表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/28

24 経験値を得るべきだ

 深夜に王城へと戻った俺だが、緊急の会議に出席を命じられていた。


「以上が姫様からお伺いした内容です」


 正直に俺も驚いている。

 前世でも分からなかった『紅雪が舞い散る夜に』の首謀者が明らかとなったのだ。


「むぅ、またもや悪魔教か」


「そのようです。しかも共和国の解放軍が一枚噛んでいるかと」


「頭が痛い話だ。こうも問題を起こされると放置もできんか」


 共和国は王国と隣接している。解放軍が悪魔教徒であるのなら、今後も問題ごとを持ち込んでくるはずだ。


「陛下、いっそ解放軍を壊滅させませんか?」


 手を挙げたのは防衛大臣であるトリス伯爵。彼は騎士団の叩き上げであった。


「しかし、精鋭揃いの近衛騎士団が壊滅したところでしょう?」


 異論を口にしたのは父上。政務大臣なんだから大人しくしておけっての。


「それを言われると辛いのですが……」


「はいはい! 王陛下さま!」


 ここで手を挙げた人物。それは夕暮前からずっと一緒にいる人だった。


「リアーナ殿、どうした?」


 なぜにお前が王国の会議に参加している?

 国政と切り離された組織じゃなかったのか?


「実は聖教会も僧兵を送る計画があるのですわ」


 夜遅いこともあり、リアーナは王宮に寝室を用意された。

 だが、緊急的な会議に「何だか身体が熱いですの」と胸をはだけさせて、全員を籠絡して入り込んでいる。


「ほう、聖教会も困っておったのか?」


「支部と連絡がつかないのです。つきましては王国と共同で調査できればと思いますの」


 王国としては願ったり叶ったり。聖教会が僧兵を出してくれるのなら、国力を割くこともなくなる。


「リアーナ、何が狙いだ?」


「聖教会は邪教徒を許しません。当然、戦いも視野に入れておりますの。しかし、制圧後に関して問題があったのです」


 リアーナ曰く、聖教会は政治と無縁。制圧したとして、かの地を統治するつもりがないらしい。


「王国には少しばかりの助力をいただければと。対価として空白地を統治していただければ、こちらとしても助かります」


 リアーナの提案は美味しすぎた。

 労力は最小限で国力を増強できるのだ。国際法的にも聖教会主導での侵攻であれば、他国との摩擦も軽減されるだろう。


「リアーナ殿、ならば我が国はそれなりの兵を出すだけか?」


「兵は必要ありません。侵攻軍の指揮官をお借りしたいのですわ」


 嫌な予感がする。てか、もうそれしか考えられない。


「アルフレッド様をお貸しいただければと!」


 ですよねぇ。

 貴方のブレないところは評価しますが、性女だけは選択肢にありませんので。


「むぅ、アルフレッドは些か過労気味での……」


「王陛下さま、この部屋って何だか蒸し暑くありません?」


 だから冬だと言っただろ? むしろ寒いくらいだっての。


 難色を示す王陛下にリアーナはまたもや法衣の胸部分を引っ張って見せる。

 ねえ、どうしてその法衣はお胸の谷間が見えているのですか?


「よかろう! 連れて行きなさい!」


「ありがとうございまぁぁす!」


 いや、王陛下……。

 簡単に籠絡されよってからに。けしからんお胸の穴が原因なのは分かるけれど。


「アルフレッド様、ずっと一緒ですわ」


「お前なぁ、俺はマジで忙しいんだぞ?」


「まだ先の話です。それにアルフレッド様にもメリットはございますの」


 一応、聞いておこうか。俺にどういった利益があるのかを。


「侵攻軍の指揮官という職責を果たされますと、枢機卿に任命されやすくなりますわ」


 そういや、そんな話を聞いたっけ?

