだな。


「人は見かけによらんな?」


「全くですわ。人は思いも寄らぬ才能を秘めていたりします。彼はその典型です。私は感動を覚えました」


 そんなにか?

 ちくしょう、俺の錆び付いた名刀もそれくらいの業物であればいいのだけど。


「まあでも、驚きました……」


 ここでリアーナが溜め息を吐く。

 えっと、ド変態な弟子が他にも何かしでかしたのでしょうかね?


「あのド変態さんに告白されてしまったのです」


「なぁぁにぃぃぃ!?!」


 思わず前世の記憶にある鉢巻きをした謎の半裸男的な反応をしてしまう。

 やっちまったなぁどころじゃないぞ!?

 顎が外れるかと思ったじゃないか。


「ダニエルがお前に告白したのか!? エロいことさせてくれっていうのではなく?」


「アルはド変態の要求を知っていたのです?」


 これはマズい。俺がそそのかしたと知れば、友好的な関係も終わりを告げるだろう。

 ダニエルには悪いのだが、俺には聖教会の権力が必要なんだ。


「弟子だけど、殆ど知らない子デス」


「ですよねぇ。アルが師匠であれば、もっとまともだと思ったのです」


 あのバカもの。

「嘘でしょ!? そんなの無理ぃぃ!」な要求は段階を踏まないと。

 童貞であるから色々と頼み込んだ挙げ句、勢いあまって告白までしてしまったのだろう。


「俺からも釘を刺しておく。すまなかったな?」


「ああいえ! 少し驚いただけですわ」


 流石は百戦錬磨の性女。「嘘よ! そんなの絶対に無理よ!」的な要求にも少ししか驚かなかったみたいだ。


 その点においては助かったとしか思えない。

 もし仮に姫様へ同じことを口走ったのなら、ダニエルは三枚に下ろされて、今頃は天日干しにされていたはずだ。


「アル、これから共和国への行軍について話し合ってきます。聖教会としても緊急案件ですので、意外と早い出立になるかもしれません」


「マジか。まあでも引き受ける。それが俺の進むべき道だから」


 聖教会の評価を高めておく。それは俺の生存可能性であって、避けては通れない。


「ご立派です。いつ何時も対応できるようにしておいてください」


「ああ、分かった。よろしく頼む」


 地位や名誉なんて命と比べればゴミも同然だからさ。


 きっと、そんなものは人生の装飾品に過ぎないのだろう。彩りを与えるだけであって、俺の生を後押しするものじゃない。


「全力で暴れても良いような編成にしてくれ。俺が先陣を切る」


「良いのですか? 聖教会としては助かりますけれど」


 僧兵の練度が分からない。

 しかし、俺の本質は魔法にある。前線で僧兵が出張っていたのなら、広域魔法が使えないっての。


「任せろ。邪教徒は許さん」


 俺の邪魔をするものは如何なる存在も許可しない。事あるごとに首を突っ込んでくる悪魔教は早々に殲滅しておくべきだ。


「悪魔が求める贄は奴ら自身で満たせばいい」

ヤンチャンWEB等、各種電子書籍サイトにてコミカライズが連載中です。

そちらもお読みいただければ幸いです!

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