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姫様、ご乱心! ~天才教育係(俺)の生存戦略はキュートな姫様のドS化でした~  作者: 坂森大我@ヤンチャンWEBコミカライズ『姫様、ご乱心!』連載中


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11 聖女様の好感度

「アルフレッド様、何なりとご命令を……」


 やはり彼女はダニエルの愛人候補。攻略イコール深い仲は避けられないようだ。


 懸念されることはヤンデレルートだが、好意を示されるのは悪い気がしない。

 何しろ美しい女性だし、立派すぎる果実の持ち主。加えて社会的地位もあるのだから。


(でも、問題がある……)


 俺は童貞なんだ。

 純潔を守る女性ならばともかく、千本斬りの異名を持つ聖女リリアナ(現リアーナ)の好意は受け入れられない。


(十九歳にして童貞とか失笑されるじゃん!)


 フローリス世界において結婚年齢は平均で十七歳だ。

 よって成人年齢に達した時点で未経験の男などレア中のレア。それなりに経験してから結婚するものだからだ。


(前世の記憶にも女性経験はゼロ……)


 やり方が分からない。前世のエロスチルは全て謎の光に遮られていたし、結ばれる夜に俺は必ずや失態を演じることだろう。



『あれ……? あれれ?』


『アル、そこじゃありません! ああもう! そこでもありませんわ!!』


 やり方が分からない俺。戸惑う俺はリアーナの深い溜め息を聞くことに。


『もう結構ですの。愛は冷めました……』


『リアーナ、待て!』


『さようなら……』


 ベッドから起き上がったリアーナは法衣を身に纏いながら、侮蔑的で冷たい視線を俺へと向けるんだ。


『アル、男として役立たずでしたのね?』



 失望しましたと言い残し、リアーナは去って行く。

 ベッドに取り残された俺は愕然とし、思い詰めることに。更にはトラウマを覚えて、機能しなくなってしまうんだ。


(そんな未来は嫌だぁぁっ!!)


 絶対に回避だ。超絶有能な俺が聖女如きに扱き下ろされるなどあってはならない。


 経験値供給器に見下されるなど、俺のプライドが許さないのだ。

 超絶エリートは何事においても完璧であり続けなければならないのだから。


(聖女リアーナはリリアナで確定だな)


 彼氏がいないと話していたけど、押しに弱いタイプなのは明らか。

 きっと聖教会の重鎮共が求めるままに受け入れている。特定の男がいないだけで、断り切れない彼女は毎晩せっせとキノコ狩りに励んでいることだろう。


(性女リアーナと関わるべきではない!)


 ゲームの知識があって助かったぜ。

 結論はリアーナと深い仲にならない。距離を置かねば、俺は矜持心をズタズタにされてしまうのだから。


(色仕掛けには屈せぬ!)


 我がプライドを守る。

 俺は聖女リアーナを利用しつつも、性女リアーナの肉弾攻撃に耐えるしかない。


「リアーナ、早速だけど願いを聞いてもらえるかい?」


「何なりと。私はもう貴方様の所有物ですわ」


 俺は騙されんぞ。甘言には乗らん!

 最後の捨て台詞は絶対に忘れないからな!


 しかし、現状はヤンデレルートへの突入を危惧するべきだ。

 ヤンデレと化したリリアナは姫様に挨拶しただけで「一緒に死んでくださぁぁい!」と殺しにかかってくるのだから。


 よって俺は今以上に好感度を上げないように動かねばならない。


「俺は盗賊団を殲滅したんだ。その折、奴隷を二十人ばかり発見してな。個人的に彼女たちの奴隷具を解除して欲しいんだ。それはもう超絶個人的に。俺とリアーナだけで完結する話だ。他言無用だぞ?」


 今ならばマギナ教皇様が不在。従って秘密裏に奴隷具の解除を無料で行えるだろう。


「私とアルフレッド様だけの秘密!? 承知しましたわ!」


 腕に絡みつくんじゃない!