 まあでも、それは悪くない話だ。枢機卿に就任できるのなら、追放先でも裕福な暮らしができるのだから。


「しょうがない……」


「ワクワクしますね? 解放軍とかイチャイチャに討伐してやりましょうよ!」


 討伐にそんな擬音は使わねえよ。

 とはいえ、枢機卿のポスト。俺には必要なものだろうな。


「王陛下、俺は聖教会の意向に従うつもりです。本日は疲れたので退席させていただきます」


 流石に疲労が蓄積している。


 少しばかり睡眠を取らせてもらおうか。



 ◇ ◇ ◇



「殿下、さっさと起きてくださいな?」


「昨日、遅かったのだから良いじゃない……」


 朝は弱いです。まして昨日眠ったのは零時を回っていたのだし。


「アルフレッド様はあの後、会議に出席されて今朝も早朝から自主訓練されてましたよ?」


「ええ? 先生って何時間くらい寝てるのかしら?」


「さあ、三時間も眠っておられないのでは……」


 そんな……。

 一日に十時間は眠らないと死んでしまいますよ。


「今日くらい訓練をお休みすればいいのに……」


「師匠として、そういうわけにもならないのでは?」


「師匠? 弟子はわたくしだけでしょう?」


 よく分からない話ですの。

 先生は貴族院を卒院されて直ぐに大臣補佐となっております。故に誰かの師匠にはなっていないはず。


「ダニエル様ですよ。パーティーの一件から、師匠と親しげに呼んでいるそうです」


「ダニエル様が!?」


 少しは見る目があるじゃないの。先生は何をしたとしても、誰よりも優れていますからね。


「わたくしも稽古を付けていただきたいわ」


「殿下は今よりも強くなるおつもりなのですか?」


 呆れたようなエマ。確かに昨日は何とかなりましたけど、ちゃんとした剣術を学ぶ必要性をわたくしは覚えているの。


「天恵頼みではダメ。明日からわたくしも早起きしますの!」


「殿下が早起きですって!?」


 わたくしだって、ちゃんと起きられるわ。先生と会う目的であれば絶対に。


 まだ眠たかったのですけど、わたくしはエマに急かされる形でベッドから起き上がっていました。



 ◇ ◇ ◇



 どうしてか俺はダニエルと街に来ていた。

 姫様から言付かった野暮用に彼は付き合ってくれている。


 用事とは得物を新調したいとのことで、ドワン親方に依頼してくれという話だ。


「師匠は王都の民に慕われてますね!」


「うむ、人徳だな。隠しきれなかったか……」


 行く先々で声をかけられる俺にダニエルは驚いていた。


「てかダニエル、貴族院はどうした?」


「遅刻ですよ。師匠の日常を知っておきたくて」


 妙に懐いてしまったが、それは俺の期待通り。彼には過酷な特訓を強いていかねばならんのだ。


「ここだ……」


「武具屋ですか?」


 ダニエルには申し訳ないが、姫様の命令だからな。

 姫様は昨日の一件で攻撃力の必要性に気付いてしまったらしい。


 恐ろしいことに刃渡りのあるナイフと攻撃範囲の広い鞭をご所望されている。


「ダニエル、死ぬなよ?」


「はいぃ?」


 まあそれで俺は姫様の依頼を親方に伝えた。物騒な依頼に親方は目を丸くしていたけれど、常連である俺の注文を快く引き受けてくれたんだ。


「師匠、鋼鉄の鞭とかどうするのです?」


 ダニエルが聞いた。

 俺もどうかと思ったんだが、ドワン親方は鍛冶師だからな。鎖を繋げた鞭しか製作できないんだよ。


「姫様が使用される……」


 過度に憚られたものの、俺は真相を告げる。何しろダニエルはその犠牲者となるのだし。


「姫殿下が!? どうしてです!?」


「言っただろ? 姫様はドSだと……」


「いやしかし……僕はどうしたらいいのです?」


「残念だが、今以上に鍛錬し、死なないようにしなければならない」


 体力的な問題に加え、精神力も必要となる。

 鋼鉄製の鞭は攻撃力が絶大なのに、姫様は容赦しないはずだからな。



『野豚には鞭で分からせてあげますの!』


『死ぬ! 死にますぅ!』


『豚らしくブヒブヒ言いなさいな!』


『ブヒヒィィ!!』



 俺の記憶によると鋼の鎖にはトゲトゲがあって、打たれるたびに傷だらけになる。ドMルートは体力値を最大にしておかねばならないのだ。


「絶対に死なないと心に誓え。努力の末に自信を手に入れろ」


「自信? 僕はただでさえ童貞なのに……」


 ここで俺は妙な話を聞く。

 ダニエルは公爵家の嫡男。引く手数多である彼がまだ未経験だって?


「ダニエル、それで自信がないのか?」


「こんなことならメイドにお手つきしておくべきでした」


 聞けば幼少期からソフィア殿下の相手となることを期待されていたのだとか。英才教育の弊害として、他の女性が視界に入らなかったらしい。


「ならばリアーナに筆下ろしを頼もうか……」


 性女リアーナであれば、ダニエルを男にできる。加えて彼女との行為は精神力も爆伸びするし、良い機会かもしれない。


「リアーナって聖女様ですか!? そんな方に頼めないですよ!」


 ダニエルは知らない。リアーナは押しに弱いのだと。


 きっと『筆下ろしおなしゃす!』と連呼すれば、すんなりと受け入れてくれることだろう。


「問題ない。俺の調査結果によると、助祭の大半はリアーナで卒業している。もしかすると教皇様でさえも……」


「本当ですか!? 確かに聖女様は性的な身体つきをされていますが……」


「リアーナの身体は王家秘蔵の宝剣よりも攻撃力がある。彼女の歩んだ道には骨抜きになった死体が転がるだけなんだ」


「リアーナ様は魔物を倒すのではなく、男性を倒してレベルアップされているのですね!?」


 飲み込みが早くて助かる。

 言わばウィンウィンの関係。ダニエルがテクニックと精神力を得られるように、リアーナも何かを得ているはずなんだ。


「だからこそ聖女に選ばれている。彼女は世の男性に幸福を与えるためだけに存在しているのだ」


「理解しました! じゃあ、僕はリアーナ様にお願いしてみます!」


 弟子に先を越されるのは心にくるものがある。だが、ダニエルとリアーナの愛人関係は初めから決めていたことだ。


(待てよ? ダニエルが経験した話を聞けば……)


 やはり俺は天才らしい。

 ダニエルがリアーナにやり方を教わるのだから、俺はその話を聞いて覚えたら良いじゃないか。


(経験者の話を聞くことで俺にもやり方が!)


 やり方さえ分かれば、俺のターンが始まる。

 アサシンで済ませたエマさんだって、俺にのめり込んでしまうことだろう。


『アルフレッド様ぁぁ、アサシンよりも凄いです! ぽっ……』


 やべぇ。

 アサシンに先を越されたのは癪に障るが、そんな彼女を引き受けると俺の株が爆上がりする。慈悲深き超天才だと世間が持て囃すことになるだろう。


「ダニエル、筆下ろしも教練の一環だ。詳しくレポートを纏めるように」


「ええ!? 僕の初体験をですか!?」


「赤裸々にな。挿絵とかも描くようにしろ。お前が知り得た事実を全て書き出すように」


 またも俺の大勝利だ。リアーナの厄介払いもできるし、俺にとってデメリットは一つもない。


「とにかく押しまくれ。お願いしまくるんだ!」


「師匠、分かりました!」


 このあと俺は炊き出しなのだが、リアーナはまだ王城で寝ているはずだ。結果はレポートで読むとして、俺は俺がすべきことをこなそう。


 笑顔で手を振るダニエルに俺は背中を押す台詞を返していた。


 大人になって来いよ──と。

ヤンチャンWEB等、各種電子書籍サイトにてコミカライズが連載中です。

そちらもお読みいただければ幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