 完熟した巨大な果実に腕が挟まってるから!


(精神集中だ!)


 心を強く。精神を研ぎ澄ませろ。

 甘美な誘いは俺を地獄へと突き落とす過程に他ならないのだから。


 大きく息を吸って、俺は本題を切り出す。


「俺は炊き出しとかしているだろ? それで寄付金が払えないんだ」


「水臭いことを仰います。アルフレッド様が世のためを思ってされていること。妻である私が手を差し伸べないなどあり得ません」


 早速、リアーナが距離を詰めてくる。

 妻にすると初夜が訪れ、俺は精神崩壊に至るのだ。従ってスルーするだけ。とりあえず奴隷具の解除は上手くいきそうだし。


(問題はカンストした好感度だ。今のままじゃダニエルの経験値にできない)


 通常なら頭を抱えるところだが、俺にはやり込んだ『姫様、ご乱心!』の知識があったんだ。


(他の女の話をするだけで、リアーナは好感度が下がる)


 女性経験はゼロであったものの、俺にもかつてアリシアという婚約者がいた。

 今も童貞であるのは彼女のせい。結婚まで純潔を守りたいというアリシアの意志を尊重した結果なんだ。


 ここはアリシアの話をすることで、リアーナの好感度を下げるとしよう。


「実は婚約者がいたのですよ」


「侯爵家ですものね。婚約者くらいいてもおかしくないですわ」


 あれ?

 何だかゲームと反応が違うような気もする。


「その婚約者様とはどうなったのでしょう?」


 返答は明確に定まっているが、早い話が婚約破棄だ。


 婚約者であったアリシアは寄子である伯爵令嬢だったのだけど、伯爵家は事業に失敗した挙げ句、不正をした。貴族会の決定によって伯爵家は廃爵となり、アリシアは追放処分となっている。


「十五歳の頃、(追放処分で)遠くに行ってしまいました。俺は彼女の後を追うこともできたのですが、未練を残すだけで……」


 今思い出しても腹が立つ。

 アリシアさえいたのなら、俺は童貞を卒業できたというのに。


 嫉妬心を爆発させるのかと思いきや、意外とリアーナは平静を保っていた。


「(逝去されたなんて)お気の毒ですわ。しかし、(後追い自殺など)私は認められません」


 絶対に認めるんじゃないぞ?

 追放処分された罪人の娘に未練がある男なんて。


「彼女の代わりだなんて、俺は失礼な男だ。最低すぎる……」


「神は何という過酷な試練を(貴方に)お与えになったのでしょうか。私は(神の決定を)不服に感じますの」


「(貴方にとって)試練かもしれませんね。(貴方が)納得できないのは当たり前です」


 良い感じに好感度が下がったような印象だ。

 やはりリアーナは押しに弱いだけでなく、嫉妬に燃える女性なのだろう。


「アルフレッド様、過去は変えられません。ですが、未来は定まっていないのです」


 んん?

 俺に講釈を垂れるつもりか?


 これでも俺は超絶万能人間なんだぞ?


「共に歩みましょう。今は亡き婚約者様に祈りを捧げつつも、新しい人生を歩むべきですわ。そのお力添えができればと考えております」


 あれ?

 あれれれ?


 好感度はガン下がりしたはずじゃ?

 それにアリシアを勝手に殺すな。隣国で逞しく生きているはずだけど?


「改めて、お慕い申し上げますぅ」


(なぜそうなる!?)


 どうして意思疎通ができないのだ?

 俺は明らかに彼女を嫉妬させ、彼女は俺を拒絶したはず。


「あの……俺のこと嫌いになったんじゃ?」


「どうして嫌いになれましょうか。ご自身は辛い過去を背負われておりますのに、弱者に愛を与え続ける。そんな貴方様を私は敬服しております」


 リアーナは嫉妬深く、ドエロい性女であるはずなのに。

 姫様に対しては上手くいった記憶がリアーナにはまるで効果がなかった。


「そそそ、それはどうも……」


 このままでは俺のプライドが音を立てて崩れる未来がやって来る。

 リアーナが迫ってきたとき、俺はやり方が分からないのだ。



『あなた……ようやく結ばれる夜になりましたね?』


『あわわ! おおお、俺はどうしたら!?』


 謎の光に遮られたスチルしか見たことがないっての。

 千本斬りの性女を相手に戦えるはずがない。


『あなた、そこじゃありません! ああ、本当に駄目な男!』


 きっと俺は蔑まされることだろう。再び残念な人を見るような目でリアーナは俺を突き放す。


『アッチの方は三流でしたのね?』


『ちちち、違うんだ! リアーナ、待ってくれ!』


『さようなら……』



 クッソ、どうして俺が性女如きに扱き下ろされなきゃいけないのだ!?

 俺は古今未曾有の超一流なんだよ! 誰しもが認める超絶エリートなんだって!


(絶対に距離を置かねばならない!)


 気の迷いで失っていい矜持心なんかない。プライドは俺の存在価値そのものなのだから。


(しかし、追放処分となった場合が問題だ……)


 ここで重大な案件が浮上した。

 よくよく考えると、俺はリアーナの申し出を無下に断ることができない。聖教会には追放後の受け皿となってもらう必要があったからだ。


(まさに、がんじがらめ!)


 リアーナを拒絶すれば亡命時に協力を得られなくなり、彼女を受け入れると築き上げたプライドが酷く傷つくことになる。


 ああ、女神様。

 貴方様はどうして俺にばかり試練を与え続けるのですか?


「よろしく……頼みます」


 俺を軽く捨てる女に頭を下げるのは屈辱的。だが、ここはすり寄るしかない。未来の平穏は聖教会なくして成り立たないのだから。


「教会の人間がいない場所ではリアーナとお呼びください。アルフレッド……」


 いつの間にか呼び捨てになっていた。

 グイグイと距離を詰めてくるリアーナに戦慄しつつも、今の俺に彼女を拒絶できるはずもない。


(クッ、一線は越えられんというのに!)


 まさに、たわわな果実の押し売り。完熟フルーツで俺の腕を挟み込み、リアーナは俺を誘惑し続けている。


(そういや……)


 精神を滅却していると、不意に思い出す。

 俺が聖教会に赴くよりも前、狂気モードのソフィア殿下が俺に話していたことを。


『その先は分かっておいでですわね?』


 あれはどういう意味だろう?

 聞き流していたけれど、あれって俺を諌める言葉だよな?


(一つ間違えたら、俺の脳みそは弾け飛ぶ……)


 先ほどから人生最大の試練が立て続けに起きている。

 リアーナのハニートラップに耐えつつ、姫様の要求を満たさねば、俺の脳みそは爆破の刑に処されてしまうのだ。


(姫様に限って嫉妬はない)


 俺に対する好感度は激低い状態なんだ。

 姫様は嫉妬じゃなく、何らかの要求を突きつけているはず。


(だとすれば、聖女を籠絡してこいってことか?)


 姫様ならと思えてならない。

 強欲な姫様は世界的組織である聖教会をも牛耳るおつもりなのだろう。


(それなら姫様の希望通りじゃないか!)


 現状、聖女リアーナは完落ちして性女モードになっている。

 それは姫様の指示通りであり、籠絡したと胸を張って言えるはずだ。


「ふはは! やはり俺は超天才だ!」


 姫様、俺はやりましたよ。

 貴方様の無理難題に見事応えてしまいました。


 俺は聖教会のナンバーツーを完全攻略しております。この分だと聖教会を制圧するのも時間の問題です。


 だから投擲の的にはしないでくださいね?

ヤンチャンWEB等、各種電子書籍サイトにてコミカライズが連載中です。

そちらもお読みいただければ幸いです!

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